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世界の行方  作者: くま
25/58

25.アベル伯爵護衛依頼



冒険者風の格好をした三人組に近づいて挨拶をする。


「おはようございます。アベル伯爵の護衛依頼の集合場所はここでしょうか?」


一人は銀髪のショートヘアをした男性であり、年齢は40代といったところだろうか。服の上から上半身の覆っている銀色に輝く鎧をつけ、その上から灰色のローブを羽織っている。痛み具合からしてかなり使い込んでいる様子がうかがえる。

二人目は若い男性で20代程。鎖帷子と革製の鎧を着ており腰にはダガーを2本差していた。服装から考えて動きやすさを重視しているのであろう。

三人目は女性で二人目の男性ともともと仲間なのかすぐ隣に立っており、男性と話していた。二人目と似たような装備をしていたが、腰にはダガーの代わりに一本の細剣をつけていた。


二人目と三人目の男女はレンヤの方をチラッと見ると興味を無くしたかのように顔をそむけると二人で会話を始めた。


「すまんな。あいつらはああいうタイプの冒険者なんだ。挨拶を済ませたいのならあっちの髭じいさんに行って来い。」


一人目の男性は顎をさすりながら言うと馬車の方を指差した。そこには手帳なのだろうか小さな本のようなものを見ている白いひげを少し伸ばしている執事服を着た男性が立ってた。

そこに近づいていくとレンヤに気付いたのか本を閉じてレンヤの方を向いた。


「おはようございます。今回の依頼を受けさせてもらいますレンヤと申します。」


「これはこれはご丁寧にどうも。私はアベル伯爵家執事をしておりますブレイアと申します。」


ブレイアは丁寧にお辞儀をしたのでレンヤもそれにならって軽く頭を下げる。


「失礼かもしれませんがあなたのステータスを確認させていただきます。」


そういうとブレイアはレンヤに鑑識スキルを用いる。

今のレンヤは現在体術と剣術をLv.2、身体強化をスキル欄に残しており、そこらの冒険者よりも少し強い表示になっている。


「ふむ、スキル的には問題ないですね。その年にしては強い方でしょう。私どもは騎士を五人しか連れておらず、五人とも帝都から出たことのない引きこもりみたいな人たちで残念ながら対人、対魔物の経験が少ないので助かります。どうぞ短い期間ではありますがよろしくお願いいたします。」


「いえ、こちらこそよろしくお願いいたします。依頼内容は帝都までの護衛で合っていますよね?」


「そうでございますね。盗賊や襲ってきた魔物の相手をしていただきます。」


「分かりました。それでは。」


レンヤは軽くまた頭を下げると冒険者の所に戻っていった。





「おう、戻ってきたか。俺はギルドランクAのロベルトだ。短い期間だがよろしく頼む。」


「レンヤと言います。ギルドランクはCです。」


ロベルトは手を差し出してきたので握手をする。他の二人の方を向くと若い男の方はため息をついて答えた。


「俺はフェリプ、こいつは妹のエリカだ。ギルドランクはC。言っておくが同じ冒険者だからと言ってあまり馴れ合うつもりはない。」


「エリカと言います。よろしくです。」


フェリプの方は用は済んだとその場から離れていく。エリカはペコリとお辞儀をするとそんな兄を追いかけていった。


「まぁ冒険者をしてればあんな奴らいくらでも会うから慣れとけ。ところでお前さん護衛依頼は初めてか?」


ロベルトはそんな二人を見ながら言った。


「はい。最近村から出たばかりなので。」


「ほぉ、王国領か?」


「そうですね、王国領のムル村から出て来ました。」


「ん?ムル村って確か...」


「ご想像の通り先日盗賊の被害に遭い壊滅した村です。もともと僕の家族は冒険者として旅しながらギルドで稼いでいました。しかし一ヵ月程ムル村に滞在していたら盗賊が襲ってきて二人とも殺され、一人何とか逃げ出したんでこうやって一人で旅をしているんです。」


(まぁ、嘘だけどね。)


スラスラと思いついた嘘を並べて、チラッとロベルトを見るとポロポロと涙を流していた。


「お前さんは...うぅ...大変な経験をしてきたんだな。ちくしょう!泣けるな!」


そういうと服の袖で顔の涙をふく。


「今度から俺を"お父さん"って呼んでいいぞ!」


「いえ、遠慮します。」


若干 何してんだこの人? と引きながら冷めた態度でレンヤは言った。


「でも世界にはこんな大変な子供もいるんだな。お前さん何歳だ?」


「今17歳です。」


「やっぱりそれくらいの年か。俺の家にもお前さんと同い年の子供がいてな。男なんだがひょろっとしていてあまり頼りないんだ。」


「そういう年ごろではそんなものですよ。大概親の前ではしっかりしているようには見えないようなものです。外ではちゃんとしていますよ、きっと。」


「そう言えば学院に通わせてるが先生から呼び出されたこと無いな。俺の時はよく親を呼び出されては親子ともども説教を受けていたのにな。」


ロベルトは顎をさすりながら 何でだ? とでも言いたげな顔をしながら考え込み始めた。


「親を呼び出されるって一体何やらかしていたんですか...」


「ん?ちょっと剣を振り回し過ぎて備品壊したり、貴族にケンカ売ったりいろいろしたぞ。そんなの普通じゃないのか?」


あきれ気味に言ったレンヤに え?何言ってんの? とでも言いたげにロベルトは返した。




「時間となりました。出発いたします。」


懐中時計を見ながら馬車の近くにいたブレイアがこの場にいる全員に向かって言う。

すると宿から黄色い無駄に豪勢な服を着た中年の男性が出てきた。おそらく依頼内容にあったとある貴族であるアベル伯爵であろう。

アベル伯爵は周りを見渡していたが、ロベルトを見つけると小ばかにしたように嘲笑い、馬車に乗り込んだ。


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