23.アボス村1
静電気が流れるように手から球に向かって電気が流れた後にはきれいな魔源核が残されていた。
ステータスを見ると新たにスキル欄に"錬成"が表れており、スキルを習得できたことが分かる。
試しに魔源核を持ったままゴーレムの姿を思い浮かべて錬成を行おうとするがゴーレムは作られなかった。
スキルのレベル不足や召還の方法が異なることが考えられるが今は確認する方法が無い。
「さすがにゴーレムは作れないか...」
そう呟くとレンヤは魔源核をアイテムボックスに入れて次の村まで走っていくことにした。
結果としてゴーレムと遭遇した夕方近くから走り続け、睡眠をとらずに突き進んだ結果翌日の太陽が昇る時間帯に村に到着することができた。
途中何度か他の魔物や冒険者たちがいたが、周りが暗いこともあってか気付かれずに進むことができた。
おそらくこの時通り過ぎた冒険者たちにとってはただの風としか思ていなかっただろう。
"アボス村"
そう書かれた門に近づき、門番に旅の途中であることを告げて村の中に入れてもらう。周りが草など生えていない乾燥した大地が広がっているだけなので木が生えていても数本程度であり、砂漠の中にある都市のような感じがする村であった。
実際、隣の国に隣接する村なので人の通行量は多く、マラン村よりも村としては大きい印象を得た。村の中には当然ながら村人や冒険者の他に宗教のような服を着た集団や荷物を引く馬車を引き連れた商人など様々な人がいた。
大通りに面している商店には朝早い時間にも関わらず客の呼び込みをする声が響き、買い物客でにぎわっている。
ある店をのぞいてみるとリンゴに似た果物から見たことのない野菜まで売っており、どれも鮮度が良く値段が安かった。
「兄ちゃんどうだい!何か買っていくかい。今ならちょっとばかしまけてやるよ!」
レンヤが商品を見ていたら店の人に声をかけられた。がたいのいいおっさんがニカッと笑いながらレンヤに言う。
「これって何ですか?」
レンヤはリンゴもどきを一つ手に取るとおじさんに尋ねる。
「ん?それはリュネの実だ。外は赤いが中は白くて少し酸っぱいが甘い果物だ!」
「じゃあこれ2つもらおうかな。」
「おう!まいどあり!兄ちゃんこの村は初めてかい?」
「はい、今さっき到着したばかりです。」
「そうか!ここの村はちと騒がしいがいい村だ!隣の帝国からもよく商人が売りに来るから珍しいもんがたくさんある!楽しんでいけ!」
レンヤは書かれていた金額の2つ分を店の人に手渡すと大通りの人ごみの中に戻っていく。
すると後ろから声が聞こえてきた。
「坊主!何かの縁だ。もう一つくれてやる!」
そういうと店員はレンヤにリュネの実を一つ投げる。
「ありがとうございます!」
レンヤは軽く手を振りながら店を後にする。




