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世界の行方  作者: くま
10/58

10.薬草採取とゴブリン遭遇

依頼を達成するためにウォルクさんに教えてもらった森に向かう。村の出入り口にあたる門にいた門番に依頼で村を出る旨を説明し、外に出る。村の外は広大な草原が広がっており、振り返ると村が大きな壁に囲まれていることが分かった。

草原といってもきちんと道は整備されており村から数本伸びていた。依頼で向かう森と方向が同じ道もあったので道にしたがって歩いていく。

歩いて15分くらいだろうか、途中で魔物に遭遇することなく森の入口へとたどり着く。入り口と看板があるわけではないがまるで境界が引かれているように、その境界線よりもこちら側に木が生えていないので入り口に間違いないだろう。

レンヤは左側の腰につけた剣?(見たところ刀身が黒い刀)をつかむように持ち、鍔に左手の親指をかけていつでも刀が抜ける用意をして森の中へと入っていく。学校の武道の授業で剣道を選択していたため初心者よりは刀の扱いを理解していたし、加えて剣術のスキル、前日のハルクとの訓練である程度の度胸を付けていたので弱い魔物であれば対処できる自信はあった。


(探すのはウル草だったな、適当に探していくしかないのか...)


初依頼ということで気分が高まっていたがいざ依頼を受けて探そうとすると面倒くさくなってくる。


(まぁ歴代Fランク冒険者の皆さんが経験してきた事だからおとなしく探すけどさ...)


依頼を受けたのはウル草の花をつけた茎ごとを20本、初心者でありこの世界に間もないレンヤにとっては困難だった。


「簡単に見つけられる魔術でもあればな...」


と思わず呟かずにはいられず歩き回ること5分、ウル草らしきものを1本見つけた。


「"鑑定"」


――――――――――――――――――――

 ウル草

  調合することで回復薬となる。

――――――――――――――――――――


「説明文みじかっ!!」


あまりに簡単すぎる説明ではあったが目的の薬草は見つけることができた。

とりあえず確保したウル草をアイテムボックスに収納し、この作業がどのようにしたら効率的かを歩きながら考える。

そして立ち止まり、ひらめいたかのようにつぶやく。


「昔の偉い人(レンヤが読んでいたweb小説の作者さん達)は言いました、"無いなら作ればいいじゃないか(笑)"と!!」


唐突におかしなことを言うと収納したウル草を取り出し、意識を集中して言う。


「探査!」


探すには探査という言葉があてはまると考えて言ってみた。特に何も起こらない。

レンヤは静かに周りを見渡し誰もいないことを確認すると両手で赤くなった顔をおおい、その場にしゃがみこんでしまった。


「うわ、恥ずかし...」


後悔も済んで何事もなかったように立ち上がり歩き出す。


「うん、地道に探すか...」


結局それから2時間で20本は見つけ出した。普通ならばまだ時間はかかったであろうがレンヤには他にやることがあったのでほぼ走って探していた。


「さて、依頼も完了したしゴブリンでも探しますか。」


レンヤは依頼だけではお金がたまらないという事もあったが戦闘訓練をしたかったのでゴブリン狩りを考えていた。

歩き回りながら耳をすます。動物や魔物が動いているならば草を踏んで音がすると考えたためであった。

10分ほどだろうか、右の方で「ギャーギャー」鳴いている声が聞こえてきた。声からして人間ではないと考え、ゆっくり刀に手をかけながら進んでいく。距離20m程離れたところに図鑑で見たゴブリンがいることに気付く。獣道とでもいうのだろうか、ちょうど木が生えておらず何度も歩いて地面が硬くなった道らしきものをゴブリンが三体奥から1列になってやってきている。ゴブリンは三体とも冒険者が使っていたであろうボロボロで刃の欠けた両手剣を持っていた。レンヤは気付かれる前に木の後ろに隠れる。背の低い木であったため、軽く足に力を入れてジャンプし木の枝につかまってよじ登ろうと考えたが自分で思っていたよりも高くジャンプしてしまい、そのまま木に飛び乗る形となってしまった。若干の違和感を感じながらも今はゴブリンに集中しなければいけないと考える。幸いにもゴブリンにはまだ気づかれていない。


レンヤは左手で木の幹につかまり右手のひらを先頭のゴブリンに向ける。そのまま手のひらに集中してマナを集める。すると手のひらから直径20cmの渦を巻く透明な球体が現れる。暇があれば練習していたため今では少ないマナで安定した球体を出せるようになっていた。本来は魔術補助具を使わなければならないのだろうが最初にマナを具現化した時にも使用していなかったので特に必要と考えていなかった。

今回レンヤが魔術を使用しようと考えたのは自分が何の属性を使用できるかを確かめることであった。しかしマナの球体を出せるだけで魔術が使用できない可能性もあったのでそれも確かめるつもりでいた。レンヤは頭の中で火の玉を思い浮かべながら詠唱をつぶやく。


「"火を()って敵を滅する力となれ、ファイアボール"」


すると透明だった球体は渦の速度が上昇したと思うと真っ赤な、そして火花の出る炎の球体となった。自然と熱さは感じずレンヤは頭の中で「(飛んでけ!!)」と命令する。球体はそのまままっすぐに飛んでいくと先頭にいたゴブリンの頭を貫通して二体目のゴブリンの腹を貫通すると消滅した。遠くからでもわかる程あたりには肉の焼けたにおいが充満し、二体のゴブリンは息絶えていた。傷跡は貫通した周りが黒く焦げているだけで全体を燃やすには至らなかった。

最後尾にいたゴブリンは何が起きたか理解していなかったが仲間が殺されたと分かると「ギーギー」と鳴きながら剣を振り回している。

とりあえず火の魔術が使える事が分かり、うれしさがこみ上げるかと最初は思っていたレンヤであったがまだ敵としてゴブリンが生存していたので火の魔術が使えたことはあまり考えていなかった。

再び手のひらを最後のゴブリンに向けてマナの球体を出すと詠唱する。


「"風を以って敵を切り裂く力となれ、ウィンドボール"」


マナの球体は同じように渦の速度が上昇すると薄い緑色の球体となり、球体が激しく渦巻いているのが分かる。同じように飛んでいきゴブリンの首に衝突。ゴブリンの首を引きちぎると消滅した。バタリとゴブリンの胴体が倒れ、頭が落ちる音でレンヤは戦闘が終了したとして木から降りた。

初めて生き物というのもを自分で殺したが以外にも何も感じなかった。人として異常だったのかもしれないが基本自分以外は信じないようになったレンヤはさして殺した現実を考えていなかった。

レンヤはゴブリンの右耳を刀で切りとり、焦げていないことに安堵する。アイテムボックスに収納しても良かったがゴブリンに対し衛生的にあまり良い印象を持っていないため、いろいろ入っている中に入れるのをためらう。仕方なくあたりに生えていた植物を鑑定し安全であることを確かめて葉をちぎるとそれで耳を包んで持ち歩くこととした。まだ太陽は真上まで昇っていないので午前中なのだろう、レンヤは再びゴブリンを探して森を歩き続けた。

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