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15話「防衛戦」



 戦における攻防戦は守り側に有利がある。高い石壁。高所からの攻撃や物資の支援力の早さは防衛側が優位に立てる。


攻撃側は防衛側の持続力を上回る攻撃を行わければならない。よく言われるのが城を落すには3倍の兵力が必要だと。


「アレン、相手をどうみる?」


「私は主に前線での野戦が多い。あまり防衛戦に加わったことはないから経験が薄くてな。こうした戦に自信を持って憶測できないのだが、この陣形を見るに相手は力押しだな」


「横一線、物量による力押しか」


 砦内にある一室、作戦会議を行う場所にこの戦においてあらゆる指揮を取る者が集まった。王や騎士は勿論、騎士だけでは統括できない他の部隊を指揮する従士も集まっている。


 主に意見を交わすのは騎士と王であるが、定晴はまだ戦闘経験が少ない。頭のなかにある知識に関してはこの場にいる者に引けを劣らないが経験がなければ所詮机上の空論にすぎない。


 それを補助する形で従士が多くついているのだ。

 

「ボクが見るに、多分、蛇王はなめきってるね。斥候からの情報を得て考えていた事だけれども、目の前にあれを見て確信に変わった」


「舐めている、とは?」


「城を攻める陣じゃないって事だよ」


 シキの言葉を補うようにして定晴がスマートフォンによる映像を手に言葉にした。


「砦もとい、城を攻める時際に敵兵の3倍以上で攻め入ることが定石とされているけれども、だからといって3倍の兵をそのままぶつけるという意味ではない。あくまで兵数の話しであって、こうした砦や城を攻めるには戦術的、戦略的な動きが必要なんだ」


 と、いいつつも。これは当たり前のことである。


 通常で考えるならば向こうからしてみればあと2つ落とさなければならない防壁がある。ゴリ押しによる兵の消費は半端ではないことくらい知っている筈だ。


 悪戯に兵を減らす必要がない。


「のに、この陣形。そして騎士総動員。これは多分相手は本城を待たずしてここで決着をつけるつもりだと考える」


「この砦を落として次に備えるのではなく、ここで討って終わりにする、と」


「舐められたものだね。いくら、騎士がいなくとも、ボクの国の砦が簡単に落とせるつもりでいるらしい」


「確かに、筋が通っているしここで勝てれば余計な手間が省けるのが事実だ。だけど、ここでのちから押しはあまりに慢心すぎる。俺はこの陣形は罠だという線が捨てきれていない」


 城落としの定石。有名なのは水攻めなどの兵糧攻め。包囲し、じわじわと日数をかけて炙り殺しにする。これが一番に有名だ。


 だが、ここは連砦。包囲できるような地形ではない。だから、考えれれるとすれば波状攻撃によるヒットアンドウェイ。


 夜襲や合戦を繰り返しながら隠密に内部に侵入する方法を探り、内部から崩す。


 これが今一番有効的ではないか。


「そうした線も考えれれるけど、蛇王の性格してからしてそれは薄いじゃないかな」


「性格、ですか?」


「ボクは一時的だけど蛇王とは学友だった頃があってね。その頃に色々と学ばせてもらったよ」


 シキからしてみれば、この騎士の暗殺を含めてこの力押しは納得のいくものであるという。勝利のためにはあらゆる手段を尽くすが、慢心しやすく相手を力で屈服さえることを楽しむ傾向にあるというのだ。


「なら、こちらとしてもやりやすい」


 手と拳を合わせて定晴は力よく言葉にした。


「シキ様。作戦指揮はこちらに任せてもらっても?」


「いいよ。ただある程度の内容はボクに先に通してね」


「承知。では、さっそくいくつか提案が」


 定晴の騎士としての初めての戦が始まった。









 定晴にとってはこれが初めての戦争である。幾場の小規模の戦闘経験はあるものの、実際に軍を指揮して戦うのはこれが初めてだ。


 そう、初めての筈。

 

「弓兵は足並みを揃えろ!タイミングが大切だ!一瞬の隙間もなく振り続ける弓の恐怖を与えろ!」


 砦の防壁上、マントを靡かせて凛々しき面立ちで立つのは定晴。兵を鼓舞し、騎士として雄々たる姿を見せていた。


 その姿、言葉はまるで歴戦の騎士。いつも表情豊かに、人懐っこい顔を浮かべていた――時に、情けない顔を見せていた定晴とは違う。


「――!」


 そして、怒号。気迫の篭った声色に兵たちが熱く燃えたぎる。それが合図だった。相手の動きを見極め、合図と共に放たれた弓矢は放物線を描いて相手の軍の中に溶けていった。弓矢を放つ第一列と、弓矢をつがえた第二列を配置し、交互に入れ変えることで生まれる確かな早さ。


 砦に突撃する蛇国の兵士は弓の雨を受けて、その進行速度を落す。盾を上空にかまえてその弓から逃れようとしても、足並みをピタリと揃えてなければ必ずその間に隙間が生まれる。弓がそこをついて誰かが脱落すればさらに隙間が生まれる。


 だからこそ、弓の射出にはタイミグをあわせる必要があった。


 そして、弓の射程距離と威力が合わさる距離の見極めが大切であった。それがうまく機能出来ているば、ここに辿り着くまで相当消耗させられる。


(ぶっつけ本番だけど、上手く出来た。出来過ぎるくらいだ)


 定晴にとってはこれが初陣に近い。本の中で身につけた知識は実戦では正確に機能はしてくれない。そういう気持ちを持ちながらも、“マニュアル”通りにできていてホッとしている部分があった。


 だが、すぐに気を引き締める。


 エルベールがよく口にしていたのが、戦争に絶対はない、ということだ。


 どんな事柄にもイレギュラーは発生する。それに対応してこそ一流と言える。


「撃ち方やめええ!」


 今、こうして人の上にたつ定晴の心は不安でいっぱいだ。


 彼は平和の世界で生まれた男だ。戦争の経験もなければましてや学生である。この肩に、全ての命が掛かる事に押しつぶさせそうになる。


 でも、そんな姿を見せれば下は着いてきてはくれない。


 虚無でいい。格好つけでいい。


 胸を張り、騎士は前に出る。


 それが、王を支えることに繋がるのだ。


 シキの国を壊させはしない!


「弓兵は後退!歩兵前へ!全員抜刀!!」


 衝突が始まる。





短い!書けない!戦記モノって難しい!


次回は早く長く書く!

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