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8.私立英館学園編

「ねえちょっとそこの君達待って。もうお昼ご飯食べた?もし食べてなかったらそこに食堂があるんだけど行ってみない?」

 4人が一斉に声をかけられた方へ背いた。そこには真由美達と同じ学年くらいの一人の英館の生徒が立っていた。

「お前何のようだ。この野郎。」

 真由美はいきなりその男子生徒に近づくと、強引に胸ぐらを掴んだ。

「えっ、うわあ、あのちょっと。」

 男子生徒は少したじろいだが真由美はお構いなしにさらに手に力を入れて、

「お前私は頭に来てるんだ。えっ分かっているのか?」

 と顔を近づけて睨みつけた。

「ちょっと待ってよ。僕何かした?」

「私の気分をぶち壊したんだ。」

「はあ?何言ってるんだよ。」

「この野郎とぼける気か。」

 ケイコとセイカが慌てて、

「ちょっと真由美その手離しなさいよ。」

「ご飯が食べられないからと言って八つ当たりしてどうするのよ。」

 と男子生徒から真由美を引き離した。

「大丈夫ですか?この娘お腹が空くとすぐ機嫌が悪くなるのですみません。」

 ケイコが謝ると、

「気にしないで下さい。急に話しかけた僕も悪いのですから。」

 その男子生徒が怒ることもなく言った。

「そんな。」

 ケイコは明らかに真由美の方が悪いのに、その男子生徒の謙虚な態度に横にいるセイカに、

「ねえちょっと今の聞いた。素敵じゃない。」

 とそっと耳うちをした。

「あのお腹が空いてるのなら、ちょうどそこに食堂があるので良かったら食べに来ませんか。」

 男子生徒がそう言うと、

「もちろん良いですよ。」

 と素早くケイコが答えた。外の3人は唖然とした顔でケイコを見つめた。

「それは良かった。じゃあこれから一緒に行きましょう。」

 とその男子生徒が笑顔で促すと、

「ちょっと待ってよ。ケイコお前今から何とかって言う教授の講演を聞きに行くんだろう。あれだけ食事は後だと駄々を捏ねて私に散々迷惑かけたくせに勝手に意見を変えるな。」

 真由美が怒るとケイコは優しい声で、

「真由美ちゃんってばどうしたのよ。」

 と言った。

「お前気持ち悪いぞ。何が真由美ちゃんだ。」

「だって真由美ちゃんはお腹が空いてるのでしょう?私ね。歩きながら真由美ちゃんの為にご飯を食べるところがあれば、譲ってあげようって考えていたのよ。」

「何が真由美ちゃんの為だよ。私は騙されないからな。ケイコ。」

 と真由美はその言葉を突っぱねた。

「何よそれ。私は勝負で勝ったのよ。真由美は負けたのだから文句言える立場じゃないでしょう。それにお腹が空いているくせに素直に食堂に行くと言えば済む話しでしょう。」

「私はお前の自分勝手さが腹立たしいんだ。絶対に食堂に行かないからな。」

 真由美は頑として動こうとしなかった。その様子を見かねた英館の生徒が、

「僕一応食堂のウエイトレス係のリーダーをしていてメニューの金額を無料にすることも出来るんだ。君たちの制服って揚羽中のだよね。わざわざ遠いところから来てくれたからメニューを大サービスとして全部無料にしてあげたいと思っていたのになあ。」

 と残念そうに言うと真由美とセイカが「無料」の言葉に反応し、

「食堂で食べる。」

 と同時に言った。

「良かった。じゃあ案内するよ。」

 その男子生徒が胸をなで下ろしていると、

「待って。」

 と今度は花香が止めた。

「何よ今度は。」

 ケイコが怒って言うと、

「よくうまい話には気を付けろって言うわよね。あんまり知らない人の話を信じないほうが良いと思うのだけど。」

 花香がその男子生徒をまっすぐ見た。思わずその男子生徒は冷や汗を流し目をそらした。

「何を言ってるんだ。ここは学校で悪徳商売をする場所じゃないんだ。花香は疑い深すぎるぞ。」

 と真由美の言葉に残りの2人も頷いて、その男子生徒と一緒にさっさと食堂に向かった。花香だけが何故か腑に落ちない様子だったが、仕方無く真由美達の後を追った。


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