7.私立英館学園
英館の敷地内は人で混雑していた。真由美達四人は結果はともかく無事にテストから解放されて気持的に楽だった。英館の正門を通ろうとすると、生徒会を思わせる生徒達が正門の前に整列してならんでおり、外来から来るお客さん達に「今日は来て下さってありがとうございました。」「こんにちわ、どうぞ楽しんで来て下さい。」等と一人一人に笑顔で声をかけながら、今日催しする日程のチラシ等を配っていた。四人はあまりの歓迎ぶりに少し驚かされた。そして正門の中に入るとテレビで見るようなお城が建っていたので、これが英館の校舎だと知りさらに驚いた。
「さすがだね。私たちの通っている学校の校舎から違うよ。こんな所に通えたらどこかの国のお姫様気分を味わえるだろうなあ。でも私はお金持ちでもなしい頭もそんなに良くないからなあ。」
セイカは校舎を見上げながら羨ましそうに言った。
「その前にここは男子校よ。」
花香が否定した。
「どうして男だけなんだろう。女子だって入れてくれればいいのにね。」
セイカは残念そうに言った。
「女に生まれたのだから仕方が無いわよ。この学校が男女共学にしない限りね。」
「でもだってさあ。だってさあ。」
セイカが納得出来なさそうにいると、
「私が男だったら絶対この学校に通うわ。まず誰かさみたいに晴れてるのに日傘じゃなくて雨傘を差して歩いている人と一緒に歩いたりしないわね。」
ケイコが横にいる真由美に対して避難混じりに言った。
「別に良いじゃないか。学校に忘れた傘を持って帰って来ただけじゃないか。ちょうど紫外線予防にもなるし助かるぜ。お前も入るか。」
と真由美はケイコの言葉を気にもとめないでセイカを誘った。
「嫌よ。こんな晴天の日に雨傘を差している人と一緒にいたら変な人たちだと思われるじゃない。早く止めてよ。しかもどう見てもそれ雨傘にしか見えないわよ。」
「雨傘も日傘も変わらないじゃないか。どこもおかしくないぜ。」
「セイカと花香はどう思う? どう見てもおかしいわよね。」
「私は日傘だろうが雨傘だろうが害がなければ別にいいわ。」
花香がそう言うと、
「ケイコ落ちついてよ。せっかくみんなで英館の文化祭に来ているのだから。それに私も悪くないと思うなあ。」
セイカがケイコを少しなだめながら言った。
「はあ。何なのこの人達。」
ケイコが一人で怒っているとちょうどその時どこからか軽快な曲が流れてきた。四人がその音の方に背くと吹奏楽器を持った英館の生徒達がパレードをしていた。そして通りすがりの人々にチラシを配っていた。真由美達もチラシをもらうと、そこには英館の食堂にあるステージで演奏会をすることのお知らせであった。真由美はこの食堂の文字を見て急にお腹がなった。午前中で学校が終わりお昼ご飯を食べていなかったのである。
「お腹も空いたことだし、まずは食堂に行って演奏会を聞きながらご飯を食べに行こうぜ。」
真由美が食堂に行くように促すと、
「勝手な事を言わないでよ。私は正門のところで貰ったチラシに書いてある大学教授の講演を聞きにいくのよ。今問題になっている地球温暖化について語るのよ。絶対に聞くべきだわ。私の肌に関わる問題でもあるのよ。」
ケイコは絶対に譲らない感じで言った。
「今大切なのは食べる事だ。私はお腹が空いて死にそうなんだ。環境問題についてはその後だろう。」
と真由美はケイコの言葉を突っぱねた。
「何よそれ。食事なんていつも取れるじゃない。今から行かないと講演に間に合わないのよ。」
「嫌だ。食事からだ。」
と真由美も負けじと言い返した。そしてセイカも二人のやり取りを聞きながら自分の意見が通らなくなると思い焦りだし、
「私だって3年2組のクラスでやってるお化け屋敷に行きたいよ。ご飯や講演より何よりも楽しむ事も大切だよ。だからお化け屋敷よ。」
と二人の中に入っていった。花香は3人のもめ事に一人ため息をついて、
「じゃあ、じゃんけんで決めましょう。負けた方が勝った方の行きたい場所に着いていくことにしましょう。」
と言ったのでじゃんけんで決めることになった。その結果ケイコが勝った。
「ヤッター勝ったわ。さあみんなで講演を聞きに行きましょうね。」
ケイコご機嫌そうに言った。真由美はムシャクシャしていたが負けたので文句が言えなかった。仕方なく3人はついて行くことになった。するとケイコが真由美に向かって、
「その前に真由美。その雨傘早く閉じてくれない。勝った人の命令よ。」
「はいはい、分かりましたよ。」
真由美は少々ふてくされたながら傘をたたんだ。その様子をケイコはご満悦そうに見ていた。そして四人は校庭に向かった。その途中食堂を通ろうとしていると一人の英館の生徒が四人に近づいて来た。