4.問題児四人組
市橋ケイコ、天野セイカ、山崎花香の3人は真由美と中学一年の時から同じクラスで仲の良い4人組である。市橋ケイコは四人の仲で成績が一番良いが、この世において自分の容姿が全てで自分の命よりも大事にしている。天野セイカは長身で何事においても楽観的だが、人一倍臆病である。山崎花香は四人の仲で短身で眼鏡をかけている。人一倍マイペースだが、実は四人の中で一番しっかりしている。
何とか真由美とセイカは朝礼に間に合った。もうすでに担任の江口泉が見えていた。後から遅刻して教室に入ってきた花香を見て、
「山崎さん、また遅刻。いい加減にしなさい。あなたこの前も遅刻したでしょう。」
と強い口調で注意すると、
「私の中では遅刻ではありません。」
と済ました顔で席に着いた。江口泉は苦々しい表情で花香を見ていたが気を取り直して、
「みなさん。いよいよ今日からテストが始まりますね。気を引き締めて今までの勉強の成果を出せるように頑張ってください。私が言いたいのはそれだけです。今日はみなさんが少しでも自習の時間が取れるようにいつもより早めに終わります。」
とわずか数秒で終わった。すると教室から教科書や問題集を開く音が一斉に聞こえてきた。担任の江口泉は音を立てないように静かに教室を出ると、隣のクラスから担任の田中博もちょうど出てきた。
「おはようございます。江口先生」
田中は笑顔で声をかけた。
「あら、田中先生おはようございます。」
冷たい口調で言った。
「今日はどうしたんですか。何か機嫌が悪いようですが。」
「機嫌だって悪くなりますよ。あの問題児4人組がいれば。今日だって4人組の一人の山崎花香が遅刻してきて、何一つ反省の無い顔で教室に入ってきたんですよ。あの4人組のおかげで私のクラスでは授業が遅れたり、クラスがひとつにまとまるどころかバラバラなんですよ。」
「まあ、そんなにかりかりしなくても。」
「特に4人組のリーダー的存在の渡瀬真由美。」
江口泉は思い出すだけでも腹が立つのだった。
「でも先生のクラスには学年でトップの藤沢ミクがいるじゃないですか。羨ましいですよ。」
すると江口泉の口調が少し柔らかくなり、
「まあ、そうなんですよね。この間の模試なんか全国で上位に入っていたんですよ。そしたら校長の目に止まって、先生の指導がいいんですよって褒められたんですよ。私嬉しくて。」
「それは羨ましいですな。やはり江口先生の指導がいいんですよ。私も見習わないといけないですな。」
「先生ってばお口がお上手ですね。」
とさっきまでの不機嫌そうな態度が消え笑顔で職員室に向かった。