3.問題児四人組登場
学校は住宅街の中にある。西洋風な建物だが、校庭には桜の木が並び春になると桜の花で染まり美しい景色が見られる。学校の門をくぐると同じクラスの市橋ケイコに会った。
「おはよう。真由美。」
「オッス。なあ勉強した。社会なんて覚えるの面倒臭いよな。」
真由美は家族の前とは違ってウンザリした表情を見せた。
「私は今回も自信あるわよ。」
と余裕な様子で髪をかき上げた。
「さすがケイコ。クラスに上位にいる奴は違うよな。」
ケイコを褒めると、
「何言っているの。私は誰かさんと違って日頃から努力しているの。徹夜になるとお肌は荒れるし目に隈ができるわ。それは日頃から私の容姿に癒されている男子にだって悪いわ。美人って結構大変なのよね。」
また始まった。こいつの容姿の自慢が。
真由美はウンザリしたように、
「あのさお前の顔のことはどうでもいいよ。」
「真由美。僻みに聞こえるわよ。あなたには整形をお勧めするわ。」
と真由美の顔を触りながら言った。
「このナルシスやろう。もう頭に来た。こうしてやる。」
真由美は両方の手でケイコのほっぺをつねった。
「真由美。ひゃひゃなしてよ。ああ、もう。私の顔にあんたの汚い手で触らないで。」
ケイコは真由美を思い切り振り払い怒って言った。真由美はあっさりと、
「整形するのはお前の方だ。」
とアッカンベエした。
「もう信じられない。何よ整形って。私の顔のどこに整形するところがあるのよ。」
ケイコはその言葉に反発すると、
「早くテスト終わんねえかなあ。遊びにもいけないよな。」
真由美はケイコを思いっきり無視して独り言を言った。そのとき後ろの方から、
「おっはよう、真由美、ケイコ。」
大きな声で長身な女の子と眼鏡をかけた女の子が駆け寄ってきた。
「オッス。セイカと花香じゃん。」
真由美が言い終わらないうちに長身な天野セイカが甘えたように真由美に飛びつき、
「真由美。会いたかったよーん。」
と嬉しそうに抱きついてきた。
「おまえちょっと離せよ。苦しい。」
「もう、照れちゃって。」
と真由美の鼻をつついた。
「照れるか。お前今日テストがあるの知ってるよなあ。なんでそんなに元気なんだよ。」
と真由美が呆れていうと、
「知ってるわよ。でもどうせ結果は分かってるし気にならないわ。」
「あのなあ。ケイコも何か言ってくれよ。」
真由美が振り向くとケイコの姿はどこにもなかった。
「あいつ一人で勝手に先にいったな。」
真由美は憤慨した。
「ちょっと真由美。私のこと忘れてない。」
今まで黙って見ていた眼鏡をかけている花香が口を開いた。
「あっ花香。ごめんなあ。だってケイコがよ。それにセイカ離れろ。」
「まあ、いつものことだからしょうがないわよ。セイカその辺で真由美を離して上げたら。」
セイカがようやく離れ真由美は少し楽になった。
「お前のせいで、ケイコが先に行ったじゃないか。」
本当はさっきの整形の話でケイコと喧嘩したことが原因であるが、当の本人は自分のせいだと思っていなかった。
「ごめんね。だって真由美に会えたことが嬉しかったんだもん。」
セイカは、自分のせいでもないのに謝った。そんなセイカを尻目に真由美は花香に向かって、
「おい、花香。今何時か分かるか。」
と言った。花香は自分のはめている時計を見ながら、
「私の中ではまだ十分時間はあるわよ。」
と落ちついた声で言った。真由美は少しその言葉に不審に思い花香の腕時計を除くと急に慌てて、
「やばい。後数分で朝礼じゃないか。」
と急いで教室に向かった。その後をセイカも追いかけるように真由美の後に続いた。一人残された花香は、
「間に合うように頑張ってね。」
と人ごとのようにつぶやいた。花香は人に合わせることが嫌いで、いつも自分のペースで行動している。だから学校が始まる時間が決まっていても花香にはまだ十分な時間なのである。