1.問題児四人組登場
「こんなの覚えられねえ。なんだか眠たくなってきた。」
明日は一学期最後の期末テストが行われる。真由美は普段授業を聞いていないため、勉強が思うようにはかどらないでいた。教科書に目を通すと、
「えっとなに。1600年に関ヶ原の戦いがあって勝ったのが徳川家康で負けたのが石田三成。これ覚えるだけじゃなくて書けないといけないんだよな。」
何だか覚える事もめんどくさくなってきてしまった。 ふぁい眠たい。」
よく見ると徳川家康の自画像が載っていた。
「おお家康の自画像が載ってるじゃん。なんだこいつ。よくみると太ってるじゃん。こんなデブでよく幕府開けたよな。おもっしれ ぎゃはははははははは。」
「ちょっと真由美うるさいわよ。何笑ってるの。ご近所に迷惑よ。あなた明日テストがあるんでしょう。」
隣の部屋の姉琴美が笑い声に何事かと思い突然部屋に入ってきた。
「だってさあ。こいつめちゃくちゃ太ってるんだぜ。しかも隣りにいる豊臣秀吉の自画像なんてゴボウみたい顔してるぜ。ぎゃはははははは。」
「ちょっといい加減にしなさい、真由美。あなたこんなことしてる暇ないでしょう。」
琴美が真由美をたしなめると、
「だってさあ、おかしいよ。」
「何がおかしいのよ。」
「会ったこともない奴を覚えないといけないんだよ。大体今の時代に何の役に立つのかよ。」
「あのね、真由美。あなたのは覚えたくないから屁理屈をいってるだけよ。明日は社会だけじゃないでしょう。外の教科はもう完璧なの。」
明日は社会以外に数学と理科もある。
「だって数学なんかどこから手をつけていいか分からないし、理科なんて今からしたって間に合わない。だから社会で お し ま い」
そんないい加減な態度に姉琴美の顔が真っ赤になった。
「真由美。どうしてあなたはやる気がないの。こんないい加減にしてると後で苦労するのはあなたよ。あ な た 。」
姉が強い口調で言った。真由美はまたいつもの説教が始まったと思った。
「うるさいなあ。」
真由美がぽつり言うと姉琴美の表情が変わり、突然ドアの近くにある本棚から本を取りだし片っ端から投げてきた。
「痛い。ごめん悪かった。悪かったから投げないで下さい。」
と慌てて謝ると手を止めて、
「私に逆らうとどうなるか分かっているでしょうね。真由美。」
と恐ろしい顔で言った。
「うん、分かっています。琴美様。」
真由美は何度も頷いた。
「今日の所は許すけど、分かってるわね。今夜は徹夜しなさい。いいね徹夜。」
と念を押すように部屋から出ていった。真由美はほっとため息をつきながら、再び教科書と向き合ったが、急に眠気が襲ってきた。真由美はそこで、
やる気が出ないのに 勉強しても頭に入る分けがないよな。それに徹夜なんて体の健康に悪い。健康とテストどちらが大切かと言うと、やっぱり健康が一番だな。
よし決まった。寝るぞ。でも待てよ。琴美姉に見つかるとやばいから、一応電気を付けたらいいなあ。
と自分の都合の言いように考えてさっさと寝てしまった。