UNDEAD 2
ディンのせいで店をするような気分じゃないニーダは、今日は閉店にして散歩に出ている。しばらく歩いていると、
「おい。」
突然後ろから声をかけられる。
「!!…な、何ですか?」
振り返るとそこには3mはあろう大男が立っていた。
「こういう特徴の男を探している。見かけなかったか?」
紙に書かれた特徴を見る。
(黒い髪…青い瞳…中肉中背…長剣)
それはディンそのものだった。しかし、
「知らない…こんな男知らない!!」
もうあいつには関わりたくない。だから知らないふりをする。
「もういいでしょ!?さっさと…」
「ぎゃあぁーーーっ!!」
突然近くに建っている家の中から男の叫び声が聞こえきた。
「ふぅ〜む、微妙でしたねぇ。」
しかし家から出てきたのは若い男と女だった。
「!!」
町の方から叫び声が聞こえてきた。
「何だ!?ひょっとして、あいつら!?」
だとしたらこの町に来た俺に責任がある、恐らく奴らは俺を追って来たのだから。
「どうです?何か情報は?」
上品だがどこか嫌味のある喋り方をする。大男はちらっとレイナを見ると、
「いいえ、さっぱりです。」
「そうですか。まぁいいです、食事でもしながらゆっくり情報を集めましょう。」
「兄さん、もう帰りしょう?」
次に聞こえてきたのは優しそうな喋り方をする女性の声だった。「しかし、久しぶりにまともな食事ができるのですから。」
「食事って…あんたもなの!?」
話を聞いていた私は怒りで拳が震える、今日は最悪な日だ。
「ん?その通りですがUNDEADを知っているのですか?」
「知ってるも何も私の両親はあんた達UNDEADに喰われたのよ!!」
顔を力任せに殴ろうとするがあっさり掴まれる。
「ふぅ〜む、どうやら良質なようだな。娘がこれならさぞや両親も美味だったろうに。まぁいいです頂くとしましょう。」
(喰われる、逃げなきゃ!!)
「くっ!!手が!!」
掴まれているので逃げる事ができない。
ヒュッドスッ
飛んできたナイフがUNDEADのこめかみに刺さる、とその隙に手を放す。
「痛いですねぇ、誰ですか?」
ナイフの飛んできた方向を睨む。
「弱いいじめは楽しいですか?」
喋り方を真似しながらこっちに歩いてくるディン。
「余計な事をしないで!!」「おいおい、助けてもらっておいてそれはないだろ。」
「貴方は昨日の方。」
「やぁ、また会えましたね。」
皆揃って喋る。
「俺は会いたくなかったんだけどな。まぁいい、お前らに話があるからな。」
「ほう、話ですか。」
「うぅ〜んと、その前に確かヴォルドとレイナだったな?」
「どうして私達の名前を?」
「UNDEAD―不老不死の研究で作られたできそこない、その最初のできそこないが俺と俺の兄貴だ。」「何!?」
「そして、俺らの例から研究者達は可能性があると判断し、更に研究は続けられた。」
「そして後の研究で作られたできそこないが私達、だから兄弟であると?」
「その通り。」
「初耳ですね。しかしそれが何だと言うんですか?」
「まぁ単刀直入に言うと争いたくない。兄弟だからな。」
「貴方がそうしたいなら私達は構いませんが?」
「そうか、それじゃついでにもう一つ言う。人を喰うのも止めてほしい。」「ふぅ〜む、それはできない相談ですね。UNDEADは人を喰わねば衰えてしまいますから。」
「そこを何とかできないか?普通の食べ物でだって生活はできるんだから。」
「嫌です、確かに生活はできますが身体が衰弱してしまいます。どうせなら私はこの力を使い続けたいです。」
「本当に…駄目なのか?」
剣を抜くディン。
「くどいですよ。」
「そうか、残念だ。ならせめてもの手向けだ、俺が殺してやる。」その言葉と同時にお互いの剣がぶつかり合った。
「さあて、どうやって殺してくれるんでしょうかねぇ?」
「まぁ楽しみにしてな。」
一度剣を離し、今度は連続でぶつける。
金属のぶつけり合う音がけたたましく反響する。お互いの剣が身体をかすめるが、UNDEADにその程度の傷は無意味である。
「ハァ…ハァ…」
「フゥ…フゥ…」
闘いはもう三十分程続いている、お互いに呼吸が乱れてきている。
二人は一時的に距離をとった。
「これが最後だ…止める気は無いんだな?」
「本当にくどいですねぇ。何度も言っているでしょう。」
「そうか、ならそろそろ終わりにしよう。」
二人は構えたまま動かない。
…………沈黙。
しびれをきらし、最初に動いたのはヴォルドだった。
「ハァアアアア…ッ!!」
「オォオオオオ…ッ!!」
ドンッ!!
ディンの左腕は宙を舞っていた。
「くっ!!」
しかしヴォルドは上半身と下半身が分かれていた。
「ウグゥッそんな!?」
「ハァ…ハァ…これだけ疲れているし、真っ二つだ。簡単には再生できないだろう。さてと、死んでもらうか。」
今から自分の兄弟を殺そうというのに信じられないほど冷酷な顔をしている。
「止めてください!!兄さんを殺さないで!!」
レイナが二人の間に入る。
「ヴォルドが人を喰わないと誓うならいつでも。」
「兄さん、それで良いでしょ!?普通の食べ物でだって生きられるんだから!!」
「………ッ!!」
ガブッ
ヴォルドがレイナの首筋に噛みついた。
「そんな…止めて、兄さん。」
レイナの首筋から血が流れる。
「残念ですがお別れです。」
「嫌ぁ、兄さん!!」
「止めろ!!」
ズズズズ…ッ
何かをすするような音。
「プハァッ回復できればこちらのものです!!」
ドスンッ
瞬時に身体をくっつけ剣でディンの胸を貫く。
「ハハハハハ…!!」だがディンはものともせずヴォルドの肩を掴んだ。
「放せ!!触るな!!」
手を振り払おうとするがほどけない。
「お前は…何をしたのかわかってるのか。」
ディンはゆっくり口を開く。
「な、まさか!!や、止めろ、止めてくれぇ!!」
「妹もそうやって言っていただろうが!!」
ディンがヴォルドの首筋を勢い良く噛む。
「ギャアァーーーッ!!」
グシュッブチブチッ
噛んですするなんて甘いものじゃない。ゴクゴクゴク…ッ
ヴォルドの手がビクンビクンと痙攣している。ミイラのようになっていき、そして塵になった。
「何度飲んでも慣れないな、この味は。」
今度はレイナの元へ向かう。
「おい、生きてるか!?しっかりしろ!!」
「ん、兄さんは…逝った…のね、私も…もう駄目みた…です。」
「そんな事言うな!!生きる意志を持て!!」
ディンの目に涙が浮かんでいる。
「義兄さん…ありがとう。兄…さん、今………。」
「くそぉっ!!くそぉーーーっ!!」




