精神的ブラックホール
「なぁ、最近、オレなんかおかしいんだよ。」
もう付き合って2年にもなる彼氏のナオキが、
ファミレスでの食事中に、突然そんなことを言い始めた。
「なんかさ、目に入ってくるもの、
全部が欲しくなるんだよ。」
「え。じゃあアタシも?」
私は元々、ナオキのそういう
独占欲の強いところに惚れて付き合っているのだ。
もちろんYESって答えてくれることを
期待したのだけど、ナオキはよほど真剣らしく、
あっさりその質問はスルーされた。
「服とか車とかなら分かるんだけどさ、
このメニューに載ってるものっていうより、
このメニュー自体とか、割り箸とか、爪楊枝とか、
あと…そうだな。この机やソファーも欲しいな。」
ナオキは独占欲とか、物欲がかなり強い。
子どもの頃は、いろんな玩具を買って欲しくて、
よくダダをこねていたらしいが、
確かにナオキの言う通り、それは変だ。
「欲しいけどさ。これ、持って帰れないじゃん。
そう思うと余計に欲しい気持ちが強くなって、
どんどん他のものまで欲しくなるの。」
「なんだか、まるでブラックホールみたいね。」
「うーん。言われると確かにそうだな。」
そんな話を最後に、私はナオキとファミレスを後にした。
そこから、私は急に仕事が忙しくなり、しばらくオナキとは会えなかった。
向こうもあれから連絡もないし、特に問題もなかったのだろうと思っていたら、
突然、警察から連絡が入った。
ナオキが自室で変死していたらしい。
自分の部屋のものを全部自分に乗せて、
抱きかかえるようにして窒息死していたらしい。
私は警察から事情聴取を受けた。
ナオキの最近の様子とか、周囲に恨まれるようなことはなかったかとか。
「ナオキは、精神的ブラックホールになったんだと思います。」
私はこれだけ答えて泣き出した。
後のことはよく覚えていない。
それから数年して、
私はまた別な人と付き合い始めた。
あれから独占欲の強い人が怖くて、
今付き合っている人は、博愛主義のとても優しい人だ。
その彼と、食事に出かけたとき、
またその彼が変なことを言い始めた。
「最近、僕、おかしいんだよね。
なんか、自分の持ってるもの、
全部人にあげたくなるんだよ。
服とか、サイフとか、
あとは、爪とか髪とかも。」
やれやれ。今度の男は精神的ホワイトホールか。
私はその彼とさっさと別れることを決めた。
頭の中で、ネタになりそうなものは多々あれど、
それをきちんと最後まで文章にするのが難しいですよね。
ああ、時間が欲しい。




