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悪役令嬢の一人芝居

作者: ぺいた
掲載日:2026/04/14

先生があの名作の続きを描いてくださることを願って

学園に入学する日、私は前世の記憶を取り戻した。

前世で大好きだったマンガの、悪役令嬢に転生していたのだ。


私は歓喜した。そのマンガは、悪役令嬢が幸せになれるマンガだったから。

それなのに…!


とうとう卒業パーティーの日がやってきてしまった。

この日、私は婚約者であるポンコツ王子に、覚えのない罪で婚約破棄され、王都から追放されるはずなのに!


そして着の身着のままでとぼとぼと歩いていると、隣国の皇太子スパダリに拾われて溺愛されるはずなのに!

なんでニコニコして私をエスコートしてるの!? 殿下!


私を陥れるはずのゆるふわ男爵令嬢も、今日は私をさしおいて殿下の腕にしがみついてるはずなのに!

なにしてんの!?


と、男爵令嬢を見たら、隅っこからこっちを見てほっとしてる。

おまえ! おまえも転生者だな! 

「ポンコツ王子を騙して王妃の座を狙った罪で処刑」されるのが嫌で、殿下に近寄らなかったんだな!(まあ気持ちはわかる)


でも私だってやだよ! ポンコツ王子と添い遂げるなんて!

スパダリと結婚したいよ!


なんとかならないのか! シナリオの強制力? だっけ?

なんかそういうので、マンガの通りにならないのか!


ここは、いちかばちか、やってみるしか…!


私は、最後の手段としてスポットライトを準備していた。

私の合図で従者が会場の電気を消す。


「?!」

「どうしたの?」

「何事だ!」


いきなり真っ暗になった会場に、集まった者たちがざわめく。

オーケストラも音楽を止める。そこに私の声が響く。


「今なんておっしゃいましたの!?」


スポットライトが私にばーん!

みんなが注目する。


「わたくしが、男爵令嬢をいじめていたとおっしゃるの!? 池に突き落とした? 教科書を破った!?ドレスを引き裂いた? 何の根拠があってそんなことを…!?」


「えっクラウディア様?」

「誰がクラウディア様を非難してるの?」

「まさか殿下が?」


みんながとまどう中、私はシナリオをひとりで進める。


「証人が、いるというの? 複数の生徒が見たと? いったいどなたが…あっ!」


私はひとりで後ろに倒れこむ。


「え! 誰? 誰かにつきとばされた??」

「誰かいるの? クラウディア様しか見えないけど…」

「クラウディア様!?」


そばにいる数人が駆け寄りそうだったので


「来ないで!」


と叫んで足を止めさせる。


「わたくしに近づかないで! 触らないでくださいまし! わたくしのことを信じてくださるかたはいらっしゃらないの!? 私は決して、いじめなど…!」


「クラウディ」ガッ!


よけいなことを言いそうな殿下を、暗視カメラをつけた従者が手刀で失神させる。グッジョブ!


私はゆっくりと立ち上がり、ドレスの乱れを直す。

「わかりました…。婚約破棄、承りました。えっ! その上国外追放!? そうですか、男爵令嬢とお幸せに…」


「えっちょ」ガッ!


しゃしゃりでてきそうな男爵令嬢も従者が手刀で失神させる。

ふたりを寄り添うように座らせて、サムズアップ。

ありがとう従者…! あんたできる男だよ…!


私は美しくおじぎをしたあとに、きりりと顔をあげて後ろを向き、会場の出口に向かう。途中、上を向いて立ち止まり、また歩き出す。


「えっ? 雨?」

「何いってんの、室内なのに」

「だって…雨が見える…クラウディア様、雨にうたれてる…」

「見える…私にも見えるわ!」


やったすごい。私って女優の才能あるんじゃない?

なんか調子にのってきた。あれもやってみよう。

何もない空間に手をつき、ぺたぺたと手の平でおさえる。


「あっ壁! 壁があるんだわほら!」

「ほんとだ壁だ!」


パントマイムの才能もあったようだ。

私は空間の中に手を当て、ぐっとひっぱる。


「扉!」

「扉をあけたところね!」


伝わってる。


「お父さま…そうなんです…いま、婚約破棄されて…申し訳ありません…わたくしが…わたくしがいたらないばかりに…」


「誰もいない、いないけど…」

「見える! クラウディア様を責めるご家族の姿が!」

「クラウディア様…!おかわいそうに…!ぐすん」


「きゃあ!」私は横っ飛びにふっとんでみせた。

「お父様! どうか、お聞きください! わたくしは…!」

空間をどんどんと叩くしぐさ。


「締め出されたんだ…」

「なんてひどい…」


会場中の人がクラウディアの演技に見入っているが、従者たち(ライト係と失神係)は困っていた。

「婚約破棄承りました、のあとで合図をするから、そうしたら終了、電気をつけて」という手はずだったのに、全然合図が来ない。


従者は悟った。「お嬢様は天性の女優…! もう誰も、あのお方を止められない…!」


クラウディアの演技は続く。


ひとり歩いてぬかるみで転んだところに、馬車が通りかかり、隣国の皇太子と出会う。


皇太子がいかに有能でイケメンであるか、クラウディアの表情を見てるだけでわかる。


隣国の婚約破棄された令嬢など! と蔑まれる場面では、会場の皆がくやしげに顔をゆがめ、


実はクラウディアは聖女であることがわかり、隣国の瘴気を払うことができるとわかったときは、歓声があがった。


そして隣国の皇太子に結婚を申し込まれて、末永く幸せに暮らすまで…


やりきった…!

ラストまでやりきったわ! 


会場の電気がつく。シーンとなった会場。

そして…


スタンディングオベーション!

(てか最初からみんな立ってたけど。)


「すばらしかった!」

「劇団のお芝居を見ているみたいだったわ!」

「たった一人の演技だったなんて信じられない!」

「卒業パーティーでこんな余興を楽しめるなんて!」


「クラウディア、君にこんな才能があったなんて知らなかったよ」

いつのまにか目を覚ましていた王子にも褒められた。


「なぜか中盤の内容を覚えてないんだけど…」

ぎくっとして

「殿下はお疲れなのかもしれませんわね」

とごまかす。


「クラウディア様…おそろしい子…」

同じくいつのまにか目を覚ましていた男爵令嬢にも、白目で褒められた。


「しかしお芝居とはいえ、私が婚約破棄したり、隣国の皇太子と結ばれるような展開はいただけないな~。次はぜひ、私とハッピーエンドになるような展開を頼むよ!」

と言われてしまった。


(えーと、私はなんのために一人芝居したんだっけ?)

と思ったが、演技を終えた満足感で、他のことはもうどうでもよくなっていた。


なにより、私の芝居を褒めてくれたことで、王子に好感をもった。

(よく考えたら私もポンコツなんだし、殿下と仲良くやれるかも? 今度は、王子とハッピーエンドになる悪役令嬢の話を演じてみようかな。殿下、喜んでくれるかな?)


こうして、「たまに王太子妃の一人芝居が見られる夜会」が評判となり隣国からも親しみを持たれ、クラウディアは末永く幸せに暮らすのであった。

企画で「あの名作の続きの原作を書くコンテスト」とかあってもいいんじゃないかと思う今日この頃。

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― 新着の感想 ―
乗りに乗ってるクラウディア様かわいいですね。 漫画界の国民的演技派女優って見方変えると自己陶酔なお調子者(死語)だったんですね、ありがとうございます楽しく納得しました。
おかCけれど、やさC世界♪
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