資本の会議
高級ホテルの最上階。ガラス越しに夜景を見下ろしながら、数人の紳士が丸テーブルを囲んでいた。テーブルには高級ワインとアンティークの灰皿が並び、空気には葉巻の煙が漂う。ここでは政治家でも研究者でもない、純粋な資本家たちが未来を決めていた。
「ERSは優秀な商品だ。」白髪の老紳士が口を開いた。「人々の感情を操作できるなら、消費行動も投票行動も誘導できる。我々はこの技術にいくらでも投資する価値がある。」隣の若い投資家が笑った。「そしてその実験台はもう用意されている。アイドルというブランドは、誰もが喜んで買い求める。」
一人が資料を指で叩きながら言った。「ただし、政府や研究者に全てを握らせるのは愚策だ。市場は我々が制するべきだ。今回の総選挙をきっかけに、ERSの利用範囲を広げる。スポンサー契約に新たな条件を加え、コンサートの収益を最大化する。」
別の男が杯を掲げた。「彼女たちがステージで泣けば、人々は共感し、商品は売れる。彼女たちが微笑めば、株価は上がる。彼女たちが沈黙すれば、我々は別の偶像を用意する。」彼らは笑い合い、その笑い声はどこか獣じみていた。
窓の外で花火が上がり、夜空を彩った。都市は祝祭のように明るかったが、この部屋に集う者たちの心には別の炎が灯っていた。彼らは力と金のためなら何でも利用する。偶像たちの純粋な笑顔でさえも。
「計画通りにいけば、来年には次のフェーズに入れる。」議長が最後に言った。「だが一つだけ覚えておくべきだ。感情を操作する者は、いつか自身の感情に呑み込まれる。」その言葉に、一瞬だけ沈黙が落ちた。彼らの目に薄い恐怖がよぎったが、すぐに乾いた笑い声にかき消された。




