表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
さよならからさよならへ(仮)  作者: いもつぶし
4/10

第四話

それからは、空虚な日々だった。狭いアパートの中で、俺たちは互いをいないものとして扱う同居人になった。彼女が淹れたコーヒーの香りも、洗濯物の匂いも、以前と同じはずなのに、その全てが俺の罪を告発しているようだった。


そして金曜日の夜、彼女は消えた。 リビングのテーブルには、名前の書かれた離婚届と、あの封筒。クローゼットからは彼女の服が消え、キッチンにはペアのマグカップの片方だけが、まるで俺自身のように、ぽつんと取り残されていた。


窓から見下ろすと、闇に溶けていく黒塗りの高級車。彼女は一度だけ、俺たちの部屋があった2階を見上げた。目が合った、気がした。だが、彼女の瞳は何も映していなかった。


一人になった部屋で、俺は何度もあの夜の自分の言葉を反芻した。あれは本心だったのか?違う。ただ、怖かったのだ。彼女を失うことが。だから、自ら手放した。自分の弱さで傷つく前に、自分で壊してしまった。


「……くろこ」


絞り出した声は、誰に届くこともなく、果てしない後悔だけを抱えて、俺の時間は止まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ