訓練の始まり
「あ、あの〜、、、もしかして、ノークス君ですか?」
「うん」
訓練場に到着すると、数人の生徒に声をかけられた。
多分、父のことがあって声をかけてきたのだろう。僕の無味な返事に、彼らは落胆の表情と共にいつの間にか、いなくなって行った。
「おいおい、ノークス。ちょっと冷たいんじゃないか?ただ俺たちと仲良くなりたいだけのやつもいただろう」
「うん、そうだろうね。、、だけど、僕にも友人を選ぶ権利はあるのさ」
アレンは浅くため息を吐き、さっき声をかけてきた生徒達の元に近づいて行った。
「、、、剣、振ってみるか」
訓練場の隅に置かれている、剣架に足を運ぶ。
、、、ここで伝説に出てくる英雄は剣を吟味したり、剣に選ばれたりするのだろうが、僕にはそんなことは起こらない。
何故なら、選び、選ばれる必要すら無いからだ。
僕の力は周りの影響など受けないし、流されない。この信念は、僕の心と身体に生まれた時から染み付いている。
まるで呪いのように。
ヒュンッ、 ヒュッ
剣を何気なく振り続けていると、時は風のように流れた。
ーーー少し経つと、訓練教官が現れた。
男は赤毛を肩まで伸ばし、左目には眼帯が掛けている。30代後半には見えるが、その若さに釣り合わず、彼の隠れた左目からは深い激情と、それを抑える氷のような静けさが感じられる。
ゆっくりと口を開けーーーー
「ーーーー、、、剣を手に取ゴフッ!」
ーーー唇を噛んだ。
「、、えっ」
教官の口から、血が噴出し、小さな血溜まりが地面にできている。
「ちょ、だ、大丈夫ですか?!教官殿!」
駆け寄り、肩を抱く。小さく肩が震えている。
口を噛んだ程度で大袈裟な、、、とは思ったが、血は大量に出ているので、一応。
「誰か、救護員を呼んできてくれないか?」
、、、返事がない。それどころか、見回すと誰もいない。
「あーーーー、なんなんだよ、君は」
「、、、?」
腕の中の男の左目が、こちらを見ている。
「隙がなさすぎてね、奥の手を使わせてもらったよ。、、、痛いんだよこれ」
「、、!なんだ、これ」
身体が黒い光を放つ霧に包まれていく。
「私の名は夢幻の騎士、エルディオン。君には特別な夢を見させてあげよう」
その言葉と共に、霧に包まれるように僕の意識は夢へと堕ちていった。