騎士学院にて
リングラシア王国が王都、ベイルドにある、王立騎士学院にて。
「諸君、おめでとう。、、、初代騎士王が興したこの国で、騎士学院に入学することの意味するところは、諸君の血を証明するものである。平民とは異なる、その崇高なる血統を」
学院の中央に位置する講堂、そして、さらにその中心の壇上に立つ老婦人は、重々しい空気の中、演説を始めた。白く輝く装束に身を包まれたその姿は、彼女の高潔さを物語っている。
「あれが、学長か、、、。どこの家だ?」
「えっと、、ああ、プライド家です。、、、ってええ?!」
「どうした」
「あの学長、公爵閣下御本人です」
「、、!」
講堂に集められた生徒は、学長の言葉に傾倒する。
彼女が王国史に登場する英雄の一人であることを知って。
「、、さて。少し長く話しすぎたが、諸君に伝えたいことはただ一つ。、、、我らの権能は、我らのためのものではない。王国のためであり、民のためである。これは教訓ではなく、信念である。それを、諸君には学んでもらいたい。では、健闘を祈る」
そう言いのこし、学長カエラ=プライドは壇上を降りた。
「プライド学長、ありがとうございました。では、中等部の生徒はⅠ組から順に教室に戻ってください」
教授らの指示に従い、それぞれの教室へと戻っている途中、二人の生徒が言葉を重ねている。
「ノークス、最近お前の父上殿、異端者共を殺したんだってな。、、、お前もいたのか?そこに」
ブロンドの髪をうねらせた少年は緑色の瞳を向け、前を歩く少年に声をかける。
「ああ、アレン。殺した現場にはいなかったけど、父上が彼らを連れて行ったのは見ていたよ。中々強そうな異端者だったけど、大丈夫だったみたいだね」
「君の父上殿、、ランスロット卿はこの王国最強の騎士だからな。異端者ごときでは傷すらつけられない。理想の騎士だ。、、、俺も卿の騎士団に入団したいし、この学院にいる中等部、高等部の学生は皆そうだろう。お前を除いて、だが」
「、、、」
ノークスは黒髪を風に靡かせ、アレンから目を逸らした。そして、自分にしか届かないほどの囁き声で呟く。
「10年後にはどうなってるか、分からないからね」