湖の騎士
「あああああぁぁぁっ!!!」
ユークリッドの咆哮と共に、その魔力は路地裏の塵までをも分解し、剣へと再構成していく。
「念動の権能、、!」
両手を広げ、その周りに十の剣を凝縮させ、精錬する。
「、、、ふむ。中々お上手に権能を使えているようですが、、、。一旦場所を移しましょう」
男が傘を下げると、雨が止んだ。
そして、ユークリッドの一瞬の瞬きの間に、二人は忽然と街から消えた。
「は、、?なん、ここは、、、?」
辺りを見回しても、建物らしき物は一切見当たらない。すぐ隣には青く澄んだ湖が静かに靡いている。
悪寒が全身を走る。
「アキラ、、。どこだ、どこだどこだどこだ!アキラ!!!」
さっきまで隣にいたのに、どこにもいない。
「、、おい!!お前、、、。彼女はどこだ」
男は髭を撫でながら答える。
「まず私の名はランスロットだ。お前ではない。そして、彼女、、アキラ君は街に置いてきている。女性は巻き込みたくないのでね」
「、、、騎士にしては優しいな」
「私のためだから、気にするな」
そう言うと、互いに拳に力を込める。
「、、、僕の念動は、騎士共を殺して集めた力でねぇ。そこら辺の騎士じゃあ出来ないことが出来るんだよねぇ。ほら例えば、、、」
左手を湖に伸ばす。
「ああっ、、!」
湖の水が、ユークリッドの周りに集まり、凝縮される。
「僕は今まで11人の騎士を殺した!その権能を全て奪って!、、、お前の権能も奪ってやるよ!!!」
研がれた剣が、切先を定める。
ユークリッドの指先がランスロットを指す。
「死ね」
剣がランスロットの身体を突き刺す。
全ての剣が突き刺さった。
「、、、やった」
今思えば、何故なのか最初感じていた恐怖はいつの間にか消え失せ、高揚へと変貌していた。そのためか、実力以上の権能が引き出せたのだろう。名持ちの騎士を倒すことができた。
「はっ、、、。はははは。僕は倒したんだ、、あの、湖の騎士を、、、」
、、、そう、『湖の騎士』を。
その2日後、オーランド地方のオルロド湖でユークリッド=アルノートの溺死体が発見された。