企む二人は
「例のアレは、用意できそうか?」
街角の角の角にある二人の行きつけの店、黒薔薇亭で、黒いコートを見に纏った二人組が話している。
「、、はい、プラン通りに進めば4日後には」
男は大きく頷きながら、深いため息をついた。その深さは、周りの人々がチラリと見てしまうほどだ。
女は男の様子を見ながら、少し嬉しそうな顔を見せる。
「いいねぇ〜、アレさえ手に入れれば、僕の鎧は完成するからねぇ。楽しみで楽しみで」
男は目を細めながら笑みを浮かべる。
「はい、ユークリッド様の鎧が完成した時には、もはや騎士など相手にすらならないでしょう」
「そうだよねぇ、そうだよねぇ、、、」
二人が肩を上下に動かしながら声を抑えていると、店に来客鈴が鳴った。
チャラーンチャララーン
どこか頼り無い音と共に、二人の客が来店した。
一人は、父親であろうか、しっかりと整えられた髭、髪、そしてその右胸には貴族の証である金と銀、白色で装飾された紋章が鈍く光っている。そして、その胸にはもう一つ、漆黒の徽章が付けられている。
そしてその背後には、男の息子であろう、黒髪をなびかせた清廉な顔つきの少年が立っている。
「あの席にしよう!お父様!」
少年は父親の服の袖を引きながら、店内を歩き出した。見た目とは裏腹に、少年らしい態度を見せる。
この大陸では黒髪は珍しいため、店内の客は少年をチラリ、チラリと気にするそぶりを見せるが、少年は周りを気にすることなく、父親との会話に没頭している。
周りの人々も少し時間が経つと、元々さほど興味もなかったのか、少年を見る者はいなくなった。
、、、二人を除いて。
「、、、ヤバいんじゃ無いでしょうか、ユークリッっ、」
男は女の口を素早く塞いだ。その手は、水気を帯びている。
「モゴモゴ、あ、汗かきすぎじゃありません?大丈夫ですか、ユークッっ、」
男はもう一つの手でまた口を塞ぐ。
「黙れ!」
男の緊張は頂点に達する。
「あれは、騎士だ」