出立のとき
「うわっ、君、早すぎでしょ!」
目が覚めると、また訓練場が拡がっている。ただ、今回は夢ではなさそうだ。訓練場の周りもくっきりよく見える。
そして、目の前には夢幻の騎士エルディオンが俺の顔をまじまじと見つめている。
「どれくらいでした?教官殿」
「んー、5分くらいだね。まあ、ブレン君が何か権能を使ってたみたいだからそのせいでもあるのかな?それにしても早いけどね。」
「他の皆は?誰も目を覚ましていないようですが」
エルディオンは地面に腰を下ろし、笑みを浮かべる。奇妙な男で、その顔は見るたびに印象が変わる。今は、穏やかな婦人の印象を受ける。
「あそこは君のお父上を本人の力で倒せるまで出れないようになってる。まあ今回は誰かのおかげでも、ちょっとでも関わってたら良いかなって思ってるけど。だから、皆はまだ頑張ってるよ」
アレンは他のみんなと協力してるのか少し気になるが、アレンがいない今は、一人でここを出る良い機会かもしれない。
「教官殿、Ⅰ組の生徒は課外活動ではどちらにいく人が多いですか?」
「そうだね、1番多いのはやっぱり王都の探索者ギルドに登録して、まあⅠ組の中等部の生徒ならB級からの人が多いかな。それで、色々な依頼を受けながら大陸を周るって感じだね。あとは少数にはなるけど、異端者狩りになって大陸の異端者を減らすって言ってた子もいたね。大陸を出て騎士の権能を広めるって子もいたかな」
やはり、Ⅰ組の生徒は活発的だな。皆探索だとか異端者狩りだとかの目標を掲げているが、結局は権能を集めることが目的だろう。学院に留まらなければならないⅡ組以下の生徒との間に大きな差をつけられるだろう。
「君はどうするんだい?私的には、異端者狩りがおすすめだよ。権能集めには1番手っ取り早いと思うけど」
、、、こいつ、本当に教官か?本来権能は王立権能調律院の管轄にあるから、勝手に授権する行為は重処罰の対象のはずだ。
「じゃあ、取り敢えず探索者になってから考えてみますね。では、失礼いたします」
そう言い残し、その場を足早に去った。
後ろをチラリと振り返ると、エルディオンは黒い霧に包まていた。その姿はノークスが去った後も霧に包まれたままであった。
部屋に戻り、出立の準備をする。アレンとは初等部から常に一緒にいた。そのおかげでお互いに高め会えた部分もあるけど、俺の本当の目的には賛同してもらえないだろう。だから、今しかない。話して仲違いするくらいなら話さないほうがいい。
「、、、こんなもんかな」
荷物を旅袋に詰め終わった。この部屋には初等部で寮に入ったときから、5年間暮らした。何故かアレンの私物がチラホラ散乱している。
「ノークス君、行くんですか?」
タダノ=マートン(担当の教師)がドアの前に立っている。
「ええ、先生。初日に出ることになるとは思いませんでしたが、得るべきものは得たので」
「新しい友人1人と、剣かな?それだけで良いんですか?初日に出ていった生徒は流石に今までも居なかったんですよ」
この女、自由だと言ったくせに。うるさいな。
「一度王都に行ってみて、また決めようかと思ってます。ですのですぐ帰ってくるかもしれませんよ。その時はよろしくお願いします。では、行って来ます。」
タダノの横を通り抜ける。
長い廊下を歩きながら、これまでの5年間の出来事を思い起こす。
「友達2人しかできなかったなぁ、、、」
だが、あの2人はそれぞれ違う分野で俺の役に立ってくれるだろう。
そんなことを考えているうちに、学院の門をいつの間にか出ていた。




