斬るだけ
父上(影)は訓練場の中央に立っている。少しの気配も感じない。ただ存在するだけでその場を圧する。
槍隊の残った4人が同時に突きを放つ。鋭い穂先が影を取り囲むが、次の瞬間には全員が地に伏している。盾隊がすぐさま前に構えるも、その影は止まらない。鋼鉄と肉を裂く音が、訓練場に響く。
「アレン、防御は捨てろ」
アレンは、一瞬驚いた表情をしたが、何も言わず剣を構え、正面を向いた。
「バカみたいに感じるかもしれないけど、格上相手に防御に徹しても勝ち目はない。ただ、斬るだけだよ。、、、さあ、斬ろう!!!」
二人は、同時に踏み込み、父上(影)に突進した。
、、、あれ、結局こうなるのか。
そう思ったのも束の間、影の剣撃が頬を裂き、肩を抉り、腹を掠める。血が噴き出る。
だが、退かない。
振り下ろす、振り上げる、横薙ぎに、そして斬り払う。傷を受けようが、骨が軋もうが、止まらない。退かない。ただ斬る。それだけを刻み込む。
紅い火花が散る。
影の剣が一閃、俺の喉元を追う。
その瞬間、いやそれよりも少し先に、俺の剣が光を放つ。
影の左腕が、宙を舞った。
わずかに後退する影。その一瞬を、アレンは見逃さない。鋭い突きが大体を抉る。それと同時に、ブレンの矢が影の肩を穿った。黒いもやが噴き出る。
だが次の瞬間、影の剣が唸りを上げる。
「ガッはッッ、、」
アレンの身体が、二つに裂かれる。
「ノークス、、次だ」
その言葉を残し、その身体は影に崩れ落ちた。
怒りを感じるよりも早く、影の剣が俺を捉える。刃が首を触る。
「ーーーもう分かった。次は斬る」
視界が紅く染まった。
ーーーー次の階層
目を覚まし、すぐさま立ち上がる。
、、、背後に、いる。
父上(影)が振りかぶった瞬間、俺は既に振り抜いていた。
一閃。
それだけだった。
影は反撃する間もなく、闇に溶けていく。
それと同時に、夢から覚めるように、現実へと舞い戻す光が、俺を包み込んだ。