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05 電話の声

スマホで通話する際に聞こえる相手の音声

正確にいえば本人のものでは無いそうです


サンプリングした音声を解析し、相手側のスマホからはそれとよく似た音声を出しているそうです


どうやってその人の声だと認識しているんでしょうね

お疲れ様です 田中きらりです


今日は先輩に頼まれて荷物を届けに移動中です

急遽、お客様先で必要になったものがあり私が運んでいるところです


こういう時の先輩からの連絡にしては珍しく私に直接電話がありました

会社には社長も静夜さんもいたのにまだ見習いの私にかけてくるなんて先輩も焦っていたのでしょうか?


必要なものを揃えて出発です

先輩からの通話を静夜さんにも聞いていただきながら準備したので問題はないはずです


向かうのは会社から近いお客様のところです

オフィスを出るタイミングで先輩にメッセージを送りました

“今からオフィスを出ます。到着は15分後くらいです。よろしくお願いします。”

すると先輩からすぐ返事がきました

“?”

“お疲れ様。わざわざ来てくれてありがとう。”


急いで指定の場所に向かい何事も無く目的地付近を歩いていました

予定通り到着する直前でスマホの着信音が鳴りました

「もしもし、田中です」

「お疲れ様。今どこにいるかな?」

先輩からの電話でした

「もうすぐ着きますよ。お客様の会社の看板見えてます。」

「そっか。今オレがいるのその建物の隣のビルなんだ。そっちに来てくれる?」

「隣ですか?1階がコンビニの?」

「そっちじゃない。反対のビル」


先輩の声に従って見てみると確かに反対側にもビルはあります

ただそのビルはお世辞にも綺麗とはいえず人のいる気配も感じられません

「反対側って入口の所に花壇があるビルですか?」

「そうそう、そっちにいるから入ってきて」

「わかりました」


不思議に思いながらビルの入り口まで歩きます

入り口の前に立つと異様さがより際立ちます


明らかに手入れのされていない花壇、明かりの灯っていない室内、全く人気を感じられません

ドアに手をかけるのも躊躇してしまいます


「さあ、どうしたの?中に入ってきて…」

先輩の声がスマホから聞こえます

「今から入ります」

自分を奮い立てるように答えます

そして意を決してドアに手を伸ばします


ガッ!


ドアに伸ばした腕が誰かに掴まれました

掴んだ腕を辿り視線を相手の顔に向けます


「お疲れ様。きらりさん」

そこにいたのは先輩でした

「え、先輩どうして?この中にいるんじゃ?」

電話の向こうにいる先輩が急に腕を掴んでいるこの状況に混乱していると先輩が答えてくれます


「どうしてって、今日のお客さんはそっちのビルだよ。きらりさんがメッセージくれた時に丁度用事終わってさ。15分後に来るってメッセージくれたから中で待たせてもらってたよ。そしたらきらりさんがこっちも見ずに通り過ぎちゃったから追いかけてきたんだ。」


「そんな… 私は先輩から連絡いただいたから必要なものをお持ちしたんですよ。」

「必要なもの? そんな連絡入れてないよ。」

「いや、今も電話してたじゃないですか?」

「今日は1本も電話してないけどな」


スマホをみるとすでに通話は切れていました

着信履歴をみても先程の通話時の記録もありません


さっきまでの電話は誰だったのでしょうか


あなたの通話のお相手、本当にご本人ですか?

私が送ったメッセージを仕事終わりに迎えに来てくれると思っていた先輩は帰り道にご飯を奢ってくれました


どこでご飯を食べようかウキウキで検索してくれていたようです


お腹は満たされたので良しとします

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