厚生部
専門部が決まり、一人一役仕事が始まった。
「みずきちゃん、お盆配りしよう」
「天馬〜台拭きよろしく」
「隼也さぼるな……」
部長として私は指示と活動をこなして行く。
「いしばしくんもお盆配りしよう」
「あ、俺いしばしりです。」
名前も間違えながら覚えていく。
まずは、1週間、クラスの給食時間を観察してみた。
着替えるのが遅いな〜
あと喋っててお皿配るのも遅い…
などなんとなくクラスについて分かってきた。
また、話すことでつばが飛んでいる瞬間をみて背筋が伸びることもあった。
コロナも減少してきたし、みんなで一緒に食べた い。そのために改善していかないとな!!
やる気がわいてきていた。
帰りの会での1日報告の時間になった。
部長副部長が一日の良かった点、反省点について話す時間である。
「3分前入室がまだまだできていません」
「移動教室の並びが遅いです」
「給食を食べる時間を増やすために、まずは着替えるのを早くしてほしいです。例えば、移動教室の時は荷物は友達に持っていってもらうとかしてみてください。あと、マスクをきちんとしてください。それと、……」
厚生部だけ毎日長い反省になっていた。
そこに少し反感するものも少なくなかった。
「転校生がいきってるぞ」
と言われた時は、
あなたたちがちゃんとしてくれればいいんじゃない
と噛みつきそうになった。
塾に行き、そのことを父に話す。
お父さんは塾の先生だ。私が引っ越してきた理由でもある。あのまま過疎地域にいるより、少しでも人の多いところに行って学びなさい。というのはお父さんの考えであった。
でも、今その考えがよくわからない。給食の時間を見ても、授業の様子を見ても凄いと思わない。
正直、小学校の6年生のときの方がすごかったな。
「ひどいと思わない??
私、みんなのために頑張っているのに!!」
お父さんはなんて慰めてくれるだろう。
そう期待したがそれはハズレだった。
「はなこが正しいとしてもそれでは一つにまとまらないな。一方的だと本当の想いは伝わらないぞ」
「一方的?じゃないよ!ちゃんと理由も説明してるし、私頑張ってるのにみんな認めて素直に話を聞いてくれないの」
「違うよ、はなこ。聞いてもらう側なんだから、納得してもらえるように相手のことを思いやって伝えなきゃダメなんだ。」
「…」
「小学校のときはそれで上手く行ったよな。
でも、中学生の今、それじゃ上手くいかないんだ。
もう、そのことに気づいているだろ?」
そう言われて、頷く。私は今うまく行ってないことに気づいていたから。
「小学校からの馴染みがあるみんなとははなこは違うだろ?まずは信頼関係を作ることが大事じゃないのか?そりゃ、真面目に頑張ってるからこそ、なんでできないの?って思う時もあるだろうけど、それでも周りを見下さずにやってみなさい。」
「うん」
「知らない世界に飛び込んで、味方を作りなさい。」
次の日は金曜日だった。
金曜日はおぼんふきんを洗剤で洗う日。副部長の隼也と一緒に洗いに行く。
「隼也、私の言い方ってきついかな?」
「…まあ、山田みたいに向上心がない俺らからしたらちょっと厳しく感じるな」
「そうなんだ…」
すこし落ち込んでしまう答えが返ってきた。
「なんだ?らしくなく、悩んでるのか?「」
「らしくなくってなんだよ!私は結構考えて悩むし」
「ふーん…」
「本当にいいクラスにしたいんだ。食べるのも好きだし、みんなで楽しく食べるために時間をつかりたいんだ…」
自分の考えていたことを打ち明けるとこう返ってきた
「いい考えもってるんだな、一緒にやるよ、俺も」
「そうか…ありがとね」
「浮かない顔するなよ!サボりまくりだった俺が今仕事ちゃんとしてるのは、山田が毎日声かけてくれたからだ。想いは伝わると思うよ」
「…そっか ありがとう、隼也」
そこから隼也と話して、褒めるべき点も探していくことにした。
そこから2週間、少しずつだけど給食準備時間が減ってきている。
「机を動かして各専門部に集まってください」
今日は学級専門部会の日。いつもは朝読書や学力アップをしている時間に今日は各専門部会で目標と反省について話し合う。そうしたら
「今月の目標は、棚を毎日整理しようです。反省は…
と発表していく。
私は前より少し元気になっていた。やる気にまた満ち溢れている。
「今日の放課後は学年専門部会があるので部長、副部長は各教室に集まってください」
まことがそう言って朝の会は終わった。
話したおかげで仲良くなった隼也と一緒にC組へ移動する。C組にはすでに他のクラスが集まっていた。
背の高い女の子ばっかりだ。
背の高い女の子たちは固まって話をしていたようだ。
私と隼也をみて椅子に座った。
「これより学年専門部会を始める
担当の冨上優治だ。何か質問はあるか?」
「はい!冨上先生!!」
やる気に満ち溢れすぎた私は挙手した。
「学年部長は今から決めますか?」
すると、なんだこいつという目をみんなに向けられた
「そうだな、今決めるか、
部長になりたいやついるか?」
「はい!!!!!!」
先生が言葉を発して間髪を入れずに声を出した。
周りの子は吹き出した。
「決定、じゃあ副部長やりたいやつ」
これは誰も手が上がらなかった。
隼也、一緒にやろうよ〜
そう後ろを振り向くと隼也はすぐ手を上げた
「決定、じゃあ今日は解散」
異例の速さで決まった学年厚生部長と副部長の噂が広まっていくことをまだ知らなかった。
そんなキラキラした目で振り返られたら断れないでしょ
隼也はそう思っていた。