入学
「山田花子」
「はい!!!!」
名前を呼ばれて返事をするも、私の周りはどよめく。
分かってるからね、みんなが笑ってるの!!
山田花子、13歳。今日からピカピカの中学一年生。
みんなきっと私の名前を知っている。
結婚届に、図書館カード作成の見本にも使われている名前を母と父につけてもらったからだ。
きっと他の人なら嫌がる名前を私は好いている。
私のことを知ってもらうことは夢に繋がるからだ。
私は夢を叶えるために、世界を知りにきた。
自分の故郷を今より素敵なまちにするのだ。
名前だけじゃないって証明するの、この3年間で!
そう思って、挑戦的な笑みが溢れた。
そう思っている内に全員の名前を呼び終わったらしい。校長先生が話を始めた。
「完璧を目指す人が多いことは向上心があって
素晴らしいことだと先生は思います。しかし、完璧にならなくていいのです。失敗しながらこの学び舎で一生に一度の最高なら3年間を過ごせることを願っています。」
いい話をするじゃないか。
でも一つ、完璧な人がいないだって??
先生これからあなたはびっくりすることになるでしょうな。
ここに山田花子がいるから!!
「それでは、これで先生の話は終わります。
皆さん、起立!!
明るい希望を込めて歌を歌いましょう!
小学校の卒業式でも歌ったと思うので
1年生もしっかり歌いましょう。国歌斉唱!」
先生、それは他の地区の小学校と間違えていませんか?そんな声をあげたかったがあげなかった。
違いますね、私が地区外ということですね。
転校生の私は力強く綺麗な君が代に囲まれる。
ちよにやちよに、歌ってないのは名前を呼ばれても返事をしなかったヤンキーたちと私だけだった。
違うの、私非国民じゃないの。
小学校によって歌えるかは変わるのよ。
そんな目で見ないでください。
入学式から印象下げ案件である。
校長先生に威勢よく心の中で言った言葉をすぅっと消す。
まあ、今日びっくりさせる必要がある訳じゃないよね
名前だけじゃないって証明するのは明日からにしよう
私は顔が赤くなるのを感じながら、
そう思うことにした。