愚かな転生ヒロインの行く末は
私はサリナ!
この乙女ゲームの世界にヒロインとして転生してきた、元極普通の日本人の女の子!
この世界では聖女候補だよ!
けど、この世界はちょっとイレギュラーみたい!
なんと、悪役令嬢のはずの女がメイン攻略対象で私の推しキャラの王太子殿下に愛されてるの!
「そんなの、有り得ないよね」
だから私は、何故か悪役令嬢なのに私を虐めてこないあの女にイジメの濡れ衣を着せたの!
ちゃんとイジメの証拠も作って、偽の証言をしてくれる人もいる。
だから大丈夫だと思ったのに。
「偽の証言をしてくれるはずの協力者は王太子殿下のスパイで、私を嵌めたなんて…私はこの世界のヒロインで、聖女候補なのに!」
有り得ないよね!本当に嫌になっちゃう!
そして私は不敬罪とかなんとかで逮捕されちゃった。
死罪もありえるって聞いて、怖くて震えた。
けれど気付いたんだ。
それなら悪役令嬢の体を乗っ取っちゃえばいいじゃないって!!!
「聖女は光魔法の使い手。けどヒロインで特別な力を持つ私は、光魔法と相反する闇魔法も使える。闇魔法も鍛えてきたから、人の身体を乗っ取る術も使えるようになってるはず!!!」
そうと決まれば魔法発動!!!
目が覚めたら私は王太子殿下の部屋の中だった!
目の前には王太子殿下!
やったー!!!
成功した!
「王太子殿下…」
「なに?ユミナ」
「愛してます…」
そう言って私は王太子殿下にキスをしようとした。
瞬間、王太子殿下に突き飛ばされた。
「きゃっ…」
「ねえ、君は誰?」
「え?」
「ユミナに何したの?本物のユミナはどこ?」
…どうしてバレたの!?
「な、なんで」
「…良いことを教えてあげるよ。ユミナは俺を愛してるなんて言わない。あの子は誰も愛せないから」
「…どういうこと?」
たしか悪役令嬢ユミナは、誰にも愛されない不遇の幼少期を過ごしたはず。
そして、唯一の救いだった優しい婚約者に惚れ込んで嫉妬深い悪役令嬢に成長したはず。
「ユミナは愛されない女の子だった。継母や弟たちから暴力を受け、父親は無関心。ユミナの心は壊れ、俺の言葉も届かないほど深い孤独に沈んでいた」
やっぱりこの世界はイレギュラーなんだ。
乙女ゲームではそんな設定じゃなかった。
悪役令嬢は暴力までは振るわれなかったはず。
「だから俺はユミナに愛を教えたかった。溺愛した、甘く接した。それでもユミナは変わらなかった。深く深く、ユミナに溺れてしまったのは俺の方…だから、ユミナがあんな風に俺を求めることはない」
王太子殿下の目が怒りに燃える。
「俺のユミナはどこ?」
「わ、私知らないっ」
「…ああ、今気づいたんだけど、君あの聖女候補?」
「え、あ…」
「闇魔法も使えるって言ってたもんね。じゃあユミナはそこか」
そして王太子殿下は私を縛り付けて転がしておいて、『私』をここに連れてきた。
「…ねえ、ユミナ」
「はい、ローラン様」
「やっぱりユミナだ」
『私』を抱きしめる王太子殿下。
その瞬間魔法を解いて元の私に戻る。
抱きしめ返すわけにはいかないけれど、少しくらいなら抱きしめられるのに浸ってても良いかな。
そう思ってとりあえずリアクションは取らなかった。
けれど王太子殿下は、そんな私に首輪をつけた。
「はい、魔封じの首輪。これでもう魔法は使えないよ。父上も最初からこれを着けておいて欲しいよね。あの牢はそもそも犯罪者から魔力を吸い上げる設計とはいえ、魔力が想定を上回るほど多いとこうなるんだから」
「え…」
「でもまさか本当に引っかかってくれるとはね。ああちなみに、本物のユミナなら抱きしめられたら俺を容赦なく突き飛ばしてくるよ」
「そんなっ…」
それこそ不敬罪じゃん!
「大丈夫、ユミナにはそういう振る舞いを『俺自身が』許しているからね。問題はないんだ。いや、ちょっとはあるけど」
「…急に牢に入れられて、かと思えば出されて…なにごとかと思いましたが、そういうことですか」
「ああっ…ユミナごめんね!今拘束を解くから!」
乙女ゲームの設定と違って、悪役令嬢に本当に優しい王太子殿下。
乙女ゲームの設定と違って、王太子殿下に塩対応な悪役令嬢。
「はい、これで大丈夫」
「中身があの聖女候補とはいえ、人の身体は大事にしてくれませんか」
「ごめんね、君でない君とか吐き気がしてつい…」
「うわぁ…」
「でも怪我はないよね?大丈夫かな?」
「大丈夫ですけど…」
こんなの、私が知ってる乙女ゲームの世界じゃない。
私がヒロインなのに、私が王太子殿下に愛されるはずだったのに!!!
「…この泥棒猫!」
手錠も着いてて魔封じの首輪を着けられたけど、その辺の花瓶を手に取るくらいは出来る。
私は悪役令嬢に花瓶を投げつけた。
けど。
「…」
悪役令嬢は、それを闇魔法で作った盾で防いだ。
おかしい、悪役令嬢は乙女ゲームの設定では魔法を使えない劣等生だったはず。
「あはは、すごいね。さすがはユミナ。闇魔法はピカイチだね」
「闇魔法しか使えませんけど」
「うそ…なんで…」
私が知ってる乙女ゲームとまるで違う。
おかしい、こんなのおかしい。
「ああ、サリナ様」
悪役令嬢はこちらを見つめて言った。
「貴女、何を考えているのか知りませんけど今回の騒動でおそらく死罪が確定になりますよ」
「え…」
「うんうん、そうだねぇ…じゃ、牢にその罪人を戻しておいて」
私は看守だかなんだかの屈強な男たちによって牢に戻される。
そして死罪が決まった。
どうしてこんなことに。
私はただヒロインとして愛されたかっただけなのに。
私は最後の最後まで、何が悪かったのか理解できないままバッドエンドを迎えた。
神の子扱いされている優しい義兄に気を遣ってたら、なんか執着されていました
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あと
【連載版】侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
ちょっと歪んだ性格の領主様が子供を拾った結果
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