初配信前のあれこれ 2
カラオケルーム内の空気は固まっていた。俺は驚いた表情で、梨華はにこやかに、そして涼太はというと……あれ、あいついつの間にか部屋から出てんだけど?
「蓮くんが歌い手のRainさんだってことは、最初に聞いた時から気付いてたよ?」
「それ、マジで言ってる?」
「うん!だけどさ?それを直接言うのもどうかなって思ったし、蓮くんそういうの嫌がるかなとも思ったから黙ってたんだ」
「そうだったんだ」
「今蓮くんが自分で言ってくれたから、それなら打ち明けてもいいかなって思って」
「そっか」
「ごめんね、ずっと黙ってて」
「いや、むしろこっちの方こそ気を遣わせたみたいで、ごめんな?」
「ううん!こうして蓮くんの歌も聞けたし、私はすごく満足だよ!!」
「ならよかった」
ぎこちなく会話する俺たち。その会話が一段落ついたあたりで、ようやく涼太が帰ってきた。
「ごめんごめん!ちょっとお花摘みに言ってたわ!!」
「おぉぉい!!!涼太!!?」
「ん?蓮?どした?」
あくまでもしらばっくれる涼太に突っ込みたい気持ちを抑える。
「なんでもない!」
「で、とりあえず蓮があの有名歌い手のRainだってことがここのみんなに知られたって事でさ?ここからは蓮のワンマンライブってことでどーよ!!」
「ちょ、おい!?」
制止しようとする俺の思いと裏腹に涼太はもちろん、梨華まで期待の眼差しで俺を見てくる。多勢に無勢だ。
仕方ない、多分この後の配信でも歌は歌おうと思ってるし、声出しも兼ねてってことにしとこう。
「仕方ない、4、5曲だけな?」
「おう!」
「やった!!」
俺の喉は強い方とはいえ、あんまり激しい曲を歌い続けると少しはキツいので、バラードを織り交ぜつつ結局6曲も歌ってしまった。
「さすが蓮だな!!聞いててめっちゃ気持ちいい!!」
「ね!蓮くんの生歌をこんなに聞ける機会に巡り会えてすごく嬉しいよっ!」
「ちょっ、褒めすぎな?別に普通に歌ってるだけなんだからさ」
「いやいや、蓮の普通は普通じゃねぇのよ」
そう言って2人して笑っている。俺からしたらいつも通り歌っただけにすぎないし、なんならいつもより喉に気を遣いつつ歌ってるから70%くらいで歌ってる、まであるんだけど。
それでもそんなに褒めてくれる事は素直に嬉しい。
そんな事を考えてたらいつの間にか時間は18時をすぎていた。戻ってくるのは30分前でいいって言われてはいたけれど、個人的に早めに戻っておきたかったから、ここで解散することにする。
「急にお願いして付き合ってもらって2人とも本当ごめんな」
「いやいや、いいもん聞かせてもらったし?俺は満足してるよ、梨華もそうだろ?」
「うん!!すごく楽しかった!!こちらこそありがとうだよ、蓮くん!!」
「そう?ならいいんだけど、じゃあ俺はこの辺で!!じゃあな!!」
「おう!!」「うん!!」
2人と別れた俺は、スタジオに戻ってきた。
「あれ、早かったですね?」
「いやぁ、何が起こるかわかんないじゃないですか?だから、少しでも早めに待機しておきたくて」
「偉いですね、蓮さんは。うちのメンバーでそこまで真面目な人は少ないですよ?いや、みんな真面目ではあるんですけどね、あなたくらいやってる人が少ないって意味でですよ?」
「わかってますわかってます!それに、俺はこれが当たり前だと思ってるんで!!」
「さすがですね……天羽社長が気に入った逸材なだけのことはある」
「え?」
「いや、こっちの話です!早く帰ってきてもらったところ申し訳ないんですけど、最終確認まで完了して問題なかったんで、そのまま待機でお願いします!!」
「はい!!わかりました!!」
さぁ、いよいよ俺の……雨宮詩音としての門出が始まろうとしている。
時刻は、19時15分。配信までは後45分だ。
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