プロローグ
『こんるりー!今日も始まりました、Vtuber東堂 瑠璃のー!ミッドナイトコミュー!』
俺の部屋のパソコンから流れてくるのは、最近推し始めた個人Vtuber、東堂瑠璃さんの雑談配信。大学にバイトに忙しい俺の心の癒しになってくれている瑠璃さんの配信。
なによりも、声がいい。めっちゃいい。元気になる明るい声なのに、叫ばれても耳障りじゃない。そんな綺麗なバランスの声。
見た目?見た目ももちろん推してはいるけど、中の人がどうだとかそういうの気にするオタクとかとは違って、俺は純粋に瑠璃さんという存在を推していた。
……それはそれでキモオタになってくるか。
大学が家から近いおかげで、実家に住まわせてもらってる俺は、バイト代の一部を家に生活費として入れ、残りの額で遊びとかに使ってるわけだけど、ここ最近はもっぱら瑠璃さんへのスパチャに使ってる。
瑠璃さんは、Vtuberの中では珍しく面白ければスパチャじゃないコメントも読んでくれる人なんだけど、やっぱ楽しませてくれるお礼だったり、スパチャの方が読まれやすいっていう打算的な意味も込めてスパチャしてる。
今日も俺はスパチャを送るわけだけど……
『今日の、コミュニケーションテーマはー……ズバリっ!恋愛だよ!!』
oh
彼女いない歴=年齢の俺。好きな人ができたことはあるし、告白したことも、恥ずかしながらされたこともある。だけど、付き合うところまでいかなかった俺にとって、その話題はちょっと心にくる予感がした。
そんな中、配信は進んでいく。リスナーの恋愛相談とか、瑠璃さんのこれまでの恋愛歴?とかの話題で盛り上がる。
意外と面白い。自分が恋愛をちゃんとしてこなかったからか、逆に人の恋の話を物語として他人事として捉えられて、楽しめてる俺がいた。
『さぁ!結構話してきたけど……あっ、レンさんスパチャありがとー!なになに?「瑠璃さんの付き合う条件、みたいなものはありますか?」かぁ』
このタイミングで俺のスパチャが読まれてしまった。思いがけず、ドキドキしてしまう。
正直に言ってしまおう。俺は瑠璃さんと付き合いたいと思ってる。ガチ恋勢だ。まぁ、付き合えなかったからキレるなんてことはないラフな気持ちではあるけど、最低限好みにはなりたいと思ってる。くらいにはガチ恋してる。
そんな、瑠璃さんの回答は……
『んー、具体的に見た目がどう!とかはなくて、イケメンが好きとかじゃないんだよね。ただ、私と一緒に進んでくれる人がいいなって。同じ景色を隣で見てくれる人がいい……かな!』
なるほど、同じ景色を隣で見てくれる人か。つまり、俺もVtuberになればいいってことだな!!
なんでだろ、わからないけど俺はそう思いついた。Vtuberである瑠璃さんの隣に立つには、同じVtuberになることだって。
ここが俺の人生の分岐点だったんだろう。この決意が俺、吉良 蓮の新たな世界の幕開けになるんだ。
でも、俺の考えが実は全然違う方向だったことを今の俺は知る由もない。
「えへへ、蓮くん……蓮くん…………私の隣にいてほしいなぁ………………」
読んでいただきありがとうございます!
「面白い!」「続き読みたい!」など思った方は、ぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします!
していただいたら作者のモチベーションも上がりますので、更新が早くなるかもしれません!
ぜひよろしくお願いします!