第八話:羞恥心は心の奥底に収めておくものだと思います、先生
「う、うわあぁぁぁぁぁああああぁぁぁっぁぁぁぁあっぁぁあぁぁっぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁっぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁあああぁぁっぁぁぁっぁぁっぁぁっぁぁぁぁぁぁぁl!!!」
肺の中にあるありったけの空気を押し出しながら雄叫びをあげた。
「あらあらリュウ君ったら。そんなに気合を入れても変身はお姉さんしかできないぞ♪」
目を覚ましていきなり聞こえてきたボケは早々にスルーすることにしておいて、とりあえず大切なことを一つ終わらせることにした。
「おはよう、流華姉。」
「はい。おはよう、ネボスケ君。いい夢は見れましたか。」
流華姉の『夢』という言葉に先の記憶が蘇ってきたけどそこら辺はフィーリングとかインスピレーションとかで無理やり抑え込むことに成功した。
「それなりにいい夢を見れたよ。」
そう言うと流華姉は機嫌良さそうに頬を緩めた。
ちなみに僕の視界は流華姉の顔と胸、それと天井が大半を占めている。
そして僕の頭は良い匂いで温かくて柔らかいものを枕にしている。
「ごめん、流華姉。あとありがと。足とか痺れてない?」
「ん~~私がしたくてしてるんだからリュウ君が気にする必要はないよ~~でも長い間リュウ君をお膝に乗せてたから少ししびれちゃったかもしれないかなぁ~~。だから出来れば大人しくしてて欲しい…ひゃん!!」
流華姉の言わんとする言葉がわかった僕はそれを先行すべくして流華姉の膝に自分の頭を軽く押しつけてみると上のように可愛らしい声をあげながら僕を睨んでくる。
「……ひゃん!!…リュウ君のバカ……。」
――あぁ、癒されるなぁ。さっきあんなクソみたいな夢見せられたから落ち着くなぁ。
『コホン!』
僕と流華姉は微笑み合っていて、微笑みあいながらわざとらしい咳をするなんて芸当を少なくとも僕はできないわけで、そして流華姉もそんなことはしていないわけで…。
「まったく、普通は自分の知らない状況に狼狽を上げるものですのに、姉の膝枕を堪能するとはどのような神経をしているか疑いたくなりますわね。」
僕は(膝枕をされたまま)首を斜め四十五度傾けて声のしたほうに向けた。
そこには無駄に装飾された椅子に座って少しばかり眉間に青筋をひくつかせて、手を組み、足を組みの状態でどこの令嬢だよ、と思わせる言葉遣いで俺たち(特に俺)を嗜めた。
で、怒られている僕は小学生の入学式から数えて数多の敵(教師)と幾百(来月あたりには四ケタを突破するかも)の抗争を経て培ってきた経験から言うとこういう場合は大人しくするだけではなく適度な賛同の一句も必要なのだと理解した(当社比)。
なので僕は今までの経験の中で最も効果的であろう一言を言った。
「とりあえず脚組むのやめたらどうですか?スカートの中見えてますよ、鳳凰院さん?」
「見せているのだから大丈夫よ。もしもよければもう少し見ますか?」
なんて答えが返ってくれば良かったんだけど実際はそんなはずもなくて実に女の子らしい悲鳴と世界を狙えるであろうビンタを頂戴いたしました、はい。