第四話:『料理』と書いて『生体実験』と詠む!その心は?
「それで味覚が残念なことになってしまっているとご町内でも有名な小百合さんがこんなありふれたスーパーにどんな御用でしょうか?
また弟をモルモットにして生物実験でもなさるおつもりかな?破壊意欲が多いというのも問題ですね。」
「一体全体私はどんなマッドサイレンティストなのよ!!
それに私は別にそんなつもりはこれっぽちもないわよ。
ただ、今日はお父さんもお母さんも帰ってこないから長女としての責務を全うしようと思っただけよ、失礼ね。」
「へぇーーー。
最近の長女の責務の中には血の通った実の弟を食中毒で病院送りにするのも姉としての責務の中に入ってるんだーーー。
しらなかったなぁーー。」
僕がそう言うと小百合は罰の悪そうな顔をして、素早く顔を僕から背けた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・されはたまたま食材が腐っていただけよ。
もしくは咲哉の胃腸その他諸々の臓器が軟弱すぎたのよ。
これだから最近はゆとり教育が、なんていわれるのよ。」
「ええぇ!?まさか教育外のことまでゆとり教育のせいにするとは思わなかったよ!!」
「違うのよ。私はね、考えたの。
技術家庭だけに1時間近くも時間を費やすことは時間の浪費なんじゃないかと思ったの・・・・・・。
だからチャレンジ精神で化学との組み合わせを見出したのよ!
だから私は悪くないの!!」
「一番組み合わせたらいけない教科だよね、それ!!
それに時間よりも命を優先させようよ!!
それから自分はちゃんと正しい道を歩んでいます、見たいな風に言ってるけど、それ全然正しくないからね!?
どちらかっていうと悪だよ、ア・ク!!」
「桜井家に代々伝わる家訓には『オリジナリティーとアイデンティティーこそが最も必要』って説かれているのよ。
つまりは私はそれをただ忠実に遵守しているだけなの。だから私は悪くないの!!」
「家訓の為に一族が滅亡したら本末転倒でしょ!?
そしてそれを実行しても殉死するのは絶対にサクだよね!?」
「それが小百合クォリティー」
「はぁ・・・・・・。
・・・・・・ちなみにそんな小百合さんに聞くけど、今僕が右に持っている緑色の野菜と左に持っている紅い野菜、さてどちらがブロッコリーで、どちらがカリフラワーでしょうか?」
ちなみに僕が右手に持っているのはピーマンで、左手に持っているのがパプリカ。
少しは中学生の頃から成長してくれたのかなぁーなんて淡い希望を抱いている僕。
僕の両手にある野菜を親の敵のように凝視した後、小百合は僕を見つめながら聖母マリアのような笑みを浮かべて、慈しむような柔らかい口調ではっきりとそれを僕に告げた。
「右手にある緑色の物体がブロッコリーで、左手にある赤色の物体がブロッコリーね。」
「さて小百合、大人しく家に帰ろうか?
大丈夫、明日の放課後までには腕の立つ脳外科医を探しておくから心配しなくてもいいよ。」
僕は頬の肉がやせこけていくような錯覚にとらわれながらも、腐りきっているセリフを吐いた小百合に辛辣な言葉をプレゼントしてからピ-マンとパプリカを元の位置にも戻す。
それら二つは流華姉の買い物リストには書かれていなかったので商品棚に戻す。
そして僕がピーマンをパプリカのかごに、パプリカをピーマンのかごに戻している様子をただじぃーっと見ていた小百合は何をするわけでもなくひたすらドンドンと買い物リストにピックアップされた商品を買い物かごにいれていって着々とリストに斜線を引いていく僕の後ろに着いてくる。
「ねーーー。」
しばらくの間何事も無く買い物を続けていた僕たちだけど平穏とは長くは続かないらしく、唐突に小百合がナ行エ音便で記すことの出来る音を間延びさせながら発した。
「ん、どうかした?」
僕が聞き返すと小百合は妙にモジモジと身体をミノムシのようにくねらせていて、その姿は何かに耐え忍んでいるように見える。
まぁ僕はそこら辺のラブコメの主人公のように神がかった鈍い感性の持ち主ではない。
なので察しにくいことやいいづらいこともキチンと察して、相手を気遣うことの出来る人間なのです。
よって僕は小百合が欲しているであろう一言を口にした。
「トイレに行きたいなら言ってきてもいいよ?僕はここでまってるからね。」
「流時のばかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッぁぁぁぁぁッぁぁぁッぁぁッぁぁぁッぁ!!」
小百合は顔を真っ赤にしてそう叫ぶと自分の持っていた買い物籠を置き去りにしてあるはずも無い砂塵を巻き上げるように走り去っていった。
「サク、今日は助けてあげたんだからそのうちハンバーガーでも奢ってね。」
僕は今、居もしない、たった今自分がすくったばかりのツンデレ姫の弟に向けて一言漏らしてから何事も無かったかのように買い物を再開するのでした。
昨日は更新出来ずすみませんでした。
ネット回線が不調で書き上げたのアップ出ませんでした。