第一話:喧嘩に巻き込まれても宇宙戦争には巻き込まれるな
僕こと仲嶋 流時は今、非現実的な状況に立たされちゃっていたりする。
僕から見て右側には天然記念物に登録されていてもおかしくない昭和の産物であるリーゼント君たちが総勢五十人弱。
身長が平均よりも若干、ほんのわずかばかり足りていない僕にとってはそれは恐怖を抱く対象に値するわけで身震いしてしまいそうだったりする。
で、かたや僕から見て丁度反対側に位置する左側では白いワイシャツに黒のネクタイ、黒のスーツを身に纏い、鉄板でも仕込んでんじゃねーの?と疑問を抱かずにはいられない、それほどクソ厚い胸板にそれきちんと周りの世界見えていますかと不安を抱かせるような黒のサングラスをかけた素敵でマッチョなオジサマがたが軽く見積もっても百人以上。
そして双方を軸に見て僕と対称の位置にいらっしゃるのは腰にまで届きそうな白銀に彩り輝く銀髪を宙に靡かせながら僕に微笑みかけてくる『美』と言う文字を付け加えても語弊には該当しなさそうな少女。
僕は既に積み上げられている死屍累々という現代日本では使うことのなさそうな四文字熟語を各々の遺志は別として身体一杯に表現してくれている雑魚キャラにあたるチンピラ君たち、総勢五十人たち(タヌキ寝入りしている奴や『Sunzu River』と標識がかかげられているであろうお花の咲いていそうなとっても楽しそうな世界に旅立って逝っちゃったりする人も含めて)はこれから始まるであろうジェノサイドを前に逃げようかな、なんて逃げ腰で望んでみたり。
そんな中か弱い僕を見捨てるかのようにその美少女は銀細工のような紙を宙に靡かせながら、フリルを湯水の如くあしらったパールピンクのドレスの、これまたフリルをたくさんあしらった袖から伸びる乳白色の手首が見え隠れする左腕をたかだかとコンクリートによって雁字搦めにされた天井に向けて映画のワンシーンのようにゆっくりと人差し指を指差して、天にその手を向けた。
そして草原の爽やかな(草原の臭いって爽やかじゃないって思うのは僕だけ?)空気を吸うかのように肺いっぱいに大きく深呼吸し、ドレスの上からでも分かるほどの大きな胸を誇張するかのようにして、深紅のルージュを引いたようにも見える鮮やかな唇を開いた。
「この私に刃向かったことを後悔する時間を十分に用意してからそれらのドタマをかち割りなさってから、その割れたすき間にストローを差し込んでから中に入っているものを息の続く限りチューチューと吸い上げなさい!!」
ビュン!!
と鋭く空気を切り裂く音とともに凛と鈴の音のような澄み切った声が今現在僕たちの居るゴーストマンションに響き渡った。
そしてそれを合図にして我先にとスーツを着てサングラスをかけたマッチョなオジサマたちは地響きを連想させる雄叫びを上げながらスーツを気合いで破り散らかし、現代の生ける化石として名高いであろうリーゼントなチンピラさん達は半狂乱になりながらマンションの中を逃げ回っている。
ーーところでこれ、何監督のなんていう宇宙戦争なわけ?
僕はそんあ昭和VS平成の代理戦争をボーっと眺めながら今夜の夕飯について考えていると眼下に広がる宇宙戦争をおっ始めた張本人であらせられる銀髪碧眼美少女と目が合った。
「私の名前は鳳凰院 マリア。私の名前を忘れてはいけませんわよ、仲嶋 流時。もしも私の名前を忘れてしまったとおっしゃった暁には貴方の身体の穴という穴から穴という穴まで、その全ての穴にダイナマイトを差し込んで爆破してさしあげますからね。」
と、とても個性的で印象的な自己紹介をしてもらったり知っちゃったわけである、
ーーというか、なんで僕の名前を知っているんですか、あなた。
なんて思ってみたり、思ってみなかったり。
とまぁ、そこら辺に増えてきた死に逝く化石であらせられるリーゼント君たちは見なかったことにしておいてどうしてこんな風になってしまったのかを振り返ってみようかな。
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