決意
[第4話] 決意
衝撃の事実を知った飛鳥は、動揺を隠せないでいた。
" 現在 " では体を犠牲にしている状況にあるため多少の不安はあるが...。
その後2人は婚約し、同居を始めることになった。
夏休みのある日、ネット検索していると、宇宙旅行ツアーの募集を発見した。
それは5年前の過去と5年後の未来の2つのコースが選べる内容になっていた。
人気のため、チケットは即完売するらしい。
飛鳥は急いで申し込むと、未来コースを購入できた。
後日、チケットを受けると、旅行に参加する事を彼に伝えた。
「5年後に何か変わっていることを期待して旅行に行ってくるよ」
「元気な姿をついでに見てくるよ」
と言って飛鳥は旅行に出掛けた。
私達の関係はどうなっているか...?
彼の体調は大丈夫か...?
ついにツアーの運行が始まり、宇宙空間を飛行する。
しばらくすると、急に機内が激しく揺れ出した。
添乗員の説明だと、何かの磁場に触れた時に揺れるのは普通の出来事らしい。
それにしても、大きい揺れは今まで経験した事がない位の衝撃だったようで、機内は騒然としていた。
私は、窓越しに猛烈な勢いで閃光が走る様子を目にした...。
それは青白い光で、明後日の方向から地球に向かって放たれているように見えた...。
その光に妙な違和感を感じたが、地球に当たるなんてないよね...?
確率で言うと宝くじで1等に当たるようなもんだし...。
その後は静かに飛行は続いた。
機内では不安がる乗客もいたが、最終的に無事に未来に到着することができた。
午前中は添乗員付きツアーだったが、午後は自由行動だ。
飛鳥はその時間に彼の会社ヘ行く事にした。
無事に辿り着くと、未来でも変わらず会社が存在していて一安心。
社会に入るなり、彼と出会えた。
彼はどうやら打ち合わせに向かう途中のようで、しっかり元気に働いている姿を目の当たりにできた。
無事に生きていたんだなと一安心。
飛鳥は、サプライズのように" 現在 " からタイムスリップしてきた事を彼に告げた。
早速、あの放射線による病の影響はどうか尋ねてみた。
「心配していた病については特効薬の投与によって完治したんだよ」
「実は宇宙放射線に対する特効薬は、昨年に完成したみたいで、その投与者は僕が第一号なんだ」
「それからは、放射線を気にせず誰もが宇宙旅行できるような世の中になったらしいんだよ」
何度も宇宙旅行に行っていた彼だからこそ説得力がある話だった。
そんなことを考えていると
彼の手には指輪が無い...。
私と結婚しているはずなんだけど...。
彼に指輪について問いただそうとしたその時、タイミング悪く打ち合わせが始まるようで、飛鳥はその場から退散することにした。
しばらく、休憩フロアで待っていると、また彼と話を続けた。
すると...。
実は、まだ結婚していないことが判明したのだ。
理由は未来旅行の影響で本当の存在が過去、現在、未来、どの時系列が本当の飛鳥なのか混乱しているために結婚に踏み切れないでいたみたいなのだ。
何か" きっかけ " がないと踏み切れないのかな?
彼自身、何回も未来旅行に行って私を見ているせいで頭の中が整理出来ていないんじゃないかと思った...。
病も完治したんだし、もう腹を決めてもいいんじゃないの...?
その時、ツアーの添乗員から連絡が入った。
それは...。
「あの時、機内が揺れたのは超新星爆発によるγ線バーストが放射されたことによるものでした。
しかし、それは地球に到達したそうで、現在は壊滅状態です」
「私達はもう現在の地球に戻れなくなりました」
「今夜、ツアーの皆さんと集まった時に詳しくご説明いたします」
この事実を知った以上、もう現在には帰ることが出来ないのだ。
そこで飛鳥は、ある決意をするのだった...。