予感
[第2話] 予感
飛鳥は奇跡的に彼と出会い、運命的に結ばれた。
幼少期の約束とはいえ、思い出だけは大人になっても忘れていなかったのが嬉しかった。
一方で、いざ本当に約束通り結婚に向かうのかと考えると身構えて一歩踏み出せない自分がいた。
いい大人だし、お互い冷静にじっくり考えて付き合うのが一番だと思った。
ある日デートに誘われ、ランチを楽しんだ後、カフェに立ち寄った。食後のコーヒーは必ず専門店で飲むのがルーティンなのだ。
しばらくカフェを楽しんでいると、近くで3人組の女子達が何やら燥いでいる。
「やはり今時のアフタヌーン女子だな...」
少し騒がしいが、何だかタイムスリップの話をしているみたいだ。
「私、やっと彼氏が出来たんだよ。本当、手に入れるには苦労したんだよ」
「良かったじゃん。長年の夢が叶って。あんた、ずっと片思いだったもんね〜」
「だって未来の彼がどうなってるか心配でタイムスリップしたら、彼が知らない女と一緒にいたんだよ。だから思わず、現在に戻った時にその女を消してやったよ」
そんな話に飛鳥は思わず、
「うわ〜。それって犯罪じゃん。やばいよ。でも本当に恋人なのか確かめたのかな?」と思わず口にする。
当の本人は、「女の直感は正しいんだから!」と、自信ありげに全く悪びれた様子はない。
飛鳥はその女の言動に憤りを感じた。
そんな事を言う女はどんな顔をしているのか拝んでやった。
なんかどっかで見たような?
そうだ!私の掛かりつけの病院に勤めている看護師じゃない?
私服だから最初は気づかなかったけど...。
看護師なのにあんな事を言うなんてショックだなぁ...。
そんな様子を見ていた彼はなんだか意味深な事を口にする。
「タイムスリップは本当に流行っているみたいだね」
「俺も何度か試した事があるよ」
「でも人を消すためには利用しないかな?」
「飛鳥はどう思う?」
「私は流行に飛びつくほど暇じゃないし興味ないかな?」
とりあえず、今日のデートは終わり、家に帰ることにした。
そして、風呂上がりに何となくテレビをつける。
すると、ある病院で事件があったというニュースが流れている。
内容は、最近看護師が飛び降り自殺したというものだった...。
飛鳥はそのニュースに驚いた。
なぜなら、自分のかかりつけの病院だったからだ。と同時に、" あの女を消してやった " というフレーズが頭をよぎった。
あのカフェにいた看護師に関係ありそうな気がした。
しかも、テレビ取材によると、女の同僚は恋愛トラブルで悩んでいたという。
トラブルの原因は後に分かる事だが、ある病気が関係していたのだ。
「病を抱えていては、もし結婚しても幸せになれない。タイムスリップしても何も変わらない。もうダメだ」と嘆いていたらしい。
だから女は、悪意で消したわけではなく、彼女を楽にしてあげよう思って、悪くも手を差し伸べてしまったようだ。
でもこれは、紛れもなく自殺ではなく事件だ。
しかし、女は直接手を下してないようで、彼女が転落するよう予め柵に仕掛けを施し、あたかもアクシデントが起きたように見せかけたのだ。
だから女は疑われることはなかった。
しかし、この一連は後日、ニュースで真実が報道されることになる...。
「まさか自殺してしまった彼女もタイムスリップを経験していたとは!!」
「一体何が起きているんだ?」
この全てを彼氏に話すと、
「俺にもよく理解できるよ」と。
彼のタイムスリップの経験と一連のニュースについてなぜか理解を示している...。
彼は何か隠しているのかな?
まさか、偶然の出会いは彼自身がタイムスリップして作り出したものだったのか?
飛鳥の予感は現実へと近づいていくのであった...。