2023年5月 2日目(7)
その後も1日、文句を言われながら、楽しく過ごしたが、麻衣が洗濯以外は全く出来ない事が解った。
掃除と料理は俺の方が格段に上だった。
しかし、家の中が物音だけだったのが、賑やかな会話にあふれた。
俺が料理と片付けをして、そして夜になった。
「さてと」
「寝るの」
「その前に」
「どうしたの、こんなに暗くして」
「そう、暗くした」
「ロウソクとか」
「違うよ、そんな物無い」
「だって、暗くしたから今日から責められるのかなって」
「責めるけど、そっちじゃ無い」
「でも、暗くして」俺は麻衣を自分の前に抱きかかえて、体をひねって無理矢理キスをした。
「ちょっと待って」
「もう」
「前戯なの」
「本当の事が聞きたい」
「なによ」
「なんか、おかしいだろ」
「なにが」
「どうみても、不釣り合いな関係が突然出来上がってる感じだろ」
「あたし達のこと」
「そう、俺の気になっている事を聞きたい」
「俺はなんだか何かの助けを借りて、今の状況になった、こうして、自分に不釣り合いな女を抱いている、そんな気がする」
「違うよ、判ってないよ」
「多分、麻衣は何かから逃げてきて俺の網に落ちた」
「どうしてよ」
「おかしくないか」
「出てって欲しいの」
「そんな事言わない、絶対」
「本当に」
「後にしない」
「いや、半分でも良いから聞きたい」
「後にならないの」
「後にしたら、居なくなりそうで」
「1日でも長く居て欲しいから」
「なんでよ」
「ほら、こうして抱いていてもなんか掴み切れていない気がする」
「でも、あたしの本当の事なんて聞いたらがっかりするよ」
「そんな事無い、気にするな。怒らないから、言ってくれ」
「なんでよ」
「本気で好きになりたい」
「本気じゃ無いの」
「本気だ、でも実像が見えてない」
「もっと本気になりたい」
「順番に聞いて良いか」
「最初に会った時は俺なんかただのそこら辺のおっさんだろ」
「まあ、そうだね」
「それから、食事に行った時は」
「違う違う、その前に、海で」
「海、何か有ったっけ」
「最初は、恐い人かなって思ったけど、ちゃんと説明してくれたから」
「説明くらいするだろ」
「しない人の方が多いよ。そして、女だからとかよそ者とかで説明を嫌がったり馬鹿にしないし、全然恐くなくって、なんか良いなって、上から目線でもないし、もしかしたらタイプなのかなって、そして同じ事に反対してて共感できそうな気がしてた」
「そんな事」
「途中で、少しずつ近付いてたの知ってる」
「なんか近付いてきたのと、なんだかしきりにこっち見るけど、聞こえなかったかなって」
「作業服なんか着てきたの失敗だったかなって、もっと綺麗な服着てくれば誘われるかなとか考えてて、思ったの、早く食事くらい誘えよって」
「知らない人で、優しそうな人、良いかもって」
「何で、知らない人なんだ」
「知ってる人は嫌なの」
「それに、全然スマホ見ないから、まさか持ってないのって思った」
「だって、あそこで2時間も話ししてたけど、途中でスマホ見なかったでしょ」
「見てない、最後に店の電話番号調べただけだな」
「そんな人初めて、スマホ見なくても解るんだって」
「そんな事無いだろ」
「そんな事無いって、みんなスマホで見た事を話してるだけだから」
「なんか、もっと話しても良いかなって」
「本当の事言おうか」
「言えよ、そのためにこうしてるんだから」
「もしね、あそこで、ホテルとか誘われたら行ったかも」
「俺とか」
「そう、あたし、今までに会ったことがない人じゃないと、いやだったし。聞いてくれて、話してくれて、怒らないから信用出来るかなって」
「そうかな」
「とにかく、知ってる人は絶対駄目」
「それなのに」
「なんだよ」
「さっき、言ったでしょ、鈍感だって。あの時から思ってるんだから、誘ってくれないかなって」
「全然そんな気にならなかった、だいたい年が離れすぎだろ」
「やっぱり気がついて無かったんだ」
「ずっと横にいて、前から見てくれない」
「そうだけど、途中から気づいてたよ、なんでこっち向いてるんだって」
「パッと横に行って腕掴んじゃおうかなって思ったけど、あたし甘えるのが恐くて、却って変な女に思われるって。タイミングが悪かったな」
「俺は逆の事を考えてた、最初から俺なんか相手にしないタイプだと思った」
「だから、さっき言ったでしょ」
「こんなもんだろ」
「あそこでこんな事してたかも」
「しないだろ、あんな所で」
「気がついてないのかなって思ってたら、こんなあたしの条件にぴったりな人居ないって思い込んじゃって」
「なんだ、そのぴったりの条件って」
「安心できる知らない人、このままじゃ駄目、逃げられちゃうって、泊めてよって言ったけど。
帰れって言うし」
「でも、ご飯に無理矢理一緒に行って」
「行った」
「食事くらいなら一緒に行ってくれるかなって」
「それで」
「お店の人に聞いたら本当に覚えてたから、嘘を言う人ではないみたいだったし」
「最近行ってなかったけど、覚えてたな」
「何で、行かなくなったの」
「あの店、以前はあそこじゃなかった。その頃の常連だから。それにあそこに通うと太るし」
「増えたの」
「2年くらいで10キロ増えた」
「そんなに」
「本当に増えた」
「今はそれから5キロくらい落ちたけど」
「そうなんだ。聞いたらいつも一人か男同士で来る人って」
「そんなこといつ聞いた」
「聞いたの、そっと」
「で、車中泊なんてするなって、言われて」
「泊まるお金は有ったのか」
「あんまり無い」
「まるで、突然飛び出してきた感じだけど、そうなのか」
「ほとんどそう」
「何で、こんな所へ」
「あなたの家に行ってみたかったのと、実際に行く所が無かった」
「いつもはどうしてるんだ?」
「いつもは、会社の指示だったら次の寮に行くか、間が開いてればネットカフェか車。
荷物は全部車の中だから移動は簡単だし」
「頼れる友達はいないのか?」
「いない」
「家に帰る気は無かったのか」
「帰れなかった、帰りたくないの」
「だって、昨日言ってたのは、妹が先に幸せになってるくらいの感じだったけど」
「あれは、半分以上嘘、帰れないの」
「なんか言われてるのか」
「帰ると怒る、ていうか、嫌みだね」
「心配してるんじゃ無くて」
「そうじゃなくて、帰って来るなって」
「家に有るあたしな場所なんて、ポストのそばのあたしの郵便が入ってる箱だけ」
「だから、あたしみたいな迷惑なヤツは帰って来るなってこと」
「妹は幸せにになる人、あたしは居るだけでみんなを不幸にする人」
「なんで、そんなに違う。理由があるんだろ」
「多分、居なくなったお父さんとあたしのことが嫌いなんじゃない」
「でも、妹とはうまくいってるんだろ」
「妹とは父親が違う」
「えっ」
「てことは」
「不倫だったんじゃないの、あたしの父親とは」
「今、どこに居るかも教えてくれない」
「戸籍に書いてあるだろ」
「書いてないから、婚外子」
「婚外子」
「結婚しなかったみたい、教えてくれない」
「ひどいでしょ」
「何が」
「母親が」
「今は解らないけど、昔は事情が有ったんだろとしか言えないけど」
「だから、どうしても家を出たくて」
「それで、無理して奨学金借りて大学行ったけど。頭下げて、絶対自立するんだって、けど」
「どうした」
「退学した」
「何で」
「辞めてくれって言われた学校から」
「何で」
「聞いちゃったら、明日、出てってくれって言うよ」
「なんで」
「絶対言うって。言わなきゃ駄目」
「警察沙汰じゃ無いだろ」
「そうとも言える、近いかも」
「心の準備は出来たから聞かせてくれ」
「風俗で」
「そうか」
俺はある程度想定してたので、強く麻衣を抱きしめた。
「働いたら」
「ちょっと待て」
そう言って体をひねって麻衣にキスした。キスしているうちに
「店が摘発された」
「摘発されたって」
「在学の照会と家に連絡されて、学生だった女の子は全員あたしと同じじゃないかな」
「あたしみたいのが日本のあちこちにいるのよ、多分」
「そんな女と付き合わないでしょ」
「きれい事は言わない、俺もいろいろ風俗には行ったから」
「でも、遊びなら良いけど、付き合わないでしょ」
「そんな女は汚いとか」
「いや、思わない」
「本当に」
「ちょうどさ、震災の後で、バイトも無いし家も頼れないし、やっぱり考えるよね、風俗に行こうかなって。でも、年齢から東京は無理って他に行った」
「もしかして、20才前か」
「考えてたのは20才前だったけど、面接に行ったのは20才になってた」
「全く、誰か居なかったのか周りに」
「誰も居ないよ」
「未成年の女の子が一人で生きていける様な国じゃないぞ、日本は。全部、自分で決めたのか」
「うん」
「警察には迎えに来て貰ったのか?」ここで、本気で泣き始まって、返事が出来ない。
あまり泣くので、しばらくそのままに
「泣くなよ、酷いこと言われただろ」
「うん」
「でも、あの震災後、バイトが減ったから、あたしみたいのが結構居た」
「本当に酷かった。友達も居ないからばれないって思ったのに」
「解ったから、一つだけ聞きたい」
「なに」
「摘発の原因は麻衣か」
「違う」
「あたしだったらどうしようかと思ったけど、違ってた」
「悪かった、余計なことを聞いて」
「原因になってたらと思って不安で聞きたくなって」
「そう、違うよ、大丈夫」
「その後は、ずっと派遣か」
「そう、あたし、もう東京と地元の方に行きたくないから、アパートも引き払って、ずっと静岡とか群馬とか宮城の寮が有る所に行ってたから、いつもこんな感じ」
「本当に、自分が臆病になって、誰かがあたしの事言ってないか気になって」
「でも、今回は次が無いんだろ」
「多分、あの会社からは無いね、有っても行かない」
「それと、コロナの間はどうしてた」
「コロナの時は、かろうじて1ヶ月くらいの間で繋がってたから、車とネットカフェ」
こっち向いて。キスした。
「苦労ばっかりじゃ無いか、もう、一人で苦労するなよ、つらかったら止めるか」
「聞きたくないわけ」
「違うよ、自分で傷つくだろ」
「嫌いでしょ、あたしみたいの」
「馬鹿を言うな、離したくない、居て欲しいから言ってるんだろ」
「本当に」
「聞こえたろ、本当に離したくない、一緒に居たい、一人にしたくないんだ」
「本当なの」
「真面目にやっても客商売はきついだろ?」
「もう人間相手は嫌」
「工場で良いよ」
「家で仕事するのは?」
「あたしの家」
「ちがう、俺を手伝ってここで働けってことだよ」
「だめ、そんな話は最後まで聞いてから言って、今は、答えても無駄になるかも」
「解ったよ」
「どのくらい残っているんだ、返済は」
「奨学金の返済」
「駄目、これはあたしの事だから」
「払えるのか、派遣じゃ厳しいだろ」
「どうかな、しょっちゅう遅れたりしてるから、家にも通知が行ってるみたい」
「そしたら、保証人にも連絡が行ってるだろ」
「行ってるみたい」
「それは後で話そう」
「でも、あたしの事だから」
「まだ助けるなんて言ってない。とにかく、それは後にしよう」
「多分来月も郵便が来る。そのうち。ぱっと行って、挨拶して、郵便取って、嫌み言われて帰って来る」
「行けるか」
「多分、返済の書類が有るはずだから」
「じゃあ、もう、住所はここに移せ、そうすればもう行かなくて良いだろ。絶対ここに帰って来いよ、一緒に行くか」
「来てくれれば嬉しいけど、でも今度はきついかも」
「何で」
「滞納も最終段階に近いから、結構言われるよ」
「最終段階って、差し押さえか?」
「毎回、脅しみたいにそんなこと書いてあるけど、いつそうなるのかは、解らない」
「誰かにいろいろ言われても大丈夫」
「誰かって、家族か」
「そう、母親」
「俺は平気だ、行くよ」
「止めた方が良いよ、ひどいこと言われるよ」
「そんな事言われたら行くだろ。一人で行かせられるか」
「行くの」
「あんたは誰だって聞かれるよ」
「俺は良いよ」
「なんて答えて欲しい、合わせるから」
「なんてって」
「どうするんだ、俺をなんて、紹介するんだ」
「だって、いいの」
「離したくないから」
「幸せになって家族が欲しい、一人で居たくない、結婚したい」
「俺で良いのか」
「うん」
「じゃあ、一緒に行って、そう言ってくる」
「良いの」
「何度も聞くな」
「馬鹿じゃない」
「馬鹿で結構」
「2,3発くらいなら殴られてもいい」
「それは無いかな」
「半日くらい説教される」
「それかな」
「でも、説教じゃなくて、嫌み」
「風俗は、長いことやってたのか」
「3ヶ月くらいかな」
「じゃあ、稼ぎにもならなかったろ」
「うん、時期も悪かったし」
「お金が欲しかったのか、それとも興味本位か」
「もちろんお金」
「バイトだけじゃ全然足りなくて、家賃も厳しいし、仕送りなんて最初から無いし、もう駄目だって、面接に行っちゃった」
「金にならない、退学して、奨学金の返済が残った」
「家にも、保証人にもばれた」
「じゃあ、退学した上に奨学金の返済じゃ大変だよな」
「馬鹿でしょ、学校から家までみんなにばれて」
「一人で頑張っても駄目な時はある、誰にも助けて貰えなかったんだろ」
「つらい事言わせて悪かった、大丈夫か」
「世の中不公平だと思うか」
「思う、あたしは不幸、幸せになれるなんて思った事無い」
「風俗だって、普通の子は、学校も仕事もやって、お金を残してうまくやってるのに、なんであたしだけって思う」
「でも、あんまり恨むな、人生がくだらなくなる。周りを恨むな」
「だったら、手伝ってよ」
「そのつもりで言ってる、幸せになれ、自分の幸せを見つけろ」
「恨むなって」
「とにかく、誰かを恨んで暮らすと、自分の望むように生きられない、くだらない人生になる」
「今日はここまでにするか」
「駄目、もっと言いたい、あなたのために言うから」
「苦しかったら止めて良いよ、もし、言って楽になるんだったら聞くけど」
「言って楽になる、聞いて」
「じゃあ、言うから」
「あたしさ、あれ以来、誰ともセックス出来なくて」
「何で」
「あたしの事知ってたらどうしようとか、野蛮な人だったらどうしようとか。周りがみんな恐くて、とにかく、ばれたくないって。解ったの、あたしって、何か有っても、もう誰にも頼れないんだって。頼れる人が居なくて。家も親戚も駄目、友達も元々居ないし」
「だって、家から見放されて、親戚中に知られて、学校から追い出されて。今度トラブったら人生終わりって思ってたから。ばれたくないから、いつもびくびくしてて」
「返済が遅れると連絡が来て、ばれるの、ばれたら転職。転職しないとパワハラとかセクハラとかされて。辞めさせられる。プライベートな事は絶対に言わなかったから、誰とも付き合えない。今度も返済が遅れてばれそうだったし、責任者ともうまくいかなくてやめた」
「パワハラか」
「近いね、でも、前から合わない人だったからあたしが悪いのかな、必ず狙われるのは、年齢がいってる独身女、最初は、風俗に戻ろうかなって思ったけど、人間相手の仕事はしたくなくて、工場ばっかりで」
「解ったから取りあえず止めろ、それ以上言うなって」
「良いの、だから、ずっと」
「いつも、自分でしてたの。相手が居ないから」
「してたのって、あれのこと」
「そう、自分で」
「どのくらい」
「最近はほとんど毎日。最初はね、時々だったのに、淋しくてしないと寝れなくなって。段々、毎日。
でも、本当はしたくなかったの、惨めだから。馬鹿でしょ、抱かれてる夢を見ながら毎日して、毎日泣いて。終わっても、男なんて居ない一人なの、もう自分が一人なのがつらくて。あたしって最低って思いながら、片付けて」
「ずっと思ってた、絶対トラブルにならない男に抱かれたいって、記憶が無くなるくらいしたい。口がベトベトになるくらいキスしたい」
「絶対トラブルにならない男が出てきてって」
「でも、人間が恐いの、過去がばれるのが恐い。だから、抱かれたかった、全然知らない安心出来る人に。でも、そんな事も出来なくて」
「毎日、そう」
「だけど、突然出てきたの目の前に、全然知らない人なのに安心出来そうな人が」
「俺か」
「そう、あたしこの人って思い込んじゃって、だから誘われたらついて行くって決めてた。だから『俺の家までついてこい。車中泊なんかするな』って言われた時、キスされた時、有頂天だったの。早く脱がして、早く抱いてって」
「もうよせ」
「でも、最初あたし大丈夫かなって恐かった」
「なんで」
「ひさしぶりの男」
「俺でよかったのか」
「もちろん」
「で、痛くなかったか」
「気にするの」
「だって、途中で」
「解ったあれ、それも教える」
「なんだよ」
「ちょっと待った、これで、拭けよ」
「ありがとう」
「ひどいな顔が」
「ひどいでしょ」
「でも、いいよこんな顔も」
「駄目」
「でも、その後急に積極的になった」
「良く判るね」
「当然だろ」
「知りたいの」
「うん」
「最初が大丈夫だったから、もっとしたくなって、本当にもっとしたかった。男に抱かれたいって、男は良いなって。本当に良いなって思った。終わった後も優しくて、駄目、ちょっと待って。こうやって、目をつむってても足を閉じると解るじゃない、男がいるって。今、男に抱かれてる。もう、嬉しくて嬉しくて。自分でするんじゃなくて、男にされてる。時々、足をバタバタしてたでしょ。」
「うん、やってた。泣いてバタバタしてたから 痛いのかって聞いた時だろ」
「そう、見てるんだって、だって、本当に嬉しかったの、わあ、男だって。目を開けると、あなたがいて、あたしの上に居るの。あなたが動いてるのが嬉しくて、ずっとこのままでって。それで、涙が出てきた。ああ、一人じゃなくて、優しくしてくれて、キスしてくれて、気持ちよくて最高だった」
「泣いてる顔も良かったけど」
「だめ、もう見ないで」
「それで態度が変わるんだ」
「そう、それで、もっとしたかったけど何て言ったら良いかなって考えて。『大丈夫』そう、そう聞いたら、あなたが、『まだ大丈夫』見ろって」
「あれか」
「そう、なんて馬鹿な人なんだろうって、思ったけど嬉しかった」
「俺も馬鹿だろ」
「でも、嬉しかった。この人あたしのためにこんな事して、本当に馬鹿みたいだけど大好きになった」
「良かったよ、喜んでくれて」
「馬鹿みたいって思いながら、最高に嬉しくて、涙が出た。何て馬鹿なんだろうって。それで、抱かれてて思ったの、ずっとあなたと居たいって、泣きながら思ってた。何て言えば良いか考えてたけど、気持ちよくて」
「ねえ、こっち」
「大好き。駄目、もう1回。本当に幸せで」
「それで、目が覚めてから、あなたの寝てる姿見てて、あなたと居たいっなって」
「それで、引っ越ししてきた事に勝手にしちゃったのか」
「そう、怒ったらどうしようって思ったから、どう話ししようって考えてて、都合良く起きてこないし。でも、本当の事は言ったら、出てけって言われるかも、どうしようって。それで、若い女で甘えて見せて、あなたに迫るんだって。目一杯綺麗にして。それしか無いから。ひどいでしょ」
「でも、小さい頃お母さんに甘えるなんて出来たのか」
「全然」
「だったら、甘えるのが恐かったんじゃないのか、甘えたら怒られるとかで」
「なんで解るの」
「聞いてれば解るよ、泣くなよ」
「つらかったのか、子供の頃」
「いつも、お母さんに怒られるからビクビクして、早く家を出たいって。だめ、あんまり聞かないで」
「だから、エロくて甘える女は演技。あなたが暴走とか、事実は裏側とか言ったでしょ」
「言った」
「あの時思ったの、絶対ばれてると思った、演技は下手だったし」
「確かに違和感があって、時々やり過ぎで、やっぱり演技だなって思ってた」
「やっぱり、途中で気がついたんでしょ、うまくあたしは乗せられているような気がしたから」
「もちろん解った、最初からなんで俺なんかに夢中になるんだ、おかしいなって思ってた」
「やっぱり、なんか急に話しやすくなったから、そうだろうと思った」
「この人マゾっ気が有るのかな、変だなって」
「後で、こんな風にして聞こうと思ったから、好きなように言わせてみようと思った。ごめん、つらいこと言わせて」
「いいよ、あたしのせいだから」
「明るくなって、着替えて車で化粧して。そしたら、おばさんが畑に居たから、こっちから声を掛けたの。先に、この人に言っちゃおうかなって。怒らない、嘘が混じってて」
「いいよ」
「まだ有るの」
「何も付けてなかったじゃない」
「うん、悪かった」
「いいの、言ったら止めちゃうかもって、言えなかったし、本当は欲しかったの、夢で見てたの精子を」
「こんな事言ったらあれだけど、仕事でしてたら絶対着けるでしょ、だけど今は着けたくないって。仕事じゃ無いんだって、好きな人の精子が欲しかったの、あたしの中に」
「それで、手でこうやって」
「そう、あなたが離れたでしょ、中から出たのを指で取って、匂い嗅いだの。
『ああ、本当に男に抱かれた、精子だ、精子ってこんな匂いだった』何回も匂い嗅いで、どんな味なのか嘗めてみたくて、嘗めた、変態でしょ」
「そんなの変態じゃないだろ」
「そうよね、あなたはもっと変態」
「こっち向けよ、もう可愛すぎだろ」
「それで」
「子供が居ないと、あたしってまるっきりの一人、子供が欲しい、妊娠したいの。でも、もう30になるし」
「まだだろ」
「35過ぎたら高齢出産よ、もう時間が」
「でも、やっぱり良いね、男は」
「ね、見せて」
「えっ」
「俺のをか」
「見たい」
「ちょと、待って」立ち上がって、俺のを出した。
「ほら」
「これ」
「たいしたもんじゃないけど」
「そんな事ない」
「これ、欲しい。
ねえ、欲しい、妊娠したい。
子供が欲しいの」
「待てよ、欲しいのは子供だけか」
「なによ」
「麻衣が居て、子供が居て、何か抜けてるだろ」
「だって」
「なんだよ、俺も仲間に入れろ」
「いいの、あたしとだよ、大丈夫」
「もちろんだろ」
「今朝から、ひどい事ばかりしてたのに」
「楽しかったよ」
「本当、良いの」
「出来たら、ここに居ろよ」
「うん」
「一人になるな、失敗するぞ、解るだろ一人にはなるな、絶対に。
俺も好きなんだ、離れたくないし、3人で暮らそう、一緒に」
「有り難う、解った」
「解ったのか、本当に」
「解ったら、一人で病院とか役所に行ったりするなよ、怒るからな」
「なんでそんなところで怒るの」
「大事な3人家族になる瞬間だろ」
「えっ」
「一緒に見よう、その瞬間を」
「何言ってるのよ、馬鹿じゃない、3人になる瞬間って」
「解らないのか」
「解るけど」
「もう、もうもう、本当にバカなんだから」
「なんだよ」
「何でそんな言い方するのよ」
「だって、妊娠なんてしたら、仕事できないよ」
「しなくて良い、もう一人になるな、俺がなんとかする、つらい時は家に居ろって」
「馬鹿なの、大丈夫、あたしのためになんかしてどうするのよ」
「一人だったら、もっと大変だぞ、どうする気だ」
「そうだけど」
「もう、一人になるな、だから、ここに居ろって。
大丈夫なの」
「なんとかする、とにかく、もう一人になるな」
「ねえ」
「したいのか」
「解るでしょ」
「俺の事も解るだろ、触ってるんだから」
「うん、堅い」
「今ものすごくしたいの、したくて、ねえ、早くしよう」
「どうした、急に」
「記憶が無くなるくらいしたい」
「したいの、これからも、明日の朝も。あなたとしたい、いっぱい、したくて堪らないから、精子が欲しい、精子が欲しい、いっぱい」
「本当に、いっぱい欲しい」
「昼間言っただろ、俺の事、褒めると怒るって」
「逆に、自分の事解ってるのか」
「なによ」
「嬉しい時に怒ってる」
「今、怒ってるだろ」
「怒ってる」
「嬉しいか」
「嬉しい、目の前に大好きな人が居て、欲しいモノが有って」
「堅い。これ欲しい」
「ねえ、堅くなってるよ」
「はやく、足をバタバタしたい」
「まだ泣いてるだろ」
「誰が泣かしたの」
「嫌なこと言わせて悪かった」
「そうよ」
「ひどい人、意地悪で変態でサディストで鈍感で」
「人に言えるかよ」
「本当に意地悪で変態だけど大好き」
「もう良い、俺も確信したから」
「何を」
「気持ちを」
「どういう風に」
「少し、掴めた気がする」
「あたしを」
「そう」
「だから、愛したいんだ、これからも」
「愛せるのこんなで」
「もちろん。」
「じゃあ、こんなだけど愛して、お願い、愛されたいの、ずっと、もう一人は嫌」
「愛してる」
「あたしも愛してる、離さないで、お願い」