表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あきらめていた未来  作者: 竹野華
14/19

仲良さそうに見えるの?

何しに行ったのかは知らないが、彼なら魔物に殺られる事はないだろう。性格は曲がっているが、とても優秀な魔道士なのだから。

 何も出来ずに、待っているだけなのは辛いけれど、力が無い以上、ここで大人しくしているしかない。

着替えてお茶を飲みながら暇を持て余していると、どうしても昨夜のことを思い出す。

 ラディアンと話しをするのは楽しいが、感情の変化についていけない。結構、気分屋なんだもの。やさしいかと思うと、急に意地悪になる。

 小さな子供みたい。

 ラディアンに聞かれたら、殴られそうなことを考えていると、昨日も話をした女官が、物問いたげな瞳で私を見ている。上目使いにちらちらと様子をうかがっている。

「どうしたの?」

話しかけると、女官はあわてて目を伏せたが、やがて思い切ったように口を開いた。

「わたくしたち部屋付きの女官は、部屋の中でどんな話を聞いても口外してはいけない事になっています。ですから、昨日、アミィティス様にお二人の関係を訊かれた時も、何も聞いていないと申し上げました。でも……嘘だったんですね」

彼女は非難するように私を見る。

「嘘って? 知り合って間もないし、ラディアンから、何も聞いてないよ」

「それはそうかもしれませんが、恋に時間は要らないって言います」

 はぁ?

「どうしてそう思うの?」

私とラディアンは、はたから見ると仲がよさそうに見えるんだろうか?

 なんだか皆が誤解している。

「今朝、いくらお呼びしても返事が無く、部屋の鍵もかけられたままだったので、ラディアン様に報告に行きました。すると、テラスに通じる窓が開いてるから、と言いかけて、急に顔色を変えてこの部屋に駆け込まれました。わたくしたちは、中から鍵を開けていただいて扉から入りました」

何故、ラディアンに報告に行くのよ?

「それがどうしたの?」

遠回しな言い方をされて、声が少し尖ってしまう。

「ラディアン様は窓が開いているのを最初からご存知でした。昨夜戸締まりは確認して下がりましたから、わたくしが下がった後、お二人が部屋を行き来したと考えないと、ラディアン様が窓が開いていた事を知っていた説明がつかないと思います。それに……あのような起こし方は、よほど親しい関係でないとしないのでは?」

なるほど、理屈は通ってる。

テラスで話をしたのは事実だけど。

 でも、親しい関係って?

跡が残るほど頬をつねって起こす、そんな起こし方する人はあまりいないだろうけど、親しいのと関係ないんじゃないかな。

あっ!

扉の所にいた人には、ラディアンが何をしてたか、見えてないんだ!

寝ている私に、いかがわしいことでもしてると思ったのかな?

頬をつねってるとは、普通思わないよねぇ。

 どう言い訳すればいいのかわからずに黙っていると、彼女はテーブルに乗せてあったラディアンのローブを手に取った。

「何故、昨夜ラディアン様が着ていたローブが、この部屋にあるのですか?」

「それは……」

 ついさっき、ラディアンに魔物のことを話すなと釘を差されたばかり。状況が悪化するように思えるが、昨夜のことは話せない。だからといって、テラスで話をしただけ、と言っても信じてくれないだろうし、ローブが部屋にある言い訳も思いつかない。

あれ?

 昨日彼女はこの部屋にいて、私がローブを持って部屋に戻ってきたのを知ってるはず。……駄目だ。

 部屋に入って真っ先に、寝台にこのローブを放り出したんだっけ。それから彼女に着替えを手伝って貰ったから、彼女には、ローブだって分からなかったんだろう。

 昼間ならともかく、ランプの明かりだけでは当然かもしれない。

 冷やかすようなからかうような、彼女の視線が痛い。口許には含み笑いが浮かんでいる。

 その視線から逃れようと中庭に目をやり、訊かれていた事と違う質問をしてみた。

「この街にいた頃のラディアンを知ってるの? 親しくしてた?」

言ってから、失敗したかなと思ったけれど、この王宮に長くいるわけじゃないし、まあいいか。

「直接言葉を交わした事はありませんが、誰にでも分け隔て無くやさしい方と評判で、特に、その、女性に人気があって……」

言葉の後半など聞いていなかった。あの狷介なラディアンが、誰にでもやさしい?

「えー! う、嘘でしょう!」

大仰に驚くと、女官は不思議そうな顔をしている。

「レイジェラーン様はラディアン様をやさしいと思わないのですか?」

「いや、思わないこともないけど……」

 意地悪だと言いたいが、どこをどう廻ってラディアンの耳に入るかと思うと、うっかり口に出せない。もし彼の耳に入ったら、こっぴどく仕返しされるに決まっている。

「ははは。そ、そうよ。ラディアンはとてもやさしいわ」

 ごまかそうとして意味もなく笑っていると、不意に扉を叩く音がした。女官なら扉の外で用件を言うから、来客だろうか?

でも……誰?

ラディアンは扉を叩いたりしないから、サリデスさんかな?

 王女だったら困るなー。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ