中世の町並みはわからないです!
門をくぐった先には、石畳がひかれた大通りが広がっていた。
いや、門くぐる前から見えてたけどね?
広場の真ん中には、あからさまに噴水が堂々と構えている。
「きれいな町だねー」
「ここら一帯では首都のような町なんです。私も、来るのは初めてですけど」
結構大きいと思ってたけど、そうだったのか。
町っていうか「街」だな。いやほら、グレード上がってるっぽくない?
「おー、色んなお店がある!……こっちの世界のお店ってどんな感じかな?」
「リョウさん……お気持ちはわかりますけど、まずは宿を探しましょうよ」
「うぅ、おっしゃる通りです…………」
まさに、スーパーのお菓子売り場に行きたがる子供のようだった。僕が。
「そもそもリョウさんお金持ってないって言ってたじゃないですか」
「確かに。…………え?僕、宿に泊まれないじゃん。野宿?」
「リョウさんには返せないほどのご恩があるので、私が払います!」
彼女は意気込んで、そう言い切る。
「いやぁ……自分より小さい女の子のヒモになるのはちょっと………それに、マリーちゃんもそんなに沢山のお金持ってるわけじゃないでしょ?とりあえず、今あるお金を大切にしたほうがいいよ」
「そうですね。でも、もうすぐ日が暮れちゃいますよ?」
「えー?…………本当だ」
まだ明るいから、と気づいていなかったが、もう太陽の位置が低かった。
空がオレンジ色に染まるのも時間の問題だろう。
「んー、わかった。マリーちゃんの施しをありがたく受けることにするよ。お金は働いてちゃんと返すね。」
そもそもマリーちゃんがいなかったら、僕は野宿が確定していたわけだ。
ここはお言葉に甘えておこう。
「はい。リョウさんの助けになれて嬉しいです」
彼女は晴れやかな笑顔を浮かべ、にこにこと答える。
「じゃあ早速、宿を探そうか。……そういえば、聞きたいことがあるんだけど」
「はい?なんですか?」
きょとんとした顔もかわいいな。
マリーちゃんと出会ってからというもの、『幼女趣味の世界』に目覚めそうになる。
「別にそんな大事なことじゃないんだけどさ、こっちのお金ってどんなものなの?」
「えっと、通貨の単位は『円』というものです。今見せますね」
見る必要なくなった気がする……
いや、まだだ。まさかね、まさかそんなことあるわけないよね。
「はい、これが100円玉です」
同じだ……年号とかは書かれてないけど……
「同じだ」
「え?」
「僕の世界と同じ」
「もう私もつっこみません」
パッとしない映画のエンドロールのような夕日を背に、僕達は宿へ向かった。