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【7/29コミカライズ先行配信開始!】こじらせ中年の深夜の異世界転生飯テロ探訪記  作者: 陰陽


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第65話 サニーさんの出自

 一段落したので、俺もタコ焼きを頬張っていると、役人に告げに行ったハリーさんも、戻って来てタコパに参加していたのだが、コボルトに何やら声をかけられ、どこかに行ったかと思うと、

「ジョージさん、役人が到着したようです。盗賊を引き渡したいので、入り口までお越しいただけますでしょうか。」

 戻って来て俺にそう言った。


「分かりました。すぐに行きます。

 ──アシュリーさん、役人が到着したようですので、引き渡しに行ってきます。

 すみませんが、カイアを見ていていただけますでしょうか?」

「分かったわ。向こうで子どもたちと大人しくご飯を食べているから、別に大丈夫だと思うけど、一応見ておくわね。」


「すみません、ありがとうございます。よろしくお願いいたします。」

 お泊り以外で、俺の姿が見えないところでカイアを1人にしたことがないからな。

 お泊りの時は泣いてしまったと言うし、姿が見えないことで、カイアが不安になってしまうかも知れないので、一応アシュリーさんにお願いして、俺はハリーさんと共に、コボルトの集落の入り口へと向かった。


 入り口には、以前コボルトの集落に来た役人たちとは、明らかに違う、上等な服と装備を身に着けた男性たちが6人も立っていた。

 元王族の命を狙った盗賊を引き取りに来るとなると、地元の役人では手に負えないということなのだろうか。入り口の外にはホロのついた馬車も待ち構えていた。


「お世話様です。私がジョージです。私がマジックバッグに盗賊たちを入れております。

 この場に出してもよろしいでしょうか?

 縄で捕縛しているので、身動きは出来ない筈です。」

 俺は役人たちの中央に立っている、線の一本多い制服を身につけた男性を、彼らの上席と判断して声をかけた。


「分隊長のカーラン・グラントです。

 このたびはお手柄でしたね。あとは我々が引き受けさせていただきます。

 はい、もちろんです。この場に出していただいて問題ありません。」

 グラント分隊長さんが、そう言ってくれたので、俺はマジックバッグから次々に盗賊を出して地面に置いた。口枷までは持っていなかったので、出した途端にわめき出す。


「実は何人か逃してしまったのですが……。

 まだこのあたりにいるかも知れません。」

「そうでしたか。では地元の役人に警戒をさせましょう。怪しい人物がうろついていたら、すぐに身柄を拘束させます。

 ──おい。」

「はい。」

 そう言って返事をした、一番若い役人が、すぐに集落の外へと出て行った。


 すると、急にザワザワしだしたかと思うと、逃げるな!待て!またお前らか!という怒鳴り声とともに、ドサッと大きな音がしたかと思うと、

「またこいつらだ!俺たちが歓迎の催しで一箇所に集まっているのをいいことに、忍び込んで盗みを働こうとしやがった!」


 コボルトの男性たちが、以前集落で盗みを働き、捕まって役人に引き渡された泥棒たちを、役人の前まで引きずって来た。

「またあんたたちか……。

 本当に懲りないな。」

 俺はあきれて男たちを見下ろした。

 男たちは苦々しげに俺を睨んだ。


 すると、地面に置いた盗賊たちが、彼らの顔を見た途端、お前ら!と怒声を上げた。

「自分たちだけ逃げやがって!

 まさか俺たちがここに捕まっていたとは思わなかったようだな。

 このあたりに詳しいというから、仲間に入れてやったってのに、分け前だけ貰って逃げるたあ、いい度胸じゃねえか。」

 と言い出した。


 盗賊たちに気が付いた彼らは、

「は!?な、なんのことだ、俺たちはそんな奴ら知らねえぜ!?」

「そうだ!俺たちはコボルトの集落に盗みに入ったってだけだぜ!」

「ふざけんな!オリバー!ジェームス!

 お前らだけこのまま知らん顔して逃げようったって、そうはいかねえぞ!」

 どうやら仲間割れをしだしたらしい。


「お前たち……、俺たちの集落に定期的に盗みに入るだけじゃ飽き足らず、元王族の命まで狙うだなんて。

 もういつものようには逃げられないぞ、死刑も覚悟しておくんだな。」

 彼らを捕えて連れてきたコボルトたちも、あきれた表情で彼らを見下ろしている。


「ヒッ!?も、元王族だって!?

 し、知らねえよ!俺たちはただ、ここに向かう途中で、馬車を襲うのに最適な場所がないか、聞かれて教えただけだ!」

「そうだよ!馬車の中に誰が乗ってるかなんて、何も聞かされちゃいねえよ!」

 男たちは寝耳に水だったようで、目を白黒させながらそう叫んだ。


「──加担していたことを認めるんだな。」

 グラント分隊長さんが、鋭い眼光で泥棒の男たちを睨みつけ、彼らは震え上がった。

 ……語るに落ちたな。つまりあの時、俺に尻を撃ち抜かれた男を、置いて逃げた男たちが、彼らだったということか。


「い、嫌だ!俺たちは場所まで案内しただけだ!本当にあとは何もしちゃいねえ!」

「俺たちはケチなコソ泥なんだよ!」

 自分たちで言うか。

 涙目の彼らの訴えは、グラント分隊長さんによって退けられた。


「それを判断するのは我々の仕事ではない。

 知っていようといまいと、お前たちが罪に加担したことに違いはない。

 どうやら日頃から頻繁に罪を重ねている常習犯のようだし、今度は許されないだろう。

 最低限強制労働は覚悟しておくんだな。」

「嫌だあああ!──ウッ。」


 男たちは騒がしく喚いていたが、別の役人が手にした四角い箱を、鼻の下に持ってこられて少しすると、そのままストンと意識を手放した。

「──眠りの香だ、しばらく大人しくしていてもらおう。よし、馬車に全員つみ込め!」


 他の盗賊たちにも、次々と眠りの香を嗅がせて大人しくさせると、役人たちは手際よく盗賊たちと盗人たちを、馬車の荷台に乗せ、そのまま護衛として4人が荷台に乗った。

 グラント分隊長さんは、別の、先程の箱よりも少し大きな箱を取り出すと、

「ダニエル、残りの2人もこちらで見つけてとらえた。そのまま戻って来い。」

 と言った。どうやら通信機器のようだ。


「これでようやく、あいつらを気にせずに、安心して眠れるようになるな。」

「まったくだ。

 襲う相手も確かめずに引き受けるなんて、あいつらが馬鹿で助かったよ。」

 コボルトたちは口々にそう言って、ほっと胸をなでおろしていた。


 報告に行ったダニエルが戻るのを待って出発します、あとは大丈夫です、とグラント分隊長さんに言われたので、俺たちはみんなのところに戻り、さっきの出来事をオッジさんとオンスリーさんに伝えると、オッジさんが声を張り上げて、全員の注目を集めた。


「──みんな、聞いてくれ!

 いつも我々を苦しめてきた、例の盗人たちが、セレス様の襲撃事件に加担した罪で、ついさっき捕まって、役人に連れて行かれた!

 もう二度と我々の土地を踏むことはないだろう!俺たちは勝ったんだ!」

 と言った。


 集まったコボルトたちは、一斉にワーッと声を上げ、口々に喜んだ。

「いつもの盗人たちとは……、いったいなんの話でしょうか?」

 パーティクル公爵が俺に尋ねてくる。

「コボルトの集落に盗みに入って、そのたび役人につかまっても、大した罪にならず、すぐに出てこられるのをいいことに、定期的に忍び込んでくる泥棒がいたんです。」


「なんと……。卑怯な……。

 やはり、コボルトの名声が認知されていないことで、そのような扱いを?」

「ええ。このあたりでは特に、まだコボルトは魔物であるという認識をされているようなのです。それで役人もお咎めなしと……。」

 俺の言葉に、パーティクル公爵が眉を潜めたかと思うと、眉間にシワを寄せた。


「──必ずや、我々の力で、その認識を塗り替えてやりますよ。

 そうでなければ、第2第3の盗人が、また集落にあらわれるでしょうからね。」

 パーティクル公爵が力強く言った。

「そうですね、ぜひ、頑張りましょう。」

 俺もうなずいた。


 歓迎の催しはつつがなく終了し、その間にもサニーさんは、コボルトたちの自宅をまわり、家の作りや、独自の家具や、タペストリーなどを、見せて貰ているようだった。

 目を輝かせてコボルトの伝統に夢中になっているサニーさん。サニーさんならきっと、コボルトの魅力を伝えてくれる、素敵な内装に仕上げてくれることだろう。

 コボルトの集落の問題も1つ解決したし、店が出来るのが今から楽しみだった。


 俺たちは暗くなる前に帰ることとなり、コボルトたちが馬車に向かう俺たちを、全員で入り口まで手を振って見送ってくれた。

 パーティクル公爵は完全に涙ぐんでいて、必ず!必ずまた参ります!と言っていた。

 それを見た俺、セレス様、サニーさんは、顔を見合わせてふふふ、と笑った。


 アシュリーさんとララさんと、集落の入り口で別れ、帰りは俺とサニーさんがパーティクル公爵の馬車に。

 セレス様とパーティクル公爵が、セレス様の馬車へと分乗し、帰路へとついた。

 カイアは馬車という早い乗り物を、たいそうお気に召したようだ。行きもそうだったのだが、帰りも窓から外の景色を見たがった。


 そのままだとカイアの身長では、背伸びしても窓の外が見えないので、俺が少し抱き上げて窓に顔を寄せてやる感じだ。

 俺も小さい頃電車や車の窓から、外の景色を眺めるのが好きだったなあ。乗り物自体も大好きだったし。


 景色が変わるのも、素早く動くのも面白かったんだよな。

 普段はあんまりカイアを人に見られないようにしているから、馬車に乗ってもマジックバッグの中に入れてるからなあ。いつでも見せてやれるようになるといいんだが。

 飽きずに景色を眺めるカイアを、サニーさんが目を細めて見つめていた。


 サニーさんはルピラス商会の前でおろして貰い、俺はその後そのまま自宅まで送って貰うことになった。

 ルピラス商会の前に馬車が付き、サニーさんが馬車から降りた途端、スッと人影がサニーさんの行く手を遮った。


 それは従者を従えた、白髪まじりの老婦人だった。背筋がのびて上品で、仕立ての良い服を着ている。いいところの奥様だろうか。

 眉間にシワを寄せ、ちょっと頑固でおっかなそうな印象だ。その女性に気が付いた途端に、サニーさんがプルプルと震えだした。


「お、お母様……。」

 お母様!?サニーさんの母親か?

「──何をしていたのです。」

「し、仕事で……。」

 いつも朗らかなサニーさんが、明らかに怯えた様子で目線を下に落としている。


「あなたの不釣り合いな嫁も、行き先を知らないと言うし。ルピラス商会に尋ねても知らぬ存ぜぬ。

 連絡もなしに外泊した挙げ句、こんな時間に帰宅するとはね。

 どういうつもりなのかしら。」


「イヴリンに会ったのですか!?

 また彼女になにかふきこんだのですか?

 わたくしはもう、侯爵家を出た立場なのです、もうわたくしのことはお忘れ下さい。

 今のわたくしは、ただの街の内装業者のサニー・ブラウンです。

 ──彼女にもわたくしにも、金輪際近付かないでいただきたいのです。」


 恐れながらも、母親を睨みつけるサニーさん。サニーさんが貴族だったとは。

 どうりでパーティクル公爵の自宅でも、若いメイドさんに体を洗って貰ったり、拭いて貰うことに抵抗がなかったわけだ。

 恐らく自宅でもそうだったのだろうな。


 それにしても、この親子にはなにかあるらしい。困ったな、帰り辛いぞ……。

 俺と、パーティクル公爵の馬車の御者さんは、馬車の前でにらみ合うサニーさん親子を見ながら、声をかけるのもはばかられ、どうしたものかと困っていた。

骨折感知しておらず、様子見しながらの更新が続いております。

のんびりお待ちいただければ幸いです。

ご指摘いただきましたところの修正も、時間を見てやっていければと思います。

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