表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【7/29コミカライズ先行配信開始!】こじらせ中年の深夜の異世界転生飯テロ探訪記  作者: 陰陽


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/172

第13話 ロック鳥(鳥肉)の冷手羽とレバーペースト

 朝になり、俺は山に登ると、サーカスで置かれているような、大きな獣用の檻を出して置いた。

 もしも水色のスライムのように、オークも出せるものであるのなら、この檻の中にオークを出して、罠にハマった動物にトドメをさす時と同じやり方をする為だ。


 家のそばでやらないのは、住宅街で銃声をさせるわけにはいかないからだ。俺はライフルを用意して、檻の中をイメージし、オークを出した。──檻の中に緑色の人型の豚、オークが現れたかと思うと、ブオオオオォ!と吠えた。


 やはりこの力は魔物も出せるのだ。しかし人型の魔物とは聞いていたが、本当に手足は人間のそれだ。これを倒して解体するとなると、大分気持ちが悪いが、これも食物連鎖というものだ。俺は檻の中のオークめがけてライフル弾を発射した。


 俺は頭を狙ったのだが、ライフル弾はオークの体内の奥深くまで入らずに、少し額に傷をつけただけで弾かれて手前に落ちた。

 ──!!!!!?

 皮膚が硬いのか?

 オークは更に吠えて俺を威嚇した。


 通常のライフルで倒せないとなると、50口径の対物狙撃ライフルを出すことになるが、対人に使用すると遺体の損傷があまりに酷いので、対物狙撃ライフルと呼ばれているくらいのシロモノだ。倒せても肉が食べられないのでは意味がない。


 だが、この世界の冒険者たちが倒しているのだから、倒す方法があるわけだ。

 俺は1度オークを檻ごとアイテムボックスにしまうと、最初にオーク肉の料理をお裾分けしてくれた、ラズロさんの家を訪ねることにした。


 ラズロさんは仕事で出かけていていなかったが、ティファさんが笑顔で出迎えてくれた。

「すみません、お尋ねしたいことがあって来たのですが。」

「はい、なんでしょう?

 ──あ、昨日のお料理いただきました、とても美味しかったです、ごちそうさまでした。」


「あ、いえいえ、お口にあったのでしたら良かったです。

 以前お裾分けしていただいたオーク肉の料理なのですが、どなたかから肉を分けていただいたとおっしゃってましたよね?」

「はい、この村で冒険者をやっているアスターさんが譲って下さいました。」


「その方を紹介していただけませんか?」

「構いませんよ?

 朝にお見かけしたので、今日はクエストも受けてないと思いますから、ご自宅にいらっしゃると思います。」

 ご案内しますね、と言って先に立って歩くティファさんの後ろについていった。


 アスターさんは快く俺を出迎えてくれた。

 とても体格がよく、剣士をしているらしい。今までの料理もどれも美味かったが、豚肉の柔らかい固まりが一番美味かったよ、いつもありがとう、と言ってくれた。角煮のことか。時間はかかるが、オークが倒せたらまた作ってみるか。


「さっそくなんですが、オークを倒したとお伺いしましたが、それはどのようになさったんですか?

 俺も最近冒険者を始めたのですが、倒し方のコツをお伺いしたくて。」


 俺はアスターさんの出してくれたお茶に口をつけた。少し渋いがうまい。

〈ロザンフィ茶〉

 ロザンの新芽と若葉を乾燥させて煮詰めて薄めたもの。滋養強壮の効果がある。

 ほーお。面白いお茶があるんだな。


「オークかい?

 あれは魔法使いに皮膚を傷付けて貰うか、デバフで防御力を下げて貰わないと、普通の鉄の武器じゃ刃が通らない、皮膚が硬くて地味に手強い魔物さ。

 俺のパーティーにはデバフの使える弓使いがいてね。そいつに防御力を下げて貰ったのさ。」


 防御力を下げるなんてことは俺には出来ないし、魔法も使えない。誰かとパーティーを組まないと無理なのか。

 ──いや?

「鉄の武器じゃ刃が通らないとおっしゃいましたが、刃が通る武器もあるんですか?」


「あるぜ?

 ミスリル、アダマンタイト、オリハルコンを使った武器がな。」

 俺でも聞いたことがあるような、ないような名前だから、恐らく有名なのだろう。


「ミスリルは魔法との相性がいいから、魔法剣士や魔法使い、デバフやバフの使える弓使いが愛用してる。

 聖属性を持ってるから、アンデット討伐にはミスリルの武器じゃないとかなり効率が落ちると言われているな。」

 鉱石に属性があるのは確かに凄いな。


「アダマンタイトには特に属性はないが、とにかく硬い。磁力を帯びているから見つかりやすい鉱石でもあるな。

 大剣や両手剣や片手剣なんかの近接職武器と、弓使いの矢じりや、防具に使用されることが多いな。」

 磁石で鉱脈を見つけるということか。


「オリハルコンは一番硬いが希少でとにかく高い。だがこいつも魔法との相性がいいから、ランクの高い冒険者には垂涎の的さ。特に弓使いはこいつを持ってないとSランクと戦えんらしい。流通してるものではあるが、まあ、滅多にお目にかかれんがね。」

 ならオリハルコンで弾を作れば最強ということか。


「他にもアンオブタニウムとダマスカス鋼って鉱石があるんだが……、近年見つかったという話を聞かない。オリハルコンよりも硬いが、加工技術を持ってる人間も、今は年寄りしかいないって話だ。」


 アンオブタニウムは俺も知っている。元は工学用語で、宇宙の過酷な環境に耐える理想的な金属の意味で使われ、転じて実在しないものを表現してからかわれる時に使用されるようになった言葉だ。

 この世界には現物として存在するのか。


 ダマスカス鋼は伝説の金属などではなく、俺の元の世界にも実在していた金属だ。別名ウーツ鋼。決して錆びない凄まじい切れ味の刃物が作れるという金属だが、製造法が歴史の彼方に消えてしまったと言われている、ロマンあふれる金属だ。

 それを加工出来る人間が、この世界には今なお存在するとは!


 俺はダマスカス鋼に最も興味をひかれて、加工技術を持つ人の居場所を尋ねたが、アスターさんには分からないらしい。

 なんせ流通してないからな、冒険者ギルドでも分からないんじゃないか?と言われてしまってはお手上げだった。


 ダイヤモンドを加工するにはダイヤモンドが必要と言われているように、それを加工する技術が分からなければ、いくら能力で出せても意味がない。一番現実的なのが、オリハルコンの武器というわけだ。


 俺はオリハルコンの武器を加工しているところを見てみたいと言った。

 この村の近くにはないらしい。

 明日加工場があるところの近くまで、クエストでいくから案内しようか?と言われて、俺は一も二もなく了承した。


 俺は家に戻ったが、明日になるまではやることがない。トイレの問題は解決したし、畑は土を再び調整するにはまだ日数がかかる。とりあえず残ったロック鳥の素材を使って料理でもするか。


 俺は冷蔵庫からレバーと手羽を出した。鶏のレバーは臭み取りがいらないものだが、ロック鳥のレバーも匂いが気にならなかったので特に臭み取りはしなかったが、すじと血栓は取り除いてある。久々に常備菜にするか。


 俺は玉ねぎ、人参、セロリ、にんにく、赤ワイン、ローリエ、生クリーム、落し蓋、タッパー、フードプロセッサーを出して、オリーブオイル、塩、バター、黒胡椒、片栗粉、醤油、みりん、白胡麻、サラダ油、ジップロック、キッチンペーパー、以前ラズロさんから料理と交換に譲って貰った乾燥ハーブと、余ったクズ肉と野菜で作っておいた、煮詰めたコンソメスープを準備した。


 レバー1キロに対して、玉ねぎ1個と人参とセロリを1本、うすーく切ってやる。にんにくは2粒みじん切りにし、まとめてオリーブオイルで弱火で炒める。

 火が通ったら適当な大きさに切ったレバーを入れて更に炒める。


 全体に火が通ったら、赤ワインを400CC、煮詰めたコンソメスープを200CC、乾燥ハーブをお好みで加えて中火で煮てアルコールを飛ばす。コンソメキューブを使うなら3つ、顆粒のコンソメを使うなら大さじ2だ。


 鍋が沸騰してきたらローリエを加えて弱火に戻し、落し蓋をして汁気がなくなるまで煮詰めていく。

 煮詰まったら味を見ながら塩を加えて味を調節し、しばらくおいておいて熱を冷ます。


 冷たくならない程度、手で触れられるくらいまで熱が冷めたら、フードプロセッサーでなめらかになるまで細かく砕き、生クリームを400CC、バターを40グラム加えてさらにフードプロセッサーにかける。


 タッパーに入れて冷蔵庫でひと晩寝かせてレバーペーストの完成だ。半分以下の量なら5時間も寝かせればじゅうぶんだ。

 冷蔵庫で5日はもつ常備菜となる。


 俺はこれをツマミに酒を飲むのが好きなんである。ワインは白ワインでも構わないが、その時はコンソメのかわりに牛乳を使い、黒胡椒を加えている。


 でかすぎる手羽は冒険者ギルドで適当な大きさにぶった切って貰ってあるので、今回は手羽先も手羽中もすべて使う。

 ジップロックに、手羽100グラムに対して塩と黒胡椒をひとつまみ入れて、ジップロックの上からよく揉み込む。


 そこに片栗粉を大さじ2投入し、袋を振りながら全体にまぶしたら、フライパンにサラダ油をしき、160度で30分かけてじっくりと揚げ焼きにして、キッチンペーパーでよく油を切ってやる。


 鍋に手羽800グラムに対して水200ミリリットル、醤油大さじ8、みりん大さじ9、すりおろしにんにくと白胡麻を大さじ4入れて中火で温める。白胡麻は炒ってあるやつだ。


 手羽を入れて中火で水分が減るまで、手羽にかけて絡めながら煮ていく。

 熱を冷ましたらタッパーに入れて冷凍庫で1時間冷やして、冷手羽の出来上がりだ。

 冷蔵庫ならひと晩寝かせてやればいい。

 甘辛くてこれも酒によく合う。


 俺は今日食べる用に小分けにして冷やしておいたレバーペーストをパテに乗せて、冷手羽とともにツマミにしながらビールを飲んだ。

 手羽は冷手羽の方が絶対にうまいと俺は思う。


 ついつい食べすぎてレバーペーストを追加で冷蔵庫から出そうとして、ビールが空になっていたのでやめた。

 レバーペーストをツマミにすると、つい飲みすぎちまうんだよなあ。


 次の日、朝から冒険者ギルドの前に集合すると、アスターさんは既に準備を終えて、仲間を紹介してくれた。魔法使いが1人にデバフの使える弓使いが1人、アスターさんの他に近接職が1人と、なかなかバランスのよいパーティーだった。


 クエストに向かう前に、その町の冒険者ギルドに挨拶をする必要があるらしく、町の中に鍛冶工房があると言う。

 案内してくれるお礼に、昨日作っておいた冷手羽をアスターさんに渡した。


 この人の料理本当にうまいんだぜ、と仲間たちに自慢げに言い、楽しみに食べるよ、と言ってくれた。

 冒険者ギルドに挨拶をした後で、アスターさんが鍛冶工房に案内してくれ、そこでアスターさんたちと別れた。


 鍛冶工房は隣が武器屋になっていて、鍛冶工房で作成したものを直接おろしているらしい。

 工場を見学したいと伝えると、部外者は立ち入り禁止だと言われてしまった。


 それはそうかも知れない。鍛冶工房は危険なものだし、俺も弾を自作している最中に人に寄って来られたら困ってしまう。

 だがここで引き下がってはここまで来た意味がなくなる。


 俺はオリハルコンの武器の作成を考えているが、最高のものを作りたいので、どうしても見学させて欲しいと頼んだ。

「オリハルコンの武器だって?

 あんたなんかに買えんのか?」

 明らかに無理だろうという表情を浮かべて、若い男がそう言った。


 最も希少という鉱石だ、だいぶお高いのだろう。俺は手持ちの金を全部見せた。

「……これじゃ手付金にしかならないが、まあいいだろう、親方に聞いてやるよ。」

 若い男がそう言って奥に消えていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ