ナナの欠落した記憶とは(3)
眠れぬ夜を過ごしたナナは、聞かなかったことにしようなんてできない。いろいろと考えていた。
5000匹使って1匹ってどういうこと。まさか、私をつくりだすために5000匹が犠牲に。なんなのそれ、それこそ冗談なじゃない。これは犯罪よ、許さない。私を裏切ったこと、そんなことはどうでもいい、証拠を掴んであの人に相談しよう。あの人ならなんとかしてくれる。でも、なんでそう思うのか、女の勘かな。この間、ホームページを見ていたら、世界一の天才獣医師かもね、って自分で言う。それに、かもねって、何、なんなの。この人面白い人かも、次の日には、その部分だけが削除してたけど。
ナナは、伊藤が留守の時に、ノートパソコンを立ち上げ、パスワードは知っている。しかし、キーボードの間隔が狭いため、ちょっと苦戦していた。調べ初めて3日たち、驚くべき事実がわかった。そこには、ナナが知っている伊藤はいなかった。罪を償って欲しいと思う気持ちと悔しい気持ちが交差していた。
10年前、東京第一動物病院で働いていた原西の次男は、兄と比べられいつもバカにされていた。結論から言えば被害妄想だった。よくある話で、できのいい兄、できのわるい弟、みたいな感じ。
原西の次男は、遺伝操作に目をつけ、この手で新しい猫を作り出し、見返すことを考えた。そして、使われていない地下倉庫を研究室にして、研究を始めた。この時、原西の父親は、なんの研究をしているのかあえて聞かなかった。俺には興味がないのだろうと、本人は思ったらしい。
そこで、10年前から東京第一動物病院の事務長を仲間に入れ、横領、脱税をしながら研究資金を集めた。
伊藤は用心深い。原西の次男を信じていいのか、こいつがどんな人物なのか、こいつと手を組んでいいのか調べた。ノートパソコンにもそのデータが残されている。ペットショップの資金が欲しかった伊藤は、原西の次男と手を組み10年が経ち、あと3日で待ちに待った大金が手に入る。但し、大金が手に入る条件は、原西の次男の手により誕生した猫が1年以上生存した場合のみ。
そのために伊藤は、あの手この手で猫の里親と偽っていろんな団体を騙し、実験材料として猫たちを集め。あらゆる場所に行き野良猫たちを集め、10年で5000匹を集めていた。
脱税に関する裏帳簿のコピー、横領の証拠。原西の次男に関しては、余罪があるに違いない。このデータは伊藤が集めた保険。ナナは、全ての資料をクラウドストレージに保管した。




