ナナの欠落した記憶とは(2)
ナナは、記憶を失うきっかけになった場所がある。それは、ナナが木村動物病院の前に倒れていた7日前。ナナは、東京第一動物病院の地下研究室にいた。そこには、原西貴志の次男、原西徹がいた。そして、ナナは知りたくない現実を耳にする。
「原西先生、ついに完成しましたね、喋る猫、おめでとうございます。まるで人間ですよね、遺伝子操作でここまでできるとは、まさに天才です」
「もう10年になるか、これであいつらを見返してやる。俺をさんざんこけにしやがって、バカにした親父も兄貴も、この動物病院も用済みだ。あとはナナのような猫が欲しい、5000匹使って1匹とは、まぁいい、ナナの遺伝子さえあればなんとかなる」
この時、ナナは麻酔により診察台の上で寝ていた。しかし、予定の時間より少し早く目が覚めていた。ナナは、偶然この会話を聞いていた。麻酔のせいなのか、意味がわからず、とっさに寝た振りをした方がいいと思った。
ナナは、この地下研究室に1ヶ月に1度だけ定期健診と言われ、付添いの女性と一緒にきていた。この女性は、ナナの面倒を見ている女性で、ナナはその女性を母親のように慕っていた。
「伊藤、ナナにはくれぐれも気づかれるなよ、バレたら厄介だからな」
「またそれですか? 心配はいりません、大丈夫です。それより報酬の方はお願いしますよ」
「あぁ、わかっている。あと1週間したら例の計画を実行する。それまでの辛抱だ」
「私、報酬さえもらえればそれでいいです。10年は長かったですね」
「あぁ、そうだな、これで終わりの始まりだ」
「私は、やっと解放されるのね。約束ですよ、原西先生」
「わかっている、約束は守る」
しばらくして、ナナはキャリーバッグに入れられ。伊藤という女性とナナは一緒に車に乗り込み、1時間かけて山奥の一軒家に着いた。
外見は、ログハウス風の家で、ちょっとした別荘にも見える。2人は家の中に入り、ナナは、キャリーバッグから出ると自分の部屋に行った。
ナナは、頭の整理がつかない、移動中もいろんなことを考えていた。私に聞かれたら厄介のこと、報酬って何、10年って何、解放、約束、遺伝子操作、喋る猫。ナナは、特注のパソコンを立ち上げ、いろいろと調べた、辺りを気にしながら。
私は、聞かされていた。あなたは世界一の猫、この世に一匹だけ、人間の頭脳を持ち喋れる天才猫、突然進化した動物だと。
いろんな教育を受けた、お母さんには感謝している。しかし、私は騙されていたの、遺伝子操作って何、人間によってつくられたの、冗談じゃない、ウソだよね、お母さん。ナナは、自分に言い聞かせるように耳を塞いだ、聞かなかったことにしよう。




