表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫の動物カウンセラー  作者: K・Sメッセ
鈴とナナ、墓参りに行く
5/81

鈴とナナ、墓参りに行く(1)

 結局、いったいナナに何があったのか、鈴はナナから肝心なことを聞くことはできなかった。知りたいことが山ほどある。

 なぜ、ナナは私に会いに来たのか。ナナはいったいどこから来たのか。あの雨の中、運だけでここにたどり着いたとは思えない。それに、ナナの飼い主は誰なのか、どんな人物だったのか。その飼い主は、女性なのか、男性なのか。

 確かに、大切に育てられていたことはわかる。しかし、記憶をなくすほどいったいナナに何があったのか。

 記憶が戻らない以上はわからない、聞きようがない。辛い記憶ならこのまま思い出さない方がいいのか。ナナは、飼い主の顔を思いだせない。しかし、他のことは覚えている。

 もしかしたら、ナナは飼い主に裏切られたのか。それで、家を抜け出し、ここに来たのか。

 ナナの話を聞いていると。なぜ、飼い主はそこまで、ナナに知識を詰め込む必要があったのか。何かを教えたい気持ちはわかるけど、度がすぎると思う。

 猫の1日は、人間の3~4日といわれている。もしかしたら、頭のいいナナは、かなりのスピード成長しているように思える。

 この全てのことに結論をだすとしたら、時に委ねるしかない。もし記憶を取り戻したら、その時に対応するしかない、今はあれこれ考えても仕方ない。でも、こんな時にあの光景が浮かぶかとは、私は不謹慎のか。でも、ナナには悪いけど相談してみようかな。もし私の考えが当たっていれば、多くの動物たちを救うことができるはず。もうあんな思いはしたくない、私が悪いんだけどね。鈴は、そんなことを思っていた。


 一方、早川副院長の方はというと。ナナの声って、まるで人間の女性の声、それも可愛い声をしている。人間のよう会話もでき、頭もいいし、しつけも問題なし。それに、色までちゃんと識別できるとは。これが自然の進化ではないと言うなら、あまりにも辛く、悲しすぎる。

 これが自然の進化なら、なんの問題もない。世界一の猫だと大手を振って言える。だからといって、矛盾しているが、このことを世間に公表することはできないな。ナナは、見世物ではないから。

 しかし、まさかパソコンが使えるとは驚きね。おそらく特注のキーボードを使い、マウスはねずみに似ているから、大きなマウスパッドを使っているはず。早川副院長は、そんなことを思っていた。


 午前11時を過ぎ。いくら回復したといえ、ナナは病み上がり。鈴はナナに、体の調子を聞き、特に問題はなく、お昼は何が食べたいか聞くと、猫缶が食べたいと言う。確かに、健康を維持するためにはいい選択をしている。


 念のために、ナナはあと3時間くらいICUユニットの中に入っていることになり、鈴と早川副院長は、2階の予備入院室に動物たちの様子を見に行った。


 お昼になり、早川副院長はいつものように鈴の自宅に行き、鈴の母親が作った料理を食べる。鈴は自宅から持って来た猫缶を持ち、ナナのいる入院室に行った。

 すると、ナナは可愛い寝顔で寝ている。鈴は、しばらくナナの寝顔を見ていると、ナナは目が覚め、ゆっくりと起き。

「ナナ、体の調子はどう?」

「大丈夫。いたって健康って感じ、あっ、そうだった、肝心なことを忘れてた、お礼を言わないと。鈴さん、私を助けてくれてありがとうございました。あなたは私の命の恩人です、本当にありがとうございました」

 ナナは、深々と頭を下げた。

「ナナ、礼には及びません。私は獣医師だし、当然でしょ。それと、これからは鈴でいいから。但し、病院内では院長だからね。今日は休診だけど」

「……わかった。でも、獣医師って凄いよね。私も獣医師になれるかな?」

「えっ!? 猫が獣医師に!? 聴診器を持って診察!? 面白いかもね……」

「はぁ!? 面白いって何よ!? ただ、言ってみただけなのに、その笑みは何? バカにしてるの?」

「するわけないじゃない。ちょっとナナの白衣姿を想像してみただけ。案外似合うかもね、白衣姿、なんかいいかも」

「本当に!? そうかなー、白衣似合うかなー……」

「もしかして、獣医師になりたいの!?」

「よくわかないけど……私の周りでたくさん仲間が亡くなって……そのせいかな、そんなことを言うのは!?」

「その話、詳しく教えてくれる?」

「それが、ふと思い出しただけで、他には覚えてないなの」

「わかった。あっ、そうだ、お昼だったね。これ食べる?」

「えっ!? なんで私の好きな猫缶知ってるの?」

「えっ!? そうなの?」

「私、いろんな猫缶食べたけど、それが1番かな。他にもあるけど、限定品にも弱いかな、まぐろもいいよね。あとは……あっ、ごめんなさい。つい猫缶になると、それいただきます。お腹が減っちゃって……鈴はご飯食べたの?」

「まだだけど、ナナが食べ終わったら、私も食べようと思って」

「そうなんだ」


 鈴は、ビニール袋の中から小さな皿を取り出し、猫缶を皿に移し、ナナの目の前に皿を置くと。ナナは、人間のように「いただきます」と言い、美味しそうに食べ。鈴はその様子を見ていると、昔を思い出し、ナナにあの話をすることに決めた。


 ナナはあっという間に猫缶をたいらげ。鈴は、食事の後片付けが終わると。

「ナナ、あとで相談したいことがあるんだけど、いいかな?」

「相談!? いいけど」

「ありがとう。あっ、そうだ、それまでここで、しばらく休んでてくれる? あとで迎えに来るから」

「わかった」

 鈴は、この部屋の時計を見て入院室を出た。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ