カウンセリング開設から1ヶ月後(5)
朝一であんなことがあったが、本日のカウンセリングは普段通りに終わり。田中先生とナナはいつものように、本日のカウンセリングの報告に院長室へ行き。3人は対面したソファーに座り、鈴はナナをジッと見て。
「ナナ、今日はお泊りだって? ホームシックになって、泣かないでよ!?」
「子供じゃないんだから、泣く訳ないでしょ。お姉ちゃんこそ泣かないでよ!?」
「なんで、私が泣くのよ?」
「そうだよね、そうなるよね。だから、そういうこと」
「意味わかんない……」
田中先生は、朝一の件のあと、突然ナナにどうしても会わせたい人がいると言い出し。今日、田中先生の家に泊ることになり。失恋のことは、2人だけの秘密になった。
この時、ナナは、どうしても会わせたい人とは誰なのか、気になり、聞いてみた。しかし、会えばわかるとしか言わない。そのことを鈴にも聞いたが同じ回答に困惑していた。
ナナの存在は、これ以上の人間に知られたくないはず。なのに、いったい誰に会わせたいと言うのか。
田中先生は、キャリーバッグ中に入ったナナと一緒に駐車場に行き。白の軽自動車の後部座席に置いているドライブボックスにナナを移し。田中先生が運転する車は、自宅へと向かい。15分くらいで、田中先生の自宅に着くと。駐車場の外灯は点いているが、少しうす暗く。ナナは、またキャリーバッグに入り。2人は、10階建てのマンション、2LDKの302号室に向かった。
その移動中、ナナはキャリーバッグの小窓から、正面の景色を見ながら、いったい誰に会わせたいのか。そのことが頭から離れず、困惑したまま、302号室のドアの前に着いた。
田中先生は、玄関の鍵を開け、ドアを開けると。1匹の猫が玄関口でちょこんと座っている。足音が聞こえたのか、猫は耳がいい。
「ただいま、ミーちゃん」
この時、ナナは悟った、どうしても会わせたい人って、この女の子だと。だったら別に隠す必要はないはず、と思っていると。まだ何も話しかけていないのに、ミーの声が勝手に聞こえてきた。
「お姉ちゃん、心配したんだからね。よかった、元気になったんだ……てっ、この子の誰?」
「初めまして、ナナです。よろしくね、ミーちゃん」
「どういうこと? あなた猫だよね!? なんで人間の言葉を喋れるの? もしかして、新しい家族?」
「違うよ、あなたに会いに来たの」
「私に!?」
「田中さんは、もう大丈夫、前を向く決心をしたから」
「あの人と、さよならするの?」
「時が解決してくれると思うよ」
「そっか、私、猫だから、何もできなくって……ナナみたいに話せたらいいのにね……」
そのことに、ナナは何も言えず。確かに、ミーちゃん言う通りだと思い、この猫は、他の猫とは違うと思っていた。
このあと、ナナはホームシックにはならず。この2人は同い年。そのせいか、意気投合し、いろんな話をし。その夜、ミーちゃんの隣でナナは眠り、2人して爆睡していた。




