カウンセリング初日(5)
私と彼は、2年前に散歩中に偶然知り合い、一目惚れでした。いつしか、家族ぐるみのつき合いになり。家も近く、週3回は彼と会っていました。
私は、突然この見知らぬ土地に連れて来られ。遠い場所に来たことはわかっています。それもかなり遠い場所に。
ここで新しく暮らす。すぐにわかりました。もう彼に会えないと思うと、食欲もなく、お腹もすきません。ただ苦しいだけです。
私はラッキーのことを忘れることはできません。好きなんです彼のことが。彼も同じ気持ちです。なんで、私たちは引き放されないといけないのですか。お願いです、彼に会わせてください。このことを主人に伝えてください、お願いします。
黙って聞いていたナナは、悲痛な叫びを聞いた。
「わかった。けど、問題は2週間以上会っていないこと。向こうがどう思っているか。誤解しいなければいいだけど」
「誤解!?」
「嫌われたと、勘違い」
「そんな……」
モモは、落ち込み。その姿にナナは、モモに声をかけ。
「モモちゃん、全ては人間の都合、なんか皮肉ね。私たちは人間に生かされているところがある。でも、心配しないで、私がなんとかしてあげる。その証拠が、私は人間と会話できる」
「人間と会話できる」、モモは、その言葉に救われた想いがした。
田中先生には、ナナの声しか聞こえない。この会話を黙って聞き、なんとなくナナの会話で状況を把握し、詳しい話をナナから聞いた。ここは、ストレートに飼い主に話すべきだと判断し。ナナは、ラッキーに必ず会わせてあげると、モモに約束した。
すると、モモはこの姿をラッキーに見せられないと思い、急にお腹が減り、食欲が出てきた。
この時、田中先生はあることを思いつき。食欲不振の原因は、人間の都合による彼との別れ。ここで、一旦カウセリングは終わり。この件は、モモがラッキーに会えば、カウセリング終了となる。
田中先生とモモは一緒にカウセリング用の待合室に行き、ドアを開けると。飼い主ご夫婦は呆然としている。そこには、モモの元気な表情と立ち姿。
田中先生は、あらかじめ用意していたモモの好きなドッグフードをモモの前に出すと、美味しそうに食べている。この光景に飼い主のご夫婦は立ち尽くし、涙を流し何も言えず。
田中先生は、ダメ押しをするかのように、この光景の意味はなんなのか、診断書を発行致しますので20分ほどお待ちくださいと言い。田中先生は、待合室を出た。




