テスト
今回はテスト勉強と中間試験についての物語が掲載されています。
ゴールデンウイークも終わりテストまで2週間をきった金曜日の放課後。
薫がテストに向けて鞄に教科書を詰め込んでいると、智哉がいきなり声をかけてきた。
『みんなこの後勉強会しない?』
「いいね、さんせー。」
美桜の返事をきっかけに全員が答え、参加することになった。
その後自転車に乗り、駅前のショッピングモールにあるフードコートへ向かった。
フードコートに着き、各々軽い食事を頼み席に着く。
「今のうちに課題の進行と苦手科目と得意科目の報告をしない?」
「確かに。その方が教え合いのときにスムーズにいきそう。」
美桜の提案に椎名が賛成する。そして各自が報告し合う。
「俺は理系科目が全般的に得意で古典が苦手。あと課題はほとんど終わってる。」
「うちは化学とかの理科科目と社会科が得意、苦手なのは数学。課題はあと少しってところかな。」
『俺は英語が少しだけ出来てそれ以外の教科は苦手。課題は全然進んでない。』
「私は橘君とは逆で文系科目が得意で化学が苦手、課題は終わっているわ。」
『私は国語と英語が得意で数学が苦手です。課題は全部終わっています。』
と全員が言い終わり椎名が中心となって今回の勉強会の方針を立てていく。
途中智哉がその方針に異議を唱えたが、それを椎名が容赦なく説き伏せ勉強会の方針が決まりそれに合わせ席を変える。
席順は端に美桜で隣に篠崎、智哉の順で座り、美桜の正面に来るように椎名、薫の順で座る形になった。
方針は薫と篠崎、美桜と椎名がペアになりお互いにわからないところを教えるといった形になった。
智哉は課題がほとんど進んでいないため一人で課題をする事になった。
勉強会は静かに進んでいった。時々わからないことを質問することもあったが会話はそれだけだった。
言い方は悪いかもしれないが自分以外の誰かと一緒にすることで、互いに監視しスマホなどに心を奪われることなく集中して勉強に取り組むことができた。
そのまま時間は過ぎていき、時計の針が8時を過ぎていて店を出た。
みんなと別れる前に薫はふと疑問が浮かび聞いてみた。
「そういえばさ、何で人に教えると自分もそのことを覚えていたり解きやすくなるんだろう?」
「たしかにー、うちも謎だわ。」
「それは、物事を人に教えるにはそれを知り使えるようにし、理由や根拠を理解する必要があるからよ。」
「というと?」
「人に教える際、自分の感覚で伝えたって相手は理解できないわ。だからちゃんとした手順と理由で説明する必要があり、そのために物事をより深く理解することが大切になるからね。」
薫と美桜二人の疑問に椎名が答える。
椎名の答えに薫は「なるほど。」と思う。
「最後に知りたいことも知れたし、解散にしよっか。」
美桜の一言をきっかけに別れを言い合いそれぞれ帰路についた。
そして日は経ちテスト当日になった。
当日だということもあり薫はいつもより時間に余裕を持たせ学校に向かった。
教室に着くとすでに椎名と篠崎の二人がいた。
薫が席に行くと二人も気づき、互いに挨拶をする。
「二人ともおはよう。」
『おはようございます。』
「おはよう。橘も参加しない?」
「参加って?」
「今日のテストの一限は生物でしょ。だから篠崎と問題を出し合っていたの。」
「なるほど、俺も参加する。」
「じゃあ、私が問題を出すから二人が答えて。」
こうして篠崎たちと問題を出し合っていると美桜も来て参加し、智哉が時間ギリギリでやってきた。
朝のホームルームが終わり薫は智哉に声をかける。
「調子はどうだ?」
『やばい、徹夜で頑張ろうと思ってたら二時くらいから深夜テンションになって変な事をして勉強どころじゃなかった。』
「課題の方は?」
『今日の分は家を出る直前に何とか終わった。連日の徹夜決定してツライ。』
「ドンマイとしか言いようがない。」
そして時間になり、テストが始まった。
この京浜高校の中間テストは三日間によって行われる。
時間割は各学年の先生たちによって決められ、日によってテストの疲労が変わる。
薫たち一年生は一日目に生物、国語総合、現代英語、二日目に数学A、現代社会、文法英語、三日目に化学、数学Ⅰ、となっている。
テスト最終日。時間ギリギリに智哉が教室にやってきた。
智哉はこの三日同じように時間ギリギリに来ていて、日毎にやつれている。
よく見ると、顔色は悪く目の下にクマができていた。
「おい、智哉。お前大丈夫かよ?」
『ああ、薫か。何とかな、今日で三日連続徹夜で一睡もしてないんだ。エナジードリンクを飲んでるけどテスト中寝そうかも。』
そう智哉は冗談めかして笑って言っていたが、薫は智哉の目の奥が全く笑っていないことに気が付き上手く返事ができなかった。
「まあ、頑張れ。」
と何とか言葉をひねり出し、自分の席に戻る。
そして担当の先生が来てテストが始まった。
今回のテストは二教科で、昨日よりも早く終わった。
智哉は一言残していくと、すぐに帰宅した。別れる際にフラフラしてたからよっぽど疲れていたことがわかる。
その後、薫たちも疲れがあるため特に何かするわけでもなく帰宅した。
後日、テスト返却日。
教室内に緊張の空気が流れれている。
やはり全員初めてのテストだったということで不安があるらしい。
椎名も珍しく時間になるまでソワソワしていた。
それに対して智哉は開き直っているようで平然としていた。
そして担当の教師が来て時間になった。
その瞬間教室の空気が少し重くなり、さっきまで平然としていた智哉も顔に少し不安を覗かせている。
その空気の中で教師が点数をつけたテストを取り出し名前を呼び始める。
先に呼ばれた生徒達がが点数を見て一喜一憂している。
中には喜びの余りガッツポーズをしている人や点数が酷かったのか顔を青くしている人もいる。
そんな中、俺たちの番が来た。
篠崎は安堵の息をつき、椎名は少し悔しそうな顔をし、智哉は床に膝をつき額に手を当てながら戻ってきた。
少しして、薫は呼ばれて点数を見るとそこそこいい点数だったが凡ミスが多いことに気づき悔しそうにして、美桜は納得したような顔をして席に戻った。
授業が終わり五人で集まりテストの結果を話す。
「みんなテストどうだった?」
『それよりも、一旦そのことは置いといて今日どっか行こうぜ。』
と薫が出したテストの話題を智哉が変えようとする。
「智哉そんなにテスト悪かったの?」
『いや別に、ただせっかくテストが終わったばっかなのにまたテストの話をするのはなーって。』
「目が泳いでいるぞ。」
美桜の質問に答えた智哉の反応で全員が察した。
そのことに気づいた智哉は
『せめて最後のテストが返ってくるまで点数は言わないようにしないか。』
と懇願した。
それに他のメンバーは納得して別の話題を話す。
午後になり全部のテストが返ってきた。
「改めてみんな結果はどうだったんだ?ちなみに俺は学年平均より少し良いくらいだった。」
「うちは基本的に平均くらいかな。得意教科はそれなりにとれたけど、苦手教科が足を引っ張ったから。」
「私は平均は大体八十点後半くらいね。全体的に良かったわ。」
『私は平均は八十点くらいでした。ただ、国語総合で百点でした。』
『赤が一個。』
「うそ、赤点とったの?何の教科?」
『数Ⅰ。ていうか何で成績がいい二人の後に言わせたんだよ。』
「お前が最後まで渋ってたんじゃんか。」
とやりとりをしていると工藤先生が来てホームルームが始まった。
「えーまずは、本日テストが返ってきたはずだが、点数だけを見るんじゃなくて間違えた問題を見て次に活かして欲しいと思う。それと後から担当教科の先生から連絡が来ると思うが赤点をとった奴は補習なり課題なりがあるはずだから勉強すること。以上解散。」
ホームルームが終わり智哉を見てみると机に項垂れていた。
それに美桜が声をかける。
「なんていうか、ドンマイ。」
『俺次回からちゃんと勉強する。』
「それやらないやつのセリフじゃん。」
そう言ってみんなで智哉のための補習対策の勉強会をした。
余談だが、智哉は補習をちゃんと受けて評価を貰い、一学期末のテストは全ての教科を赤点ギリギリで回避した。
現在アルバムの写真数53枚。
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