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真相

「な、なんで親父がここに……!?」


 これまで強気だったレグナードは一転、幽霊でも見たかのような情けない顔を晒した。


 自分で監禁した相手が勝手に自由を得ていると知れば、こうもなるだろう。


 白と茶の混じる長い顎鬚を撫でながら、レグラスが呟く。


「セレネに助けられて、な……」


 一見してマフィアと分からない好々爺然とした顔は、今や渋面を作っていた。


 事前に監禁場所を割り出してあり、今の混乱に乗じて救出させる手筈だったのだ。


「わしも焼きが回ったもんだ。まさか息子に組を乗っ取られるとはの。少々見くびっておったわい」


 してやられたとばかりにレグラスが頭を振る。



 フェーレスの調べで轍組の内部分裂は把握していた。


 (ヴェリス)が動かなくなった事が影響し、元からあったレグナードの反ギルド思想に共感する若い世代が一斉蜂起したのだ。


 そのレグナード派によってレグラスは監禁され、古参幹部の多くは暗殺された。

 俺への襲撃も、その一連の流れによるものだったという訳だ。


「甘やかし過ぎたツケですね。次の後継者候補は厳しく躾をして下さい」

「ああ、肝に命じとくよ。一つ借りだ、ヴェリス」


 さらりと発したレグラスの返答に虚を突かれる。


 一瞬空いた間に、レグラスがふっと頬を緩めた。


「驚く事じゃないだろう。何年来の付き合いだと思っとる」

「ふん、流石に古狸はお見通しかよ」

「確信したのはついさっき、セレネに状況を聞かされてからだがな。他の誰が、SSの連中をこうまで使いこなせるものかい」


 地を出した俺とレグラスとのやり取りを見て、レグナードが目を丸くした。


「てめぇ……本当に中身はヴェリスだったのか!」

「だから手を出すなとあれほど言ったろうに。この馬鹿もんが」


 レグラスは片手で顔を覆い、深く息を吐いた。


「大方、東のスコピオあたりにでもそそのかされたな? 上手い事だしに使われおって、情けない」


 レグラスの指摘に、レグナードはびくりと顔を強張らせた。


「それが真であれば、大物が釣れたようですな」


 アンバーが次の得物へ捧げるように、祈りの言葉を紡ぐ。


 スコピオとは、アドベース東区を縄張りとするマフィアのボスだ。

 レグラスとは違って野心家で、隙あらばギルドの力を削ごうと狙っている。


 しかし表向きは従順であり、滅多な事では尻尾を見せる事が無い狡猾な奴なのだ。


 自らは動かず、今回のケースのようにギルドに敵対心を持つ者を煽っては手駒とするのが常套手段である。

 その為、今まで牙城を崩す事が出来なかったが、今回を契機に手を入れられそうだ。


 まずまずの収穫に気を良くした俺は、レグナードへと視線を戻す。


「さて改めて、一応の言い訳の一つも聞いておいてやる。何でこんな馬鹿げた革命ごっこをやらかした?」


 俺の問いに、レグナードは数秒の間を空けて、ふてくされたように言い捨てる。


「……てめぇらを見返すような、でかい事をしたかったからだ」


 父親を見て動揺したせいか、先刻までの強情さは鳴りを潜めていた。

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