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怖いお兄さん

『はいはい、落ち着いてー。まだ時間はありますからね。衛兵さんの指示に従って、ちゃんと並んで下さいねー』


 パニックを治めるように、俺はわざとのんびりとしたアナウンスを繰り返す。


 それが効果あってか、正門前には整然とした人の流れが出来上がっていた。


 グラサンどもは、一目散に建物の隙間へと逃げ込んで行った。事務所に戻ったのだろう。


『はい、そろそろ5分経過ですよー。逃げ遅れた人はいませんねー?』


 予め手配していた誘導により、俺が時計を確認した頃には、通りの人影はすっかり消えていた。


 あるのは、建物の窓を介してこちらをチラチラと覗う気配。

 そして、背後の正門側から集中する観衆の視線。


 想定通りの、良い舞台が整った。


 俺が時を告げるのとほぼ同じくして、路地からぞろぞろと黒服の男達が現れる。


 縄張り内の荒事を引き受ける、いわゆる「怖いお兄さん達」だ。


 先程のグラサンが援軍を呼んできたのだろう。


 轍組自慢の戦闘部隊の構成員だった。


 広い中央通りをも埋め尽くすその数は、100人は下るまい。

 路地の奥にもまだまだ潜んでいるはず。


 足音は最小限に、整然と居並ぶ姿は軍隊さながらだ。

 一斉にサングラスを光らせ、こちらを見据えている。


 纏った黒服は一見普通の布地に見えるが、上物のミスリル銀糸からなる特注品だ。

 軽い上、強度も鉄製鎧に引けを取らない。


 それら揃いの制服を着込むのは、全て薬漬けで身体強化と感情抑制がなされ、純粋な戦闘機械と化した屈強な男達である。


 Sランク冒険者にも対抗し得るこの武力が、轍組を北区随一のマフィアたらしめる要なのだ。


「……ヴァイス殿。我が未熟、よもやここまでのものとは思いませなんだ。真にもって遺憾の極みなり……」


 俺が足場としているメイスが、僅かにぶるりと震えた。


 アンバーの悔恨は良く分かる。


 目の前の光景は、この程度の連中でSSランクをどうこうできると考えている馬鹿がどれだけいるか、という確たる証なのだから。


「ま、それに気付けただけでも収穫としましょう。それに、その苛立ちはすぐに解消してくれますよ。彼女が、ね」


 言い聞かせながら、アンバーに後退の指示を出す。


『一応確認しますけど、この中にレグナードさんはいませんよね?』


 俺達が正門まで退くと、その分だけ黒服部隊が前進を始めた。


「あったりめぇだろ、このクソ坊主!! てめぇらごとき、若頭が出る幕じゃねぇ! おら、畳んじまいなぁ!!」


 後方で先程の白スーツが叫ぶと、通りに黒服達の殺気が満ちる。


『安心しました。それなら遠慮なく』


 パンパンと、俺が手を叩く音に合わせ、黒服の群れから10人程が先陣を切った。



 ──トン。



 軽い音を伴って、敵と俺との間にほっそりした人影が着地する。


『殲滅、しちゃいましょうか』


 俺が笑みを浮かべて宣告を下した時、黒服達の首は既に宙へ舞っていた。


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