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【悲報】転落しても追放されずに済んだが、パーティメンバーがヤベー奴ばかりだと気付いた件  作者: スズヤ ケイ
三章 フル装備、最強メンバーから始める冒険者再デビュー
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目覚めは爽快

 柔らかな朝の陽射しが、カーテンの隙間から洩れ出ている。


 その光の筋を勢い良く割り開き、俺は身体いっぱいに陽光を浴びると、両手を掲げて思い切りのびをした。


 久しぶりにまともな睡眠が取れた気がする。なんとも清々しい朝だ。


 思わず鼻歌を奏でながら、寝巻から着替えを済ませる。


 そして金庫から一本の小瓶を取り出すと、浮き浮きとドアへ向かった。


「──よう。気持ちの良い朝だな。お前らもそう思わねぇか?」


 ドアを開けた先にいた連中に明るく声をかける。


「……そーね。こんなぐるぐる巻きにされてなきゃ、もっと良かったんだけど」

「淑女に対してこの仕打ち、酷いと思いませんの?」


 むすっとした面で言い返してきたのは、太いロープで縛り上げられたフェーレスとセレネだった。

 向かい合わせの恰好で、無様に廊下に転がっている。


「夜這いを仕掛けるような奴らを淑女とは呼ばん」


 見下ろしながら言ってやると、二人の口がへの字に曲がる。


 絞首刑の木(ギャロットツリー)と呼ばれる植物の蔓を使った罠を、昨夜の内に作成して入口に仕掛けておいたのだ。


 柳の枝のように蔓を垂らし、触れた者へたちまちに巻き付いて捕食するこの植物は、採集してすぐに加工を施すとその特性を持続させる事ができる。

 狩人の間では定番の罠として用いられる物だ。


 それを錬金術によって、鋼の如き剛毛で知られるベヒーモスと言う魔獣の体毛をより合わせ、耐久性を強化した俺特製の罠である。


 縄抜けの達人のフェーレスも、セレネの腕力でも抜け出す事はできなかったらしい。会心の出来栄えだ。


「油断したわー……まさか家の中に罠張るなんてね」

「ふふん、雑草でもこんな罠を作れるもんなんだよ。なかなか馬鹿にできねぇだろう?」


 悔しそうに溜め息をつくフェーレスを鼻で笑う。


 片方が引っかかって脅しになれば御の字と思っていたが、両方捕らえられるとは上々の成果だ。


 同時に来たという事は、昨日冗談交じりに言っていた3Pを実行しようとしたに違いない。

 どうしようもない変態どもだ。


「はいはい、あたしが悪うございましたよ~」

「あのう……夜通し反省しましたので、どうか解いて下さいませんこと? この態勢はなかなかに辛いものがありまして……」


 ふてくされるフェーレスに続き、セレネがそう懇願してくるが、俺はぴしゃりと言い放つ。


「せっかく捕まえた獲物を逃す狩人がどこにいる」

「ですよね~……」

「ですわよね~……」

「この俺がいつまでもやられっ放しだと思うなよ。改めて上下関係ってもんを教えてやる。こいつを使ってな」


 うなだれる二人に対し、手にした小瓶を見せつける。


 細かい模様が刻まれた桃色の小瓶だ。

 それを見た二人の顔色が変わる。


「……まさか、レイしゃんの……?」


 誰にでも気安いフェーレスは、時折語呂が良いとして妙なあだ名を付ける事があり、今のはレイシャを指している。


「ご名答。あいつが一切手加減なしに作った催淫剤だ。お前が俺に使った奴の10倍は強烈だぞ」


 昨日の帰り際に、来たる逆襲の時の為に買っておいたのだ。


 俺の言葉に、二人が喉を鳴らす音が聞こえた。


「……あ~、お姉さんちょ~っと用事思い出したから解いて欲しいなーなんて」

「私も、今日は体調が優れなくて……」

「俺が病み上がりだっつってんのに、お構いなしに襲い掛かっておいて、今更それは通らねぇだろう?」


 にっこりと笑みを浮かべ、俺は二人へ向けて足を踏み出した。


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