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絶望老人が異世界転生をしたら、もう既に最強無双になっている?  作者: 賭博士郎C賢厳
B.バイオメドリグスの国編
97/122

90、苦悩と覚悟

  ●【No.090】●



 不思議な国… "バイオメドリグス" の国の "女尊男卑の町" の教会内部で、勇者ポグルスとエロ=ルーラー・レジェンドが対面・対峙する。 かつて塔・ダンジョンで一時的だが仲間になって、(ポグルス)と共闘し、ダンジョン内にいたモンスターやボスと戦ったことがある。 その後もダンジョン内のモンスターとボスを倒してきたけれど、結局は中ボスとの戦いで彼は戦死した。 彼のために集まった仲間モンスターも散り散りになった。 今でも彼のことを覚えているのか、どうかは解らないけど、世界の各地に散らばったと思われる。


 礼拝堂で勇者ポグルスとエロ=ルーラー・レジェンドが近距離で向かい合い話す。


「久しぶりだね。

 エロ=ルーラー・レジェンドよ」

「あぁ…勇者ポグルスも久しぶりですな」

「ああ、そうだね。

 まさか…こんな所で会うとは……ね?」

「あぁ…まったくですな。

 まさか…まだ生きていたとは……?」

「否、俺は既に死んでいる…」

「?」

「俺は死んで復活した…」

「えっ!?」

「俺は新たに転生したのさ…」

「転生……だと?」

「そういうお前こそ、何故ここにいる?」

「……」

「どうやって、この国に来たんだ?」

「……」

「どうした? 何故…無口になる?」

「……うっ…」


 ポグルスの質問には、一切答えないエロ=ルーラー・レジェンドだが、なんだか少し不公平すぎないか? そこからポグルスが、さらに畳み掛ける。


「お前…さっき言ってたね?」


「?」


『この教会に大量の女が迷い込んで来るとは…? しかも、今夜は満月…。 このエロ=ルーラー・レジェンド様が活発になれる時間帯…。 これほどの強力な女共を操れれば、我が大願…成就するかもな…』と―――


「!?」


「お前は…独り言を言いながら、眠ってる彼女たちの所まで歩いて近づいてたね?」


「……」


『満月の夜の教会はよく眠れる。 何故、()()()()に教会などがあると思う? それはカラスクイーンアテナ様がこのエロ=ルーラー・レジェンド様のために作って下さったからだ。 そう…女を操れ……』と―――


「……」


()()(たんま)りかい?」

「……」

「俺の耳が節穴でなければ、確かにそう聞こえたね?」

「……うっ!」

「残念ながら俺はしっかりと聞いてたよ?」

「……くっ!」

「俺は…あのカラスクイーンアテナを倒しに来たんだよ?」

「な…何ぃっ!?」

「俺には…あのカラスクイーンアテナを倒すことはできない。 けど…その勇者マイカたちなら…必ずあのカラスクイーンアテナを倒すこともできるだろ?」

「な…なんだとっ!?」

「俺は…そのために復活したんだよ」

「そ…そんなぁ……」


 前世の戦闘で、無念ながら死んだ彼。

 死後の世界で、女神ベルダルディアの依頼によりポグルスは、あのカラスクイーンアテナ打倒と引き換えに転生した。 そのため彼はマイカたちが、あのカラスクイーンアテナを倒すところを見届ける義務と責任がある。 つまり、いかに前世からの仲間モンスターであるエロ=ルーラー・レジェンドでも、()()を邪魔する奴は容赦しないのだ。 ポグルスは転生するたびに、依頼された任務を遂行してきた。 だから失敗は許されない。 自分の存在を存続させるためにも―――


 [この勇者ポグルスを存続させるために!]


「俺には失敗は許されない!

 俺には命を懸ける覚悟がある」

「もし、カラスクイーンアテナ様の打倒に失敗したら、あんたは一体どうなる?」


 [もし失敗したら…俺は消滅する?]


「へぇ~、俺の心配してくれるのか?

 意外に優しいな?

 だけど…お前も自分の目的を果たすためには、この俺や勇者マイカたちを倒すしかないよね?」

「……」

「俺は…お前の攻撃方法や弱点も知ってる。

 俺は…お前を倒すつもりでいる。 ()()()()は譲るわけにはいかないよ。」

「……」

「お前こそ、どうするつもりだ?」

「!」

「この俺と戦うつもりなのか?」

「……」


 確かに…今のままでは、あのポグルスには勝てないだろう。

 エロ=ルーラー・レジェンドの最大の持ち味は女性を操ること。

 しかも、仮に女性が熟睡しても問題なく、むしろ熟睡している状態の女性であるならば、相手の強さに関係なく、指定した女性を操作することが容易にできるはず。 だけど…相手はあの勇者ポグルス……彼には恩義があり、モンスターでありながらも、仲間として受け入れてくれた……貴重な存在。 できれば敵対したくはない。 モンスターでありながらも、自分を拾ってくれたカラスクイーンアテナへの忠誠心と、仲間として受け入れてくれたポグルスへの男気(おとこぎ)と恩義の板挟みとなったエロ=ルーラー・レジェンド。


「……」


 鬼気迫るものがある。

 まさに覚悟を決めたポグルスの気迫に圧倒されるエロ=ルーラー・レジェンド。 こういう相手は、そう簡単に倒すことはできない。 この命を懸ける覚悟をした男に、生半可な攻撃は通用しない。 苦悩するエロ=ルーラー・レジェンドが散々悩んだ末に出した結論。


 [そもそもモンスターが苦悩するのか?]


「わかった……今回だけは…このまま退()こう」

「!」

「我は…あんたと戦うつもりはない…。

 我は一度退却して、作戦を練り直してから、改めて行動に移す。」

「そうか……感謝するよ……」

「だが…次はないぞ…」

「…あぁ…」


 スゥーーーッ!


 そう言ってエロ=ルーラー・レジェンドの姿が消えた。

 やっぱり主君よりも友情を選んだ。 どんなモノでも一度受けた恩は忘れない。 あの時の行動は間違いではなかったのだ。 とりあえずは勇者ポグルスの……否、勇者マイカたちの危機は回避された。 もし、()()に彼が来なかったら―――おそらくエライことになっていたかもしれない…な。 [あの最強無双の勇者マイカがモンスターなどに操られる] その最悪の事態だけは、どうにか避けられたようだ。 熟睡しているとはいえ、知らぬ間に彼女たちの恩人となったポグルス。


「ふーーう、助かった…」


 シュッ!


 その彼も彼女たちが目覚める前に、ここから姿を()した。 相変わらずマイカたちは熟睡したままだった。


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