89、この時が来るのをずっと待っていた
●【No.089】●
ここは "バイオメドリグス" の国の "女尊男卑の町" にて。
ある日の夜のこと。 勇者マイカたち『ブラックファントム』と勇者マトオたち『セックス・ハーレム・ナイトメア』が受付の男の手引きにより、見事に "女尊男卑の町" の潜入に成功する。 今夜は満月であり、深夜でも少し明るい。 このまま例の教会へ向かう。
「お邪魔しまーす♪」
「失礼しまーす♪」
「入りまーす♪」
「……」
教会は普通に入れた。
そもそも教会の扉にカギなどかかっておらず、昼夜問わず、誰でも普通に入れる。 某RPGゲームと同じね。 ただし、教会の中は薄暗く誰もいない。 今は礼拝堂にいるけど見渡す限り、神父もシスターも誰もいない。 カギもかけずに、誰もいないとは、随分と無用心ね。 でも…なんで誰もいないのかしら…?
まぁ…それでも入るけどね…。
「あら、誰もいないわね?」
「あら、ホント?」
「…何ででしょうか?」
「…?」
「別にいいわ」
「それよりも明日のことについて話し合いましょう。」
「はい、そうですね。」
「はい、判りました。」
「……」
「ええ、わかったわ」
私たちは礼拝堂の椅子に座り、今後の事について話し合う。 ここですることは、あくまで情報収集のみよ。 決して、誰かと戦うためではないわ。 まぁ…もっとも敵対するなら応戦するけどね。
さて、話を戻すわね。
「とりあえず街の中に入れたけど、表立って目立つ行動はできないわね。」
「確かに、その通りです。」
「はい、そうですね」
「とりあえずマトオは、この教会に隠れてやり過ごし、私たちだけで情報収集した方がいいわね。」
「はい、そうですね」
「はい、判りました。」
「俺もその方がいいと思います。」
「残念だけど仕方ないわね」
「まぁ…マトオがいると、かえって話が聞けないかもしれないし、門番とかに気づかれると厄介だからね。」
「それにしても本当に厄介な街よね?」
「はい、そうですね」
「ええ、ホントに」
「私もそう思います。 厄介すぎます」
「とりあえず明日一日で、ある程度の情報収集ができたら、すぐこの街を出て、さっきの "森の宿屋" まで戻った方がいいわね。」
「「「はい、判りました。」」」
「「はい、そうですね」」
「ええ、わかったわ」
「……」
「それでは今夜はもう休みましょう。」
「「「はい、判りました。」」」
「はい、判りました。 マイカさん」
「ええ、わかったわ」
今夜は教会の礼拝堂にでも泊まって、明日一日である程度の情報収集を行う。 さすがに深夜に人に聞いて回る訳にもいかないからね。 それはさすがに不謹慎でしょうし、おそらくこの街のみんなも、もう眠っているでしょうから、私たちももう寝るわね。
「「「「おやすみなさい」」」」
このまま私たち八人は、この礼拝堂で宿泊して眠ることにした。
満月の深夜、マイカやマトオたち八人が眠る教会の礼拝堂の祭壇にて。
その祭壇の所に誰か立っている?
明らかに人間の人影ではない?
それなら一本いつから?
少なくともマイカやマトオたちが起きてる間は誰もいなかったはず?
もともと薄暗い教会の中で、ほとんどの者は祭壇の方は見ていなかった。 また全員が眠ったため、その祭壇の所に突如として、何者かが出現したと思われる。
満月の光が教会→礼拝堂→祭壇に僅かに射し込んだ時、その正体が遂にわかった。 なんとモンスターのエロ=ルーラー・レジェンドだった。 なんと…この "バイオメドリグス" の国の "女尊男卑の町" の教会→礼拝堂→祭壇の所に、モンスターのエロ=ルーラー・レジェンドが立っていた。 何故、こんな所にエロ=ルーラー・レジェンドが…? しかも、よほど熟睡しているのか、マイカやマトオたちは全く気づいていない? これはもしかして…ピンチなのでは…?
いかに最強の勇者マイカといえど、相手があのエロ=ルーラー・レジェンドで、しかも、今は熟睡してる状態のマイカたちでは、さすがにヤバイだろう? この "女尊男卑の町" で女性を操れるモンスターが教会内部にいる皮肉さ。 これは偶然か、それとも必然か?
「クックックッ、この教会に大量の女が迷い込んで来るとは…? しかも、今夜は満月…。 このエロ=ルーラー・レジェンド様が活発になれる時間帯…。 これほどの強力な女共を操れれば、我が大願…成就するかもな…。 クックックッ」
なんとモンスターのエロ=ルーラー・レジェンドが独り言を言い始めながら、眠っているマイカたちの所まで歩いて近づく。 ここでもまだマイカたちが起きないで熟睡しているのか?
「満月の夜の教会はよく眠れる。 何故、こんな所に教会などがあると思う? それはカラスクイーンアテナ様がこのエロ=ルーラー・レジェンド様のために作って下さったからだ。 そう…女を操れ……とな」
何ッ、この教会って―――
「なるほど、そういうことか…」
「!!?」
「久しぶりだな……エロ=ルーラー・レジェンドよ…」
「だ…誰だ…っ!?」
謎の声がした方向―――咄嗟にエロ=ルーラー・レジェンドが教会の礼拝堂の入口の扉の方を見る。 そこには明らかに誰か…人間の男の姿をした人影が立っていた。 そう…彼である。
「!!?」
「そうか……もう俺のことも忘れたか……」
「き…貴様は……まさか……そんなバカなぁ……」
「……ふっ……」
満月の光が教会→礼拝堂→入口の扉に僅かに射し込んだ時、その正体が遂にわかった。 そう…彼は勇者ポグルスだった。 彼もまた、この "バイオメドリグス" の国の "女尊男卑の町" の教会→礼拝堂→入口の扉の所に立っていて、この時が来るのをずっと待っていた。
「ゆ…勇者ポグルス……ッ!!?」
「…そうだ…」
さっき別れたはずの勇者ポグルスが、いつの間にか既に教会内部に入っていた。




