88、深夜の "女尊男卑の町" に潜入
●【No.088】●
ここは "バイオメドリグス" の国の "森の宿屋" にて。
深夜。 月が真ん中に来た時。
勇者マイカたち『ブラックファントム』と勇者マトオたち『セックス・ハーレム・ナイトメア』が受付の男の指示通りに、宿屋の裏側・森の手前の所で待機する。 そこに受付の男もやって来た。 今夜は満月であり、深夜でも少し明るい。
受付の男がマイカたち全員が来てることを確認して話しかける。
「全員揃ってるようだな。
それでは行くぞ!」
「ちょっと待て。
これから一体どうするつもりだ?」
「あっ、深夜で街に侵入するのね?」
「おそらく深夜だから門番も眠っていて、今がチャンスじゃないかしら?」
「おお、なるほど!」
「頭いい!」
「いや、残念ながらあそこの門番は交代制で仮眠をとりつつ見張りをしている。 だから夜、行ったところで起きていて呼び止められる。 深夜の街もきっと入れない。」
「えぇっ!?」
「あら、そうなの?」
「あら、残念…」
「それなら、どうするつもりだ?」
「この森の中を通って、向こう側の出口まで行く。 出口なので門番はいない。 それに深夜なので誰もいない。 しかも、入口同様に門や扉なども一切ない。」
「なるほど、そういうことね。」
「あぁ、そーなのねぇ~」
「何故、出口に門番がいない?」
「あの入口に門番を置いておけば、出口にもわざわざ門番を置く必要がない。 また "クイーン・マン・デス" の町から怪しい者など来ないはずだと性善説に則ってる。 それに入口に入らず出口から入るには、この森を通過しないといけない。 勿論、森の中にもモンスターがいるので、誰も通りたがらない。 だから、この森の中から出口まで行き、出口から街に入れば、中に入れるはずだ。 しかも、深夜に森の中に入る者もいない。」
「へぇ~、なるほどぉ~」
「確かに、その通りだ…」
「ちなみに森のモンスターって、どのぐらいの強さなの?」
「君たちほどの実力者なら、さほど問題ないだろう。 貴族や一般人のような戦えない者が通れない程度の強さのモンスターしか出ないはずだ。 貴族や一般人はモンスターを見ただけで逃げ出すからな。」
「それなら大丈夫ね」
「はい、そうですね」
「歩いていくの?」
「ああ、そうだ。
ザコモンスターを倒しながら早足で進んでいけば、早く着くはず。 走る必要はない。」
「そうね。 それなら問題ないわね。」
「ああ、大丈夫だと思う。」
「ええ、良かったわ」
「それでは行くぞ!」
「ちょっと待って!」
「まだ何か……?」
「あなたの名前をまだ聞いていないわ?」
「俺か? 俺の名前は "ポグルス" だ」
「へぇ~、あなた… "ポグルス" って言うの?」
「… "ポグルス" …」
「……」
勇者ポグルスを先頭に全員が森の中に入り、勇者マイカたち『ブラックファントム』と勇者マトオたち『セックス・ハーレム・ナイトメア』がポグルスの後をついていく。 早足で歩いていき、森の中のザコモンスターを倒しながら、街の横を通り過ぎるように進んでいき、この街の出口へ向かっていく。 先頭を行くポグルスがほとんどのザコモンスターを倒すので、その後を行くマイカやマトオたちは、ほとんどモンスターの脅威に晒されない。 その事にマイカが気になり始めた。 あのポグルス……タダ者ではない…と。
あの男…強いわね―――おそらく勇者……ね。
彼の目的は、一体何なのかしらね?
でも、なんだか邪悪な気配が少しするわね?
実力的には、私の方がまだ上だけど、彼の特殊能力が一体何なのか、ハッキリしないで下手すると少しヤバイかもね。 ここは気をつけてないとね。 それに私たちのことを少しだけ見てから、また視線を逸らす謎もまだ解明してないから、そこも気をつけてないとね。 いずれにしても謎の多い男ね。 これは用心しないとね。
私は勇者ポグルスを警戒する。
一方のポグルスはある事を考えてた。
ハーリルは青いノーマルな下着。
エミリアスは赤いノーマルな下着。
ルシティークは純白のノーマルな下着。
ラグレテスは漆黒のノーマルな下着。
アロトリスはピンク色のフリルな下着。
シャニルは純白のレースな下着。
マイカは漆黒のセクシーな下着。
全員ブラジャーとパンティーがセットになってて、上下共にリボンがついてるヤツ。
ポグルスは【エロ・アース】の能力で、人間の女性の衣服や下着を透視できるため、よく下着や全裸を見ることができる。 ただ長時間衣服や下着を睨み付けると、思わず破壊してしまうため、すぐに眼を逸らしてしまう。
そういうことをポグルスは決して言わないのだ。
心の中で思っているだけ。
やがて、この "女尊男卑の町" の出口が右側から見える所まで来た。 その出口付近にも、たくさんの建物が建ってる。 ただ今は深夜なので、人はほとんどいない。
「見えてきたな」
「あっ、誰もいない?」
「ホントだ」
「出口がポッカリ開いてるわね」
「ええ、ポグルスの言う通ね」
「それじゃあ、このまま中に入れるのね?」
「ああ、そうだ。 狙い通りだ」
「……」
「この街には、"ギルド冒険商" はない。
その代わりに教会がある。 出口のすぐ右側に教会の建物があるから、今夜は教会に逃げ込め。 その後はあんたたちの好きに動けばいいさ。」
「ええ、わかったわ」
「はい、判りました。」
「「「うん、わかった!」」」
勇者ポグルスを先頭に私たち八人が "女尊男卑の町" の出口に到着。 この出口も入口同様に門も扉もなく、またここには門番もいない。 深夜なので、人通りもほとんどない。 誰もいない中で、私たち八人が悠々と出口から街の中に入れる。 私たちはポグルスの言う通り、この街に "ギルド冒険商" がないそうなので、出口付近から右側にある教会へ駆け込むことにした。
ただポグルスだけは、この街の中に入らないみたいね。
その事を私が聞いてみる。
「さて、行くか…?」
「あなたは街の中に入らないの?」
「俺は案内をしただけだ。
また宿屋に戻って、受付業務に戻らないといけないし、特にこの街に用もない。 帰らせてもらうよ。」
「……」
「あら、そうなの?」
「ありがとうございます。」
「どうもありがとうございました。」
「何かお礼とか必要かしら?」
「そんな必要はない。
あとは無事を祈るのみ」
「……」
「ありがとね。 さようなら」
「ありがとう。 さよなら」
「では、さらばだ」
勇者ポグルスが、そのまま深夜の森の中へ姿を消すと、私たち八人は、そのまま教会の方へ向かって行った。




