86、《金秋大作戦》
●【No.086】●
ここは "バイオメドリグス" の国の "SMエロスの町" にて。
その街中に勇者マイカたち『ブラックファントム』がいて、勇者マトオたち『セックス・ハーレム・ナイトメア』がいて、巨大昆虫カマキリモンスター【デスキラー・シャ】がいて、上位魔族トウがいる状態。
それと『聖女』カロテラは、既にカラスクイーンアテナによって連れ戻され、もうここにはいない。 散々、私にやられて屈辱的な敗北を喫しながらカラスクイーンアテナに強制的に連れていかれて消え去った。
私はわざと『聖女』カロテラとカラスクイーンアテナを見逃している。 その事に【デスキラー・シャ】が質問する。
『ええんか? 逃がして……』
「ええ、当初の目的は果たせたわ」
『………』
「「「「………」」」」
「カロテラの顔と実力は知ったし、カラスクイーンアテナの顔と真意もわかったし、二人の関係もよく理解できたわ。 これだけの情報を入手できれば十分な成果だわ。」
『そうかい……』
そう、ここでは『聖女』の顔や正体や実力などがわかったし、カラスクイーンアテナの顔や真意や能力の一端を見ることができたわ。 当初の目的でもある情報収集は成功してるわ。 だから逃げたというなら、これ以上の深追いは不要ね。
ここはカラスクイーンアテナと『聖女』カロテラの追跡はなしね。
「それにこの国で、まだやらなければならないこともあるのよ。」
『そうなん?』
「「「「……?」」」」
「ええ、そうね。 でも、その前に―――」
私は上位魔族トウの方を見た。
「あなたは、どうするの?」
「………」
そう、上位魔族トウだけは私たちの仲間ではない。 別に敵対する意思はなさそうだけど…。 一応は彼女がこれからどうするのか、念のために聞いておく必要がある。
「あた……私はまだ…この街にいるつもりだよ。」
「あら、そうなの?」
「またアイツが現れるかもしれないからね。」
「あら、そうかしらね?
でももし、現れたら…また教えてくれるかしら?」
「ああ、わかった」
「ありがとね」
『なんや、また会うんかい?」
「ええ、なんだか彼女……まだ使えそうだからね…」
『………』
「それにしてもあんた……本当に強いね?
あた……私やアイツをまるで子供を相手にするように、いとも容易くあしらうとは……ね?」
「あら、そーかしら…?
アレでも…まだ手加減してるつもりだけど?」
『………』
「あんた……自分が強い自覚がないのか?
……ヤバイな……」
「ん~~、どーかしらねぇ~」
「まあまあ、いいんじゃない?
そんな事…」
『お前こそ、結構うるさい……』
「あんたこそ、うるさいわね!
あんたはマイカについていくつもりなの?」
『当然や! オレは強い奴の味方や!』
「相変わらず現金な奴!」
『フン!』
「あなたに聞きたいことがあるのよ?」
「なんだい?」
「この国で偉そうな人が居る所とかあるかしら?」
「偉そうな人? そうだねぇ…。
この街より北側にある街が偉そうな人が住んでる所かね? まぁ…実際に行ってみればわかるんじゃない?」
「あら、そうなのね。
一応…行ってみましょうか。」
「はい、判りました。」
「了解ですマイカさん」
「いってらっしゃい」
『………』
そこで私たちは上位魔族トウの言われた通り、この街よりもさらに北側にあるという街へ向かっていった。 ちなみにトウだけは、この街に残る。
《金秋大作戦》
当初の目的である情報収集をするために、まず上位魔族トウ→『聖女』カロテラ→カラスクイーンアテナの順番で、彼女たちと出会っていき、それぞれ揺さぶりをかけながら顔や実力や目的や真意などを引き出すマイカの作戦。 またカラスクイーンアテナもマイカの顔や実力や目的などを聞きながらカロテラを連れ戻すことに成功する。 マイカたちが追跡しないことを確認すると、また拠点を移動して行方をくらまし、女神の追跡をかわす作戦。 この勇者マイカとカラスクイーンアテナの二人の作戦・情報戦が、それぞれ交差・交錯することを《金秋大作戦》と言う。
ここで入手した情報を整理する。
まず『聖女』カロテラの正体は人間の女性ではなく、上位魔族カイだった。 彼女もまた悪魔神ヴォグゲロルス復活に加担している厄介な奴。 彼女の実力はほぼ上位魔族トウと同じくらい。 正直いって、この私にはまだまだ敵わないわね。 それに上位魔族のクセにカラスクイーンアテナによって洗脳されていた。 だけど、さすがは上位魔族というべきか。 まだ完全に洗脳されてる訳ではなさそうね。 これはやり方次第では上位魔族カイと上位魔族トウが協力して、カラスクイーンアテナを追い詰めることも可能かしら?
次にカラスクイーンアテナも顔が拝めて、なかなかの収穫よ。 彼女の目的はあくまで悪魔神ヴォグゲロルスの復活。 また彼女自身は悪魔神ヴォグゲロルスの命と力の一部から生まれた存在だと言っていた。 だから悪魔神ヴォグゲロルスの意識・思考を共有している。 真意としては世界も生命体もこの世もあの世も全宇宙も消滅させることに、何の感情も躊躇いも持たない非常に厄介な奴。 彼女の特殊能力の一端も見ることができたけど、実際に戦っていないので実力は未知数。 少しは戦っておきたかったけど、これだけたくさんの情報が手に入れば、もう十分よね。
彼女は私たちに向かって、"もう会うこともない" と言ってたけど…まぁ…残念だけど、彼女の思い通りにはならないでしょうね。




