83、勇者マイカと聖女カロテラ
●【No.083】●
ここは "バイオメドリグス" の国の "SMエロスの町" にて。
その街中に勇者マイカたち『ブラックファントム』がいて、勇者マトオたち『セックス・ハーレム・ナイトメア』がいて、巨大昆虫カマキリモンスター【デスキラー・シャ】がいて、上位魔族トウがいる状態。
先程まで約250人の通常兵士と約240人の[黒兵]が熾烈・壮絶な闘争をしており、双方兵の数をどんどんと減らし、同じ国の兵士同士が殺しあい、気づいた時には、約250人の通常兵士も約240人の[黒兵]も双方全滅して、この街から正規の兵士が居なくなる。
そんな現状を私たちは呆けながら見つめていた。
「あら、あの兵士も[黒兵]も全滅したわね。」
「おお、兵士同士が全滅しあったか!」
「やっと、兵士の時間が終わったか!」
「とんだ茶番だったね!」
『……』
「全くもって不毛だったよ。」
結局、通常兵士も[黒兵]も居なくなったところで、この茶番で不毛な勝負も両者引き分けで幕を閉じた。 でも…本番はこれからなのよ。
上位魔族トウが空を見上げる。
見ると空は既に暗くなっており、満月が浮かび上がり曇りひとつない。 そのせいで辺りは意外に明るく夜空もしっかり見える。
「今夜もいい満月だね。 アイツが出てくるいいタイミングだよ。」
「「「「?」」」」
「……アイツ?」
「そう…アイツさ。
もうそろそろ出てくる頃さ。」
『……』
「タイミング? 頃? 一体何を?」
「ふっ、あんたが会いたかったヤツさ。
空を見てみなマイカ」
「?」
トウの言われるままに私も空を見上げる。
すると夜空に浮かぶ女性がまた現れた。
そこには槍を持ち青色の教会仕様の戦闘服 [教会戦闘衣鎖]を着用。 腰には剣を背中には弓矢を装備した武士風の女性『聖女』カロテラの姿があった。
そのカロテラが私たちを見下ろし、私たちがカロテラを見上げる。 あらあら、心なしか、私たちのことを睨み付けているわね。
「あの女が…?」
「そう…聖女カロテラさ…」
「そう…彼女が…」
「……」
「聖女というより、まるで戦士だね」
「いっぱい武器持ってるよね?」
「聖女なのに、何故武器を?」
「それにしてもスゲエ顔…!」
「ええ、なんだかこちらを睨み付けているわね。」
「ああ、そうだな」
『……』
「ふふふ、ようやく来たわね」
あの『聖女』カロテラの登場に、みんなが思い思いの感想を述べてる。 見た目が普通の人間の女性なので、よく見ても上位魔族だとは思えない。 もっとも空を飛んでる時点で既に普通の人間の女性ではない。
彼女が『聖女』カロテラよ。
まぁ…『聖女』というと人間の女性だと思われがちだけど、彼女は上位魔族みたい。 そもそも上位魔族が『聖女』になれる訳がないけど…?
彼女の本当の名前が上位魔族カイ。 大魔王ゼンの元部下だった女らしい。 それが一体どうなったのか知らないけど、いつの間にか悪魔神復活の信仰狂者に成り下がったらしい。
同僚の上位魔族トウも最初は説得を試みたけど、残念ながら説得が不能なため、そのまま上位魔族同士の戦闘になったみたい。
トウも手ぶらで大魔王ゼンの下へ戻る訳にもいかないから、なんとか必死に食らいついていたけど、結局は私が倒したあのオークの身体の中に閉じ込められてたんだって。
現在でも、この国のこの町の上空で戦闘を繰り広げていて、ちゃんと今夜も現れてくれたようね。 良かったわ。 今夜もしっかり来てくれたお陰で、これで彼女を突き止めれば、きっと彼女の本拠地もわかるはずよ。
見た感じ、洗脳されてる気配はないわね。
否、瞳がかなり異常ね。 アレはイッてるわ。
やっぱり、アイツが上位魔族カイを『聖女』カロテラに仕立て上げた張本人なのかしら? この国の主、カラスクイーンアテナ…。 いつも『聖女』カロテラはカラスクイーンアテナの下にいる。 そこで言葉巧みに唆して、カイを悪魔神復活の信仰狂者に仕立て上げた。 でも一体どうやって上位魔族を洗脳したのか、非常に興味があるわね。 もしかして私も洗脳させられるかしら? とにかく早くカラスクイーンアテナを倒して、あの『聖女』カロテラを元の上位魔族カイに戻さないといけないわね。
さて、果たしてカラスクイーンアテナとは、一体何者なのか? どういった存在なのか、今から会うのが楽しみね。
その『聖女』カロテラが静かに降りてきて、私たちの目の前に立つ。 ここで遂に私とカロテラが初めて対峙・対面する。
「……」
「……」
降りてきたカロテラが早速私のことを睨み付ける。 私も彼女を不適な笑みで見つめる。 その後すぐに彼女がトウの方を見て言った。
「……誰?」
「……誰? ふふふ、彼女が勇者マイカさ」
「!!?」
「ようやく会えたわね。 聖女カロテラさん。 いいえ、上位魔族カイさんかしら?」
「!!?」
「そして見えているわね! 私のことを! カラスクイーンアテナよ!」
「!!?」
「えっ、何っ!?」
「………」
『……』
「一体どういうことだ? 勇者マイカ!」
「あら、気づかなかったかしら?
あの聖女カロテラの眼を通して、私たちのことをよく見ているはずよ。 ねぇカラスクイーンアテナさん!」
「な、なんだってぇ!?」
「ちっ、さすが…勇者!」
「別に驚くことはないわ。 あの聖女カロテラの瞳をよく見なさい。」
「えっ!?」
「なっ!?」
「おっ!?」
「うっ!?」
「あっ!?」
「くっ!?」
『むっ!?』
「………」
私の発言でみんなが驚く。 でも…よく見ればわかることよ。
あの『聖女』の瞳…虹彩に色彩はなく光もないわ。 アレは完全に操られているわね。 やっぱりカラスクイーンアテナに洗脳されているわね。 だからおそらく彼女の瞳を通して、私たちのこともよく見えているはずよ。 これで決まりね。 今回のボスは、あのカラスクイーンアテナで間違いないわね。
まぁ…上位魔族を助けるつもりなんてないけど、なりゆき上、そうなってしまうわね。




